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Flying Big Island Story -next another world-   作者: しまんちゅ
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第4話_月光ノ刻

・・

・・・

気が付くと辺りは暗く、静まり返っていた。


ぼんやりと、ここがどこか今は何時か考えていたが、すぐに全身の痛みを感じた。


「いっ、、てぇえ・・」


動く気にもなれず、とりあえず仰向けになり、夜空を見上げた。


「こっちの世界でも夜空は同じようなんだな、、、」


手にしていた眼鏡をかける。その眼鏡の奥の瞳から一筋の涙が流れる。


「なんでこうなったんだろうなぁ・・」


そうつぶやくと、涙がとめどなく流れてきた。


・・・

・・

ひとしきり泣いてから、思い出したかのように小嶋の腹はぐうぅ、と空腹を告げた。


「そういえば何も食べてなかったなぁ、、

 金は、、ないよな。そりゃそうか、、、、、」


いっそこのまま眠っていればそのまま死ねるんじゃないだろか、、、

そんなことを思い、仰向けのまま小嶋は目を閉じた。


(起きてみたらすべてが悪い夢。っていう感じだといいな。せっかく異世界にいるのに何一つ異世界っぽさを体験していないなぁ、、、)


そんな時だった。


((おい、、、そんなしょげんなよ))


え?どこからか少し野太い声が聞こえ、小嶋は思わず目を開けた。

声の主は視界に入らず、気力を振り絞って上半身を起こし、辺りを見たがそれでも誰も見当たらない。


(気のせいか、、、)


そう判断すると、


((無視すんじゃねえっちゃ!))


再度同じ声が聞こえる。


(これは幻聴じゃ、、ない?)


確かに声は聞こえる。だがどこからかがわからない。

不安になった小嶋は辺りをきょろきょろする。


「だ、、誰だよ!一体どこから、、」


とりあえず暗闇に向かって声をかけてみる。すると、


((やっと返事したな。ったく、手間のかかる、、))


やはり声は幻聴ではないと確信した小嶋は正体を知るために話しかける。


「お、おい、一体お前は誰なんだ!とにかく姿見せろよ」


((姿を見せろって言われてもなぁ、、、))


声の主は渋い声で渋る。


((俺は今お前の精神にしゃべりかけているし、ねえよ実体なんて。見せないんじゃなくて見せられないんよ。まあ、Yamaguttiにお前が来てくれるってんなら会えるかもな))


「え?・・・」


声の主の現実離れした発言に、あぁここは異世界なのか、、と異世界を実感しつつもとりあえず、そういうこともあるのかと納得することにした。


「それで、ここにいないやつがいきなりなんで俺に声をかけてくるんだよ、、ほっといてくれよ・・」


今の小嶋には対応する気力がなく、、再び仰向けに倒れこみながらそうつぶやいた。


((別に、、ただなんか哀れに思ってな。 何もする気ないから心配すんな。

 むしろ逆に、なんもしないから変な期待すんなよ!))


「だったら放っておけや、、」


小嶋は思ったことをそのままつぶやいたが、向こうは気にするそぶりもなく続ける。


((まぁ、、とりあえずお前これからどうすんだ? そのまま寝ているっていうわけにもいかねえだろ))


何もしないといいつつ、会話は続ける謎の声の主。


「うるせぇ、金もねえしどこ行けばいいかわからねえし、何よりもう動きたくねぇ・・」


小嶋は自暴自棄気味にそう答え、ごろんと寝返りを打つ。


((おいおい、、そんなんでいいんかよ。))


(どうにかできるならどうにかしてほしい。このまま死んでもいいけど、生きれるのなら生きたいし)


誰か声をかけて、この身なりを見てお金を恵んでくれたり、飯をくれたりしてほしい、、自分ではどうにもできないと諦め、他人にすがりたかった小嶋であったがちょっかいを出すのは姿のない野太い声の持ち主だけ。 なんというか悲しい状況しかない。


((はぁ、、まったく。 俺は何もしねえからな。 なんもしねえけど、お前。とりあえず起きろ。まずはそれからだ。ほら!ほら!))


「あーーーわかったわかった」


耳元で野太い声がずっと響いているのが煙たくなり、とりあえず声に従い、起き上がることにした。

起き上がると一層体が重く感じ、気怠く、いやな気分になる。


「ほら、起きたぞ。もういいか?」


((起きたな。次はこの世界のことを少し教えてやる。いや、これは独り言だ。聞こえてしまうかもしれないけど、ただの独り言だ。教えるんじゃない。))


めんどくせえなコイツ、と思うものの、せっかく教えてくれるんだからと小嶋はツッコまずに聞くことにした。


((とりあえず、武器は、、ねえか。 そいやほんとになんも持ってないんだったなww))


小嶋の現状を小馬鹿にしつつも、野太い声の主は続けた。


((そしたら、あれだ。まぁ、そこらへんにあるブロックとか少し大きな石とかでもいい。探せ))


小馬鹿にされたことに反応する気力もなく。小嶋は言われたとおりに辺りを見渡し、何かないかと探した。


幸いここは裏通りのようなところであり、拳よりひと回り大きいレンガを見つけた。


「おい、こんなんでいいか?これでどうするって?」


((まあいいか、よし次はアッシュラットを探せ。灰色のネズミだ。))


レンガを見つけると、次の指示が飛んできた。口の割にはちゃんと指示してる。


「ねずみ、、ねずみ、、」


見渡しても辺りにはおらず、少し歩き、建物の裏や汚水の流れる溝のほうを確認する。


なかなか見つからなかったが、数分してようやくそれらしき灰色のネズミを見つけた。


「あれ、、か?」


少し遠く、月明かりからは灰色かどうか判別できないので合っているのか確認することにした。


((そうそう、あれだあれ。))


「そいで?どうする?」


確認がとれたため、次の行動はどうすべきか訊ねた。


((さ、持っているレンガであれを殺せ。簡単だろ?))


「簡単・・か?」


((投げつけて殺すか、殴って殺すかだろ、レンガだし))


簡単に言ってくるが、小嶋は投擲も素人だし、気配を消すこともできない。近づいても逃げられてしまうだろう。


野太い声の主はそれを実行しろと簡単にいう。


「いや、無理だろ」


((とにかくやってみろって。1度で無理なら何度か投げれば当たるだろ))


ものすごく楽観的に言われ、、なんだかんだ当たるんじゃないか。という気になっていた小嶋は、レンガ一つでは不安だが、もう少しあれば行けるだろうと思い、3つのレンガを拾ってきて、投擲の準備をした。


「さてと、、、オラァア!!」


まだ逃げていなかったアッシュラットに対して狙いを定め、思い切りレンガを投げつけた。


レンガは惜しくもアッシュラットには当たらなかったが、そのすぐ近くにぶつかった。


(確かに、これなら何度か試せば当てられそうだ。)


と思い、仕留められなかったアッシュラットは逃げるであろうと予想して、次を探すことを考えていると、、


((あ、言い忘れたが、アッシュラットは自分より弱いと判断した敵に攻撃されたときは反撃してくるぞ))


なんかとても大切な情報が、野太い声からボソッと聞こえた。


すると、レンガを投げられたアッシュラットが赤い目をぎらつかせてこっちに走ってきた。


「ちょ、、向かってきてるんですけど、、すごい勢いで来てるんですけど」


((・・・・・・))


何も返事をしてくれない


「ざけんな!こういう時になんか言えや!」


焦りから暴言を吐きつつ、準備したレンガを投げつけていく。


しかし、向こうも素早く、2つ残っていたレンガすべてをよけられてしまう。


「やばいやばい、投げるもの投げるもの、、、、」


辺りを見渡し、見つかる小石や木片などをとにかく投げつけまくる。


アッシュラットはそれをも見事にかわし、みるみる近づいてくる。もうあと1mもないくらいまで近づかれ多ころ、、


ガッ!


目を瞑って投げた小石がアッシュラットにクリーンヒットした。


そのまま小石に飛ばされ、アッシュラットは数回地面を弾むと、煙となって消えた。


「え?当たった?」


しっかりとみていなかった小嶋は状況がわからず、煙が出ているところに近づくと、煙が切れるころにチャリーンと銅貨が現れた。


((やっぱ数うちゃ当たるな))


そんな他人事な言葉が聞こえてきた。


「ふざけんな大事なことは先に言っとけ。」



((とりあえず、それは置いておいて、、ほら見ろ))


怒りは収まってないが、煙のところに銅貨があることに気付く。


「あ、お金、、、」


銅貨1枚。これが小嶋がこの世界にて初めて稼いだお金である。


((そんな感じに金を集めろ。魔獣からドロップするから、面倒だからもう解説はしねえぞ))



それから約1時間かけて6匹のアッシュラットを倒し、計7枚の銅貨を手に入れた。


疲労は確かにあったが、お金を得ることができて心から安堵の気持ちが溢れる。


聞くと、6枚ほどで1食分の食事は出来るらしい。

ようやく食事にありつける希望が見え、小嶋は少し、ほんの少しだけこの世界に生きていける希望が見えた気がした。


「助かったよ、、、なんだかんだありがとな、、えっとまだ名前聞いてなかったな。お前、名前あるの?」


少しばかりの金が手に入り、これで何か食い物が買える、そう思い、小嶋の頬も自然と上がる。


((別に礼を言われたくてやったわけじゃねえよ。あ?、名前だ? まぁあるけどよ。 ノゾミだ。ノゾミ。そう呼んどけ!))


野太い声でツンケン言う謎の声の主はノゾミというらしい。なんというか以前の世界であったならば気持ち悪い違和感がそこにあり、小嶋は少し体を震わせた。



はたから見るとボロボロな男が一人、月光の元、体を震わせている。そんな状況がそこにはあった。



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