6話
数日が経ち、今は車に乗り麗子さんの運転で移動している。
藤堂さんの事は婚姻届を出された日以来、麗子さんと下の名前で呼ぶことにした。
べ、別にデレた訳じゃないんだからね!
婚姻届は江戸さんに渡してシュレッダーしてもらったがストックが沢山あるらしく、ことある毎にスッと差し出してくる。
もう、麗子さんなりのギャグだと考える事にした。
しかし、車の運転は羨ましい。
サングラスをかけ、クールに運転する麗子さんを見て思ってしまった。
前の世界では18歳になって直ぐに車の教習に通い始めて、仮免まで取っていたのに悔しい。
この世界では15歳って設定だし、たぶん実際の身体もそうなんだと思う。
まぁ、車の運転より学園生活優先だな!
「旦那様、到着しました。」
新しい家族候補の家に着いたようだ。
男性保護施設から1時間くらいの距離だ。
「ここなら、たまに麗子さんや江戸さんに会いに行けますね。」
「いえ、私は旦那様の新居の近くに引っ越し致しますので御安心を」
お、おう。「一緒に住みます」とか言い出すと思ったので、驚きが少なかったぜ。
車を降りて家の前まで歩いていく。
麗子さんがインターホンを押した。
『はい。』
インターホンから返事がきた。
「お届け物でーす。」
麗子さんが謎の返事をした。
俺がなに言ってんだこいつ?みたいな顔で麗子さんを見ていると。
ーガチャー
ドアが開き妙齢の綺麗な女性が出てくる。
女性は俺に気付くと「え!?春斗さん!」と言い驚き尻餅を付いていた。
「大丈夫ですか!」
俺は駆け寄り手を差しのべた。
女性は恥ずかしそうに手を掴み立ち上がった。
「まさか、いきなり春斗さんが来るなんて思ってなかったからビックリしちゃって。」
「えっ?」
嘘だろ!普通連絡するよね?数日もあったのに連絡もしないとかバカなの?
俺は後ろにいる麗子さんを見た。
両手を広げ……
「サプラァーイズ!!」
ドヤ顔決めてやがる!
この人の「良かれと思ってやったよ」はいつもおかしい。あべこべ世界の中でもあべこべだ。
しかし、女性は嬉しかったようで涙を流しているから、なんだか良かったような気になってくる。
「フッ、旦那様。私は外で待っていますので新しい家族になるかもしれない方々と話して来てください。」
おい、おい。格好いいじゃねーか!
「麗子さん、ありがとう行ってくる。」
「旦那様!忘れ物です。」
そう言って紙を渡された。
それはいつもの婚姻届であった。