殴るだけじゃもの足りねえ!
夜のカフェ・プリンセス。
そこは酒場となっていました。
チト「カフェとカフェ。ややこしー」じとー
カフェ「そんなことよりも。ここ、今の時間は酒場よ」
チト「で?」
カフェ「子供はまず入れないわ」
ココ「やっぱり帰ろうよ」
チト「家で待ってなさいって、言ったでしょう。どうしてついてきたの」
ココ「それは、覚悟決めたから……」
チト「じゃあ黙ってなさい」
チトは堂々とカフェ・プリンセスの扉を開き、仁王立ちして辺りを見渡しました。
チト「何、さっきまで盛り上がってたでしょう。続けなさいよ」
静寂の後、一斉に笑い声が上がりました。
そして飛び交う幼稚で下劣な言葉の数々。
チト「私は賞金をもらいにきた!!」
それはその一言をきっかけに、なお盛り上がりました。
チト「ちっ、クソ野郎共!馬鹿にしやがって……!」ぎりり
カフェ「仕様のないことよ」
ナリキン「まあまあ皆、可愛いお嬢さんがせっかく来てくれたんだ。遊んでやるのだ」
チト「偉っそうに。あなた何様よ?」
ナリキン「俺はここの持ち主だ。そしてこの町で、一番偉いのだ」どやあ
カフェ「あいつ、なーんかムカつくわね」ヒソ
チト「ああ。お前なんざ、かまどの業火に焼かれて死ねっ!」
その言葉が、ある男をブチギレさせます。
ケダマ「ナリキン様に向かって……!」ワナワナ
その男はブチギレマンボウを披露しながら、野郎共に囲まれた、小さな円形の戦場を作りました。
チト「あなたが私と殺ろうっての?」
ケダマ「俺の名はケダマ。見た通り、この中で一番でかくて強い男だぜ」イライラ
チト「本当に?」
ケダマ「賞金が、俺以外の人間に渡されたことはないぜ」ポキポキ
チト「すごいね」ぱちぱち
ケダマ「とことんムカつくメスガキだぜ。今さら可愛いく泣いても」ムチムチ
チト「うえーんうえーん、こわいよー」ぶりっこ
ケダマ「俺は容赦しないぜえ!」ドシドシ!
ナリキン「おいおい、怪我はさせるなよ」
チト「はーい!」
ナリキン「ケダマに言ったのだ!」
チト「あらそう」
カフェ「とても不安……」
チト「おまじないかかってなかったら、あなたもボロ雑巾よ。それわかってる?」
カフェ「にゃ」ぽふ
ココ「チト!がんばれー!」
チト「こら!ココ、その男から離れなさい!」
ナリキン「安心しろ。これはホットミルクなのだ」
チト「そういう問題じゃない!このクソ野郎!」
カフェ「あたしがココの側にいるよ。それと、あいつ一番偉いから、きっとあそこが一番安全よ」ヒソ
チト「むぅ……任せるよ」
カフェ「任された」ととっ
チトとケダマは野郎共に囲まれながら、互いに攻撃のタイミングを伺います。
それから先に手を出したのは、チトでした。
チト「まずは一撃っ!そらあ!!」ズギュルオン!
チトの拳を顔面に受けたケダマは、勢いよく回転しながら、野郎共の波に叩きつけられました。
ケダマ「ぬんっ……」
ナリキン「どうなっているのだ?」ぽかーん
ココ「お姉ちゃんすごーい!」きらきら
チト「足りねえ。もっと殴らせろよ」
ケダマ「んんんんん!!」だたっ!
怒りに任せて勢いよく駆け出したケダマの腹部に拳をリズムよく三発入れて、間髪入れず顎にアッパーを決めてその巨体を浮かせると、体を回転させて放ったカカト落としで豪快にフィニッシュ。
ケダマは、綺麗に床にめりこみました。
チト「他に強い男はいないの?もし私に勝てたら、私を好きに使うといいよ」にやり
その提案に、激情に駆られた野郎共が群がりましたが、火花が散るごとく。
野郎共は次々と弾けました。
カフェ「よい子は見ちゃ駄目よ」ぽふ
ココ「やめてよカフェ。見えないよー」
ナリキン「恐ろしい、あの少女は本当に何者だ?まるでメルヘンを見ているようなのだ」
チト「今なんて?」ぴくっ
ナリキン「まるでメルヘンを見ているようなのだ、と……え」
チト「メルヘンなんてクソくらえ!!」ぶおふぅっ!
チトは最後の野郎をナリキンに投げつけてやると、とても清々しい笑顔で勝利に酔いました。
カフェ「さ。賞金をもらって帰りましょう」
チト「この店も頂く」
そうして。
賞金と店の権利を得たチトは、嬉しさのあまり、千鳥足で帰路に着きましたとさ。
続け!




