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メルヘンなんてクソくらえ!  作者: 夢見る女の子
36/37

❁奏でるリートはデュエット

このお話は後日談ではありません。

リートとココの、ぷち青春物語になります。

肌寒い夕暮れ時。

リートのお家にて。


チト「ココ、まだ終わらないの?」


ココ「うん、まだかかりそう」ちくちく


リート「そこは、こうした方がいいよ」


ココ「ありがとう。フェルト人形を作るのって難しいね」


フェルトおじさん「しかし上手じゃないか」


ココ「そうかな」えへへ


チト「あたし帰るわ」すくっ


ココ「え!?」


チト「おじさん。今夜だけココのこと、お願いできる?」


フェルトおじさん「ああ、構わないよ」


チト「じゃ、賃金はココの食事代でよろしく」


ココ「チト!」


チトは、あばよ、と残してさっさと帰ってしまいました。


ココ「ええ……」


リート「楽しい夜になるね!」きらきら


ココ「うん……」てれ


リート「どうしたどうした?」くびかしげ


フェルトおじさん「ははは!そうかそうか」


リート「?」くびかしげ


フェルトおじさん「おじさんは夕飯を作るから、二人で仲良くな」なでなで


リート「うん!仲良くするよ!」にこにこ


ココ「あ、あの……」


フェルトおじさん「悪いね。おじさんも忙しいんだ」


リート「ココ、気分でも悪いの?」


リートは目を、うるうるさせて、そして覗きこむようにしてココを気遣いました。


ココ「な、なんでもないよ!」顔真っ赤


リート「体はお大事に」


ココ「うん。大丈夫だから心配しないで」


リート「なら、良かった!」にこっ!


ココがちくちくする間、リートはココに寄り添って、まどろみながらそれを見守っていました。


ココ「…………」ちら


リート「ん?」ねむー


ココ「あのさ、その……少し近くないかな」


リート「そうね。ここはもう少し離しましょう」


ココ「そうじゃなくて……いいか、このままで」


リート「うん。ココの好きにしなよ」


ちくちく、ちくたく。


ココ「…………」ちら


リート「すぅ……すぅ……」すややか


ココ「リート」


リート「はいな……」ぎゅ


ココ「あいたっ!」ちくり


リート「!」びっくり


ココ「あ、ごめん。起こしちゃったね」


リート「きゃ!血がでてるよ!ココが死んじゃう!」あたふた


ココ「大丈夫だよ、これくらい」


リート「あむ!」


ココ「ええ!?」


とっさにココの指をくわえるリートに、ココは目を丸くしてびっくりです。


フェルトおじさん「リート。大丈夫だよ」


リート「心配よ……」うるうる


フェルトおじさん「大丈夫大丈夫」ぎゅ


リート「パパ……」


フェルトおじさん「ココくん、驚かせてごめんね」


ココ「ううん」


フェルトおじさん「少し、おじさんを手伝ってくれないか」


ココ「はい!」


ココはフェルトおじさんについて調理場へ。

そこで、フェルトおじさんは、リートのことを少しばかり話してくれました。


フェルトおじさん「君に話しておきたいことがある」


ココ「?」


フェルトおじさん「リートのお母さんはね、病気で亡くなったんだ。それからリートは、ああして心配性なんだよ」


ココは森で大冒険したあの日、そして今日のリートの様子を思い返して納得しました。


ココ「体はお大事に……そういうことか」


フェルトおじさん「悲しい顔をすることはないよ」


ココ「うん……」


フェルトおじさん「ココくん。君に頼みたいことがある」


ココ「なんですか?」


フェルトおじさん「リートと、これからも仲良くしてほしい」


ココ「もちろんです!僕だけじゃなくて、オコゲくんやオカユちゃんもいます!お姉ちゃんだって!」


フェルトおじさん「ありがとう。リートには寂しい思いをさせたくないからね」


リート「私なら平気よ」ぴょこ


フェルトおじさん「リート!もしかして聞いていたのか」


リート「少し、少しだけね」


フェルトおじさん「ごめん。勝手な話をして」


リート「どうしてパパが謝るの。パパはママが好きなフェルト人形作りを頑張ってくれている。それだけで素晴らしいじゃない」


フェルトおじさん「リート……」


リート「ぶんだばよ」ぎゅ


二人の温かなやり取りを前に、ココは両親のことを思い出して、ほんのちょっぴりしんみりとしました。


ココ「ねえ、リート」


リート「なに?」


ココ「君に寂しい思いはさせない。僕が約束するよ」


リート「……ふふっ」


ココ「僕、おかしなこと言ったかな」


リート「ううん!ありがとうございます」にこっ


それから三人は楽しい夕食の時間を過ごしました。

日はすっかり暮れ、町には夜のとばりがおりました。

ココとリートは、また二人っきりでちくちく。


リート「ココ、ココ、ここへんぜるよ」


ココ「馬鹿にしてる?」むっ


リート「ほら、貸してごらんなさいな」


ココ「うん」


リート「こういうところは、細かくするのよ」ちくちく


ココ「そうか」


リート「ねえ。これ、猫さん?」


ココ「うん。完成したら家に送るんだ」


リート「家って、森の向こうね」


ココ「そうだよ」


リート「いつか帰る?」


ココ「うーん。そうだね」


リート「だよね」


ココ「もしいつかその日が来ても、僕は必ず戻るよ」


リート「それは本当かしら」


ココ「もちろんさ」


リート「そしたら約束、約束よ」


ココ「うん。約束」


二人はしっかりと小指を結びました。

その和やかな二人を、フェルトおじさんは陰から微笑み見守るのでした。

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