ババア死にやがれ!
二人がお菓子の家に入るや、魔女は突然豹変して、ココを大きな鳥かごに閉じ込めてしまいました。
チト「何飼ってたんだ?」
ココ「チト~!」がしゃんこがしゃんこ
チト「おいババア!」
魔女「魔女とやろうっての?」
チト「ちっ、見た目も心も汚いババアだこと」
魔女「あんたには、しっかりたっぷり働いてもらうよ」
チト「働いて欲しければ、飯と金をよこしなさい」
魔女「は?」
チト「耳遠いの?飯と金よこせって当たり前の話よ」
魔女「あんた、弟はどうするの」
チト「もちろん。どうにかするわ」にやり
魔女(一体この小娘、何を考えているの?)
チト「なに?人の顔ジロジロ見てんじゃないよ!」
魔女(ま、どうでもいいわ。どうにかなるし)
チト「どうするの?はやくはやくはやくはやくはやく」あしぱたた
魔女「やかましゃあ!!わあかったわよ!」
チト「しゃあ!決まりね!」ゆびぱちん!
魔女「ええ、たんまりくれてやるわよ!」
チト「マジ!」きらきら
魔女「マジよ」
チト「一応言っておくわ。ココにも飯食わせなきゃ、私働かないからね?」
魔女「まん丸と太るぐらい食わせてやるわ」じゅるり
ココ「チト~……」しくしく
そういうことになりしまして。
一ヶ月の間、チトは必死に働きました。
さて、そんなある朝のこと。
魔女「あんたやるじゃない」
チト「お姉ちゃんだからね」ふふん
ココ「はやく出たい……」
魔女「あんたは、全然太らないねえ」
チト「太らない体質なんでしょう」
魔女「それ先に言いなさいよ!」
チト「いや知らんし」
魔女「くう……!」
チト「食いたきゃさっさと食えよ」
ココ「チト!?」
魔女「う、うーん……ま、仕方ないか」
ココ「やあ!やあだあああ!!」じたばた
チト「男でしょう!」
ココ「だべられだくないいい!!」うわあああん!
魔女はおまじないを唱えて、暴れるココを縄で縛ってしまいました。
魔女「チト。まずはパンを焼くから、かまどに火を起こしなさい」
チト「ババアが触るなって言うからわかんねえよ」
魔女「まったく、仕様のない子だねえ」
魔女はそう言って、大きなかまどに火を起こしました。
魔女「じゃ、次はパンを焼くから、よく見てなさい。これからはあんたに任せるからね」
チト「賃上げしろよ」
魔女「ったく……。メルヘンみたいに良い子が良かったわ」
続けて、ボヤきながらもしゃがんで、メラメラと炎が燃え盛るかまどの奥へパンを押し入れます。
ココ「チト……」しくしく
チト「聞けババア」すっ
魔女「よく見てなさい。こうして奥に入れるんだよ」よいせ
チト「メルヘンなんてクソくらえ!!」ドゲシャア!
その叫びと共に強烈な蹴りが繰り出され、魔女はかまどの中の業火へと転びました。
魔女「ぎいやあああああ!!」
普段お風呂に入らない油でギトギトの魔女の全身は、瞬く間に燃え上がり、魔女はかまどから出ようと必死にもがきます。
チト「大人しく死にやがれ!」
しかし。
チトがトングでそれを阻止します。
魔女「…………」
意外とはやく、また呆気なく。
魔女は紫色に輝く灰になってしまいました。
チト「やっちまった……」
コトン、と。
トングがクッキーの床に落ちた音と、芳ばしく甘い香りが、部屋を包むように広がりました。
ココ「へへ、チト見て。縄がほどけたよ……」
ココは目の前の惨劇を見て、動揺を隠せない様子です。
チト「姉ちゃん、やっちまったよ……」
チトは泣きながら、しばらく一人笑い続けましたとさ。
続け!




