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メルヘンなんてクソくらえ!  作者: 夢見る女の子
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家族くらい大事にしなきゃ罰当たるよ!

明くる朝、軽い足取りで出発した二人。

おまじないのおかげで迷うことなく、一日かけて、懐かしい我が家へと帰り着きました。


チト「懐かしいね」


ココはそれに返事することなく、真っ先に家の中へ飛び込みました。

チトもその後に続いて家の中へ入ると、変わらない笑顔で、両親が強く抱きしめてくれました。


カフェ「にゃーん」


チト「あら、もうお昼」


二時間ほど、二人は今まであったことを両親に話しました。

もちろん。魔女のことは内緒にして。


ママ「今まで、お金を届けてくれたのは、あなた達だったのね」


ココ「うん!チトが頑張ったんだよ!」


チト「今日は牛二頭に、少しばかりだけれど、小麦ライ麦にソーセージ。それと、ビールを届けにきたの」


パパ「本当にありがとう。えらいえらい、チトは自慢の娘だ」なでなで


チト「でしょう」てれてれ


ココ「雄の牛がヨリンゲルで、雌の牛がヨリンデだよ」


ママ「いい名前ね。大切にお世話するわ」


パパ「二人とも。これからはずっと、ここにいてくれるだろう」


ココ「うん!」


チト「まだよ。稼ぎ足りないわ」


パパ「牛を貰えたし、もう十分だよ」


チト「それに、お店に仕事を辞めるとは言ってないし。家には大事なものがあるから戻らなきゃ」


パパ「そうか……」しゅん


チト「お父さん、私達は二度と会えないわけじゃないのよ。親と離れるのは寂しいけれど、毎日頑張って、また、こうして必ず会いに帰るわ」


パパ「チト、お父さん達と約束だぞ」


チト「うん」


ママ「無理だけはしないでね」


チト「はい」


ココ「チト……」


チト「ココ。あなたはどうする?」


ココ「僕は……」


チト「今日は泊まって帰るから、一日ゆっくり考えなさい」


ココ「ん……」


チト「男でしょう。ハッキリ決めなさいよ」


ココ「わかった!一日しっかり考える!」


それから、簡単な昼食を済ませた後。

チトはお母さんと、夕食の支度を始めました。


ママ「あら、チトったら。いつの間にか私より料理上手じゃないの」


チト「色んな仕事してるし、ババ……あるお婆さんにも教わってるの」


ママ「そう。優しいお婆さんが身近にいるのね」


チト「ま、ままま、まーね」ぞぞっ


ママ「?」


チト「ねえ、お母さん。後でお菓子も作ろうよ」


ママ「いいわよ。久しぶりに、レープクーヘンを作りましょう」


チト「やった!」


ココは、お父さんとゆっくりお話をしながら、ご馳走を待ちます。


パパ「お前達がいなくなって、ココが残した長い手紙を読んで、お父さん達は、凄く辛い思いで心配していた」


ココ「ごめんなさい」


パパ「いや、そうさせたのはお父さん達だ。何より、二人が無事に帰ってきてくれて心から嬉しいよ!」


ココ「僕もまた会えて嬉しい!」にこにこ


パパ「ところで。ココは普段、何をして過ごしているんだ?」


ココ「えーとね。家が図書館だから、本を読んだり」


パパ「へえ、図書館か。話には聞いたことがあるな。それより、字がしっかり読めるようになったのか?」


ココ「うん!カフェが勉強を教えてくれるの」


パパ「カフェ?」


ココ「とっても意地悪な悪い猫だよ」


パパ「悪い猫が先生か、ははは!」


ココ「だからもう、お姉ちゃんに読んでもらわなくても平気さ!」えへん


パパ「すごいすごい。ココは賢い子だな」なでなで


ココ「んふふ!あとはね、家の掃除をしたり、お使いに行ったり、町を散歩したりしているよ」


パパ「お姉ちゃんの手伝いを、毎日頑張っているんだね」


ココ「うん!そしていつか、僕もチトと一緒に働くんだ!」


パパ「立派になったな。お父さんは嬉しくて、うわはあああん!」ぽろぽろ


ココ「もう、どうして泣くの」


パパ「嬉しいからだよおおおいおいおいおい!」ぽろぽろ


月が雲と並ぶ頃。

ご馳走を囲んで、四人は楽しい時間を過ごしました。


ママ「やだっ。このソーセージすごく美味しい」


ココ「僕の大好物だよ」ぱりっしゅ!


ママ「私も今、大好物になっちゃったわ」ぽりっしゅ!


チト「このレープクーヘン。ああ、懐かしい味」さくさくぅん!


パパ「とても美味しいよ、チト」さくりんちょお!


チト「でしょう?お母さん直伝だからね」うぃんく


ところで。

暗い暗い森の中に、悪い猫が一匹おりました。


カフェ「やっぱり何もないわね」ちょこん


そこにお菓子の家は無く、地下室も落ち葉に埋もれていました。


カフェ「なぜ思い出せないのかしら」


風はそよそよと歌うだけで、答えてはくれません。


カフェ「それとも、思い出したくないの?」


森はカサカサと笑うだけで、答えてはくれません。


カフェ「このまま、ここにいようかしら」


悪い猫は落ち葉のベッドにころんと寝転ぶと、瞳に月を移して目を閉じました。


カフェ「あたしは人食いの悪い魔女だしね」


まるで自分に語りかけるように、悪い猫は独り言を呟きます。


カフェ「昔みたいに一人ぽっちがお似合いよ」


そうして、ちょっぴり寂しい気持ちになった時、ふと、二人の顔が浮かびました。


カフェ「……でも。今のあたしは悪い猫で、名前はカフェ」


カフェはそう言って、ぴょこんと立ち上がると、頭から尻尾の先まで順番に震わせて、空へ月を返しました。


カフェ「また満月……」


それからクスリと笑い。


カフェ「仕様のない。あれが見えなくなるまで、こき使われてあげるわ」


チトグレーテルとココヘンゼルの家へと、鼻歌交じりで帰りました。

家では、一つのベッドに家族が仲睦まじく並んで眠っていました。

なので、カフェは窓から中へと音もなく忍びこむと、懐中時計になって、チトの服の上で眠りました。


チト「答えは決めた?」


明くる朝、朝食を終えた四人は家の前におりました。

チトが町へ帰るためと、その見送りです。


ココ「決めたよ!僕はチトの、お姉ちゃんの側にいる!」


ココもまた、チトと共に町へ帰ることを決めました。


チト「本当にそれでいいわけ?」


ココ「うん!チトのお手伝いを頑張って、そして大きくなったら、一緒にお仕事するんだ!」


チト「ココ……!」


パパ「ココをお願いするよ」


ママ「もちろん。あなたも元気でね」


チト「うん!」


ココ「チト!さ、行こう!」


チト「あなた、少し男らしくなったじゃないの」


ココ「いつか、パパみたいな大人になるんだ!楽しみにしててね!」


パパ「うおおおんうおおおん!」ぽろぽろ


ママ「あなたってば、もう……」さすさす


ココ「じゃあ、またね!元気でね!」


こうして。

二人と一匹の不思議な金稼ぎ生活は、これからも続くことになりましたとさ。


続け!

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