おかず翻訳 ⇔ さいほんやく
目の前にお姫様がいた。金髪ロールに純白のドレス。15歳ぐらいの、俺と同い年くらいの女。その周りには、絵本に出てくるような兵隊が槍を持って、こちらを警戒している。
ここは何処だ? と言うか俺、学校に向かって歩いている最中だったよな?
「党神(靴)様が勇者様ですか? ⇔ (貴方様が勇者様ですか?)」
……何だって? 目の前のお姫様は……いや、この女は何を言ってるんだ? 党神(靴)様って誰のことだよ! 勇者『党神(靴)』を召喚する予定だったの!?
俺、田中 誠だから! 勇者『党神(靴)』なんて格好もつかないからね? あぁ……段々読めてきた。これあれだ……異世界なんちゃらって奴だ。神様はどこ? おーい、凄いとばっちりじゃね? これ。
「あ、あの……ここはどこですか? 貴方方は何者何ですか?」
するといかにも大臣ですと言わんばかりのおっさんが前に出て来る。
「ア―、この方は、この国の王女で荒廃させることができることができる【ティパニア】あなたなって。 そして私が閣僚のクレリックだ ⇔ (あー、この御方は、この国の王女であらせられるティファニア様なるぞ。そして私が大臣のクレリックだ)」
荒廃させることができる王女って何だ!? しかもこのおっさん二回できるを重ねていったよ!? なんの推しだよ! しかも王女の名前長いし……ティパニアアナタナッテ? 確実にアジア系のネームセンスじゃねえ。
怖い……ここはとにかく相手に合わせて乗りきろう。
「お、俺、田中 誠と申します。詳しい話を聞きたいので、どこか落ち着ける場所に案内していただけませんでしょうか?」
「エソはここに来てください、勇者様 ⇔ (ではこちらへどうぞ、勇者様)」
エソって誰!? 何、ここに俺の見えない第三者的な存在がいるの!?
……よく考えるんだ俺。おかしいぞ。さっきからチョイチョイ言葉がおかしい。俺の言っていることは通じているのに、向こうの返しだけ、何かおかしい。
これはあれか? 互いに異世界の言葉が通じているのは、謎の力が働いていると仮定して、そこに何らかのトラブルが発生してるってことか? しかも俺側だけ……
そう考えると、変な部分を深読みしなければ、ただこちらにどうぞって意味になる。
「うぅ……」
突っ込みを入れたら、槍でブスッと刺されるとか有り得る。ここは相手ホーム。それに対して俺はアウェーって事を忘れるな。だが、真顔でボケられるのってツライ……
「加減が良くないですか、勇者様 ⇔ (お加減がよろしくないのですか、勇者様)」
ま、間違いない。これはやはり、翻訳機能的な何かがおかしいんだ。短い言葉だから、今のはほとんど変換されずにわかった。
そうだ! これは、日本語を勉強中の外人さんと話してると思えばいいんだ。うん、そう思おう。
「い、いえ、大丈夫ですよ。あは、あははは。案内の方、お願いいたします」
怪訝な顔をしながらも、案内された先は、王様のいる豪華な王の間であった。
「多い―! 勇者召還は成功なのか! 銀? 勇者様、汗を非常にかいておられないだろうか? これ、誰か薬剤師を呼んで来い ⇔ (おおー! 勇者召喚は成功か! ん? 勇者様、汗を異常に掻いておられぬか? これ、誰か薬師を呼んで参れ)」
多いって、俺一人ぼっちですよ? なのに一人で多いのか!? ただ、俺を気遣ってくれてるのは確かだ。心配をかけないように言わねば。
「お気遣いありがとうございます。できればその、お水を一杯いただけると嬉しいです。王や王女様と言った、高貴な方々を前にして緊張していますので」
「そうしましたか? これは申し訳ない。 誰か、勇者様に水を持つことができていて ⇔ (そうでしたか? これは申し訳ない。誰か、勇者様に水をもてい)」
お姉様キャラになりおった。神様お願いだから、ちゃんとした翻訳スキルをおくれよぉおお!
ダラダラ汗を掻く俺に、リアルメイドさんがお水を一杯の水を持って来てくれた。染み渡る……人生の中でも、こんなに喉が渇いたのは初めてだ。
飲み終わったのを見計らって、王様が話を切り出して来た。それと同時に俺は攻撃?に備える。
「勇者様を呼んだことには理由があります。 なにとぞ、私たち『エスパニア』の国民を救ってカンおかず増えろ。 とにもかくにも、魔王がもうすぐ、二省にくるので! ⇔ (勇者様をお呼びしたのには理由がございます。なにとぞ、我等『エスパニア』の民を救ってくださいませ。ま、魔王がもうじき、この城にやって来るのでございます!)」
俺が『エスパニア』を救うと、国民のおかずに缶が一品追加されるらしい……どういう理屈と原理だよ! しかもそんなことで俺拉致られてきたの!? ……誤変換とわかっていても、心の中で突っ込まずにいられない。
……脳内時間で五分後(リアル1秒未満)。
そんなことはどうでもいい。気になる事を言ったな。魔王だと!? もうすぐ二省にくる? 二省って何……
よくわからんが、この世界には魔王がいるってことはわかった。それと近いうちに現れるってことの二点。この二点をおさえておこう。
「ですが、俺はただの人間……あちらの世界でも、極普通の人間として暮らしていました。とてもではないですが、魔王と呼ばれる者と戦えと言われましても力になれるとは……」
「かまいません。 私たち性には、勇者様に外に取り扱うことはできない伝説の武器があります。 それを使って必ずに幹魔王ごとを成否楷書下されて! ⇔ (大丈夫でございます。我が城には、勇者様にしか扱えない伝説の武器がございます。それを使って是非、にっくき魔王めを成敗してくだされ!)」
王様の性を外に扱えないない武器って! 王様ぁああああ! アンタ真面目な顔をして変態なのか!? もう帰りてぇよ!……もう泣いていいよね?
「魔王を倒したら……しくしくしく……元の世界に返して下さいね」
「それはもちろん! 帰還のソファンジヌヌムで、安心して敗北させて ⇔ (それはもちろん! 帰還の召喚陣はございますので、安心してくだされ)」
魔王なんかより、俺にとっては異世界言語の方が遥かに恐ろしかった。
ソファンジヌヌムって何……しくしくしく……