第一章 『崩壊の調べ』
西暦####年 現代では科学技術が発達し、それに伴い様々な国・機関・企業等が凄まじい急成長を遂げた。
しかしその反面、各国との対立、言わば「戦争」が絶えなくなり国同士の格差を大きくしていった。
ーー舞台は日本。世界の科学発達の要と揶揄されていた日本だったが、前代未聞の総理大臣・官僚・各省庁の大臣が行方不明となる事件が発生し、あっけなく日本は「崩壊」した。これが後に言う『第1次日本崩落』である。そして2年後の現在。これを2度と繰り返すまいと新政府は誓い、日本は再び世界のトップに登りつめた。
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ここは実ヶ丘高校。古い歴史と伝統を誇る名門校、と言われていたのは昔の話であり、現在は落ちこぼれ共の集まる、日本に「見放された」高校であった。今の日本は『絶対実力主義』国家の革新を掲げ、学校も会社も「実力」だけが問われ、実力のない「無能」な人間は日々窮屈な思いで過ごしていた。
そして今日。この学校にまた新たな『仲間』が加わる。転校生なんてこの学校では珍しいことではない。世の中は秀才だらけではないのだから俺らのような奴は大勢いる。だからここの生徒達は自然と歓迎意識が強いのだ。
彼女の名前は『黒百合 幸』。第一印象は(いたって普通だな……)であった。派手な感じでも暗い感じでもなく、「普通」だった。俺にはそれが妙に引っ掛かったが。
彼女はすぐにクラスに馴染んだ。クラスの中心的存在にある「天羽芹夏」が話しかけたことにより、瞬く間に彼女の周りには常に人が集まるようになっていた。
まあ、これもよくあるパターンだ。この学校にとっちゃなんらおかしい事ではないな。
この世の中に不満なんて抱えてない人間は居ない。だが、ここでの生活は俺にとって、「幸せ」そのものであった。そしてずっと続けばいい。そう願い、目を背けることで「自分」を守ってきた。所詮、俺は「子ども」でしかないから。
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………寒い。身体が震える。
足先から体温が消えていく感覚はあった。足が動かないのはこれのせいか。それとも「別のこと」でか。
耳の奥で木霊する「声」が私を支配し、絡みつく。
陽はまだ昇っておらず、薄暗いの空間に「声」と自身の呼吸音が響いている。この静けさがやけに心地よかった。けれど、直感的にそう思ってしまった自分に恐怖を覚えた。
私は「壊れて」しまったのだ、と。
雪がよく降る日だった。
地面は無垢の雪に包み込まれた。
やがて陽が昇った。
「希望」も「心」も失った自分には、太陽の放つ輝きは妬ましくて仕方がの無い「ゴミ」だった。夜が隠した事実を陽の光がひけらかしていく光景が脳に映し出される。気がつくとドロっとした「邪魔」な感情が流れ出されていた。
地面に降り積もったものは、白くなく、紅い紅い「雪」に変化していた。
~続く