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─────恥ずかしい。
そう思って胸を隠し身を固める私にフレデリック様は慌てて着ていた上着を脱ぐと、私の身体をそれで包んだ。
「場所を移そう。 ドリュー、済まないがカンナを頼む。 リーチェ、ちょっとだけ我慢してくれ」
「…ぁ…」
そのまま私を抱き上げたフレデリック様は、足早に宮殿に入ると、中に居た使用人達に通路の両側を封鎖するように告げた。
与えて貰った部屋では無く、何故かフレデリック様の部屋に入れられると、私を抱き上げたまま浴室の扉を開けた。
「…まだ賊が居るやも知れないから。 取り敢えずリーチェは湯浴みを…サーシャに頼むから、此処で待っていてくれ」
「…ありがとうございます」
フレデリック様が立ち去ると、数分して侍女のサーシャが現れた。
あれよあれよという間に湯浴みをさせられて、私の気分がどうかと医者を呼ばれそうになり、慌てて先程のことをフレデリック様に伝えたいと申し出た。
「…カンナは?」
「……君が助けてくれたそうだね、彼女は大丈夫そうだよ。 滅茶苦茶怒っていたけれど。 ……中庭に居た男二人、アレはリーチェがやったのかい?」
「………はい」
氷漬けの男と、斬られた男。
斬られた男の方は、フレデリック様の後ろに居た騎士の男の人が現場に着いた時には既に事切れていたらしい。
「……リーチェ…【神様の御子】…そう呼ばれる理由は、陛下から聞いた事があるかい?」
「……いいえ」
「……そうか。 なら、僕が話そう。 まず、リーチェは陛下の寝所に突然現れたのだったね」
「…はい」
「…【神様の御子】…つまり、それは異世界からの客人をいう。 そして、その【神様の御子】となる方は、この世界の人間よりも桁違いの魔力を持っている」
未だ燻ったままの魔力を感じて、私はちょっと怖くなって両腕で自分の身体を抱き締めた。
──────私は実の父親だけじゃなく…二人も殺してしまったのだわ……
「……リーチェ、怖がらなくて良いんだ…その力は君を守るものなんだから」
「……私を…?」
「そうだ…君がその力で、息も絶え絶えだったカンナを助けてくれた…。 だから誇って良いんだ」
良くやった、とフレデリック様に頭を撫でられて、私はホッとして──泣いてしまった。
「……リーチェ、済まない。 もっと僕達も気をつけるべきだった」
「いいえっ…大丈夫です…」
「……済まない…あの氷漬けの男も事切れた男の方も、此方でちゃんと処罰する。 陛下の庇護下に居るリーチェに手を出したんだ。 許さない」
「……フレデリック様……」
ぎゅっと抱き締められて、慌てて顔を上げると────私は彼に接吻された。
「ふ、フレデリック様っ?!」
「…僕は君が好きだ。 僕が君を守りたい」
「……フレデリック様…」
「………リーチェ、……いや、アゲハ。 好きだよ」
何度も繰り返し接吻られて────私は事情を聴きに来たルシィ様と陛下達が呼びに来るまで────フレデリック様の腕の中に居た。