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虎の子戦車隊  作者: j
ビルマの戦い
12/12

夜襲

 戦車は地面を揺らして進んでいくと、見えない雨粒がポツリ。私の腕に落ちた。

 雨だ・・。予定より早い・・・。

 まだ小雨だから平気かも。

 

 南方から送られる唯一の雨と、静かに流れるそよ風。汗を通して体を冷やしてくれる、戦車長だけが味わえる特権だ。

 移動は敵の拠点丘を囲い込んで進む。つまり迂回するので時間がかかる。夜までには配置につけるように進んでいくが・・・、

 

 薄茶の河を越え、緑の丘、小山を踏んで進撃する戦車が突然エンジンの音を閉ざして停止。

「近衛、エンジンが停止した。動ける?」

 暗い車内で必死にエンジンコックを動かす近衛に言う。

「うーん・・」

 もう一度引っ張ったとき。

 ブルルン、とエンジンが息を吹き返したようにまた生き返り、何もなかったと思いながら再び小山の森林地帯を進んでいきながら金平糖を一粒口で溶かしていく。


 道や山々迂回して数時間後。

 小雨が降ったり止んだりするなか外は真っ暗闇。

 月の光は厚い雲に阻まれて、車内から差し込む光は一切ない。目を開けても閉じても暗さは変わらない。

「ふあ・・眠い・・」

 小さく囁いた辻のアクビと声。私も眠くなりそう・・。

 

 車外から鉄板を弾いた軽い音が何度も連続して鳴ると、突然シャワーのように雨が大量に降り始めて遠くから雷雲の音が轟いていた。

 奇襲のチャンスだ!

「よし、攻撃開始っ!」

 無線機を通じ、小隊に連絡。

 雨粒に叩きつけられるハッチから信号銃を握った手を伸ばして信号弾を天向けて発射した。

 雨の音は遠い雄叫びでかき消され、敵の拠点高地に赤い線を伸ばした銃弾が撃ち込まれては、待機中の戦車らが砲弾を叩き込む。

 私達の隊も負けていない。

「突撃、前に進め」

 

 掛け声と共に草木に隠れた九七式戦車の影が動き出す。

 丘かの影から何度も発光するようなものが目に入りる。

 機関銃陣地かそれとも塹壕?

「機銃撃て」

  

 辻は機銃のパッドを肩にあてた途端、機銃の薬室が真赤に光る。

 燃え尽きた薬きょうが足元に軽い金属音を鳴らして落ちていく。

 ん、辻がやると砲が撃てない・・・。

 そうだ、機銃員は私の役目だってことを忘れていた・・。

「辻、私が機銃をやるから砲の射撃を」

 持ち場を変えて私が機銃の照準機を覗き込む。

 いるいる・・。

 機銃の閃光に敵の影が何十人とも現れて戦車らしきものまで私の目に入る。

 

「戦車全速力」

 砲を撃ちまくり、自身のように揺れる戦車は地上を疾走すると敵の拠点から真っ赤な火が吹かれてそれは車体寸前に着弾。

 敵の強力な反撃に私はいつもどおり突撃をしかける事を、戦車小隊に告げてから敵の拠点に殴りこむ。

 砂袋の塹壕を乗り越えると、慌てた英国兵らが一斉に逃げ出して、それを榴弾でまとめて吹き飛ばした。

 

 すると目の前に側面を見せた敵戦車の影が見えた!

 あれはM3スチュアート!

 正面からやるのは危険だ。草木をうまく利用して叩いてしまおう。

 砲弾を休むことなく装填して「てえっ!」と射撃主の辻が声にだして射撃した。


 ガァンと相手のほうから大きな金属音をならした。被弾したと思われる部分が赤く見える。

「右に迂回!」

 スコープ越しから軽機関銃の銃火が何度も光っては虱潰しに友軍の戦車砲が飛ばされていく。

 M3スチュアートの背後に回り、エンジンルームに47mm砲を撃ちこんだ。

「もう一発!」

 

 砲の反動で戦車が揺れた。

 敵戦車から小さな炎が。周辺を明るくしたちまちエンジンルームが飲み込まれて火達磨に出てきた敵の戦車兵がもがみながら息絶えて、あまりの光景に胃液が逆流しそうだ。

 1両撃破。

「このまま突っ込もう」

「待ってください」

 辻が私に言う。

「どうしてだ、辻。」

「いったん味方を待ってからにしましょう」

 それでは遅すぎる!

「駄目だ、M3重戦車にやられる」


「単独は自殺行為です。車長」

「うるさい。私の命令だ」

 辻が反抗するのもなんだか珍しい・・。

 どうしてなの?

「お願いです。待ってください」

 私は無性に腹が立っている。なぜなのか。

 

「わかった・・」

 影に潜むようにチハをいったん停車させる。

 草木を踏み潰してこちらに近づくM3重戦車が見えた、だがこちらに気づいていない。

 その時、小さな戦車が視界横にはいった。我が隊のチハ戦車だ。

 

 M3重戦車を囲うように進入するけどM3スチュアートを撃破したのだろうか?

 まあいい。数ならこっちのものだ。

「小隊が集まった一斉攻撃」

 三つの放火が開いた。

 

 火花を散らして怯むM3重戦車、上方の砲塔がこちらに定められた!

 炎と同時に衝撃で小刻みに揺れながらも再び反撃をする。

「あいつキライだなぁ」

 嫌そうにぼやいて言う近衛に私は

「回り込もう」

 と場を利用した戦術にでることに。

 重戦車は小隊戦車に気を取られたのか旋回し、お尻をこちらに見せ付けた。

 

 今日は運がいい。

 エンジンルームに叩き込んでやる。 

「よし撃ちこめ」

 辻の射撃と止まらない機械のようにせっせと砲弾を装填する坂井に、戦車砲は機関銃のように発射される。

 射出される薬きょうの音にもう4発以上は撃っているけどなかなか炎上しない。

 雨粒が焼けた砲身に反応して蒸発する。


 と、エンジンルームから黒煙らしきものがのぼって危険を感じたのか数人の人影が戦車から飛び出したところを機銃で掃射しこれを排除。

『敵が退いていきます』

 ふう・・。

 疲れるな

 

 退いていく敵を戦車砲で追撃しながら敵の拠点を占領

 周囲を見渡すと小隊の戦車が私のほうに集まってくるが一両足りない。

 ハッチから顔をだして雨を浴びがらもう一度確認する。

 いち、にい・・・さん・・。おかしいもう一台が・・。

「小隊長、4番車が・・・その・・・」

 3番車の車長がハッチから口ごもった声で、

「撃破されました」

 と涙交じりに伝えた。

 

次回から三人称で書いてみようと思います

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