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虎の子戦車隊  作者: j
ビルマの戦い
11/12

腹が立つ

4ヶ月ぶりの更新です。申し訳ございません。

やや状況がつかめてない部分があったりとします・・。

 戦闘終了後、アキャブ北西に展開しながら進むもしばらく進んだり退いたりと泥沼な戦いになりつつある。

 ここ休憩地は夕日の下で兵士と上官らが飯を食らい、将棋やチェス、囲碁やなんかで遊びながら少しの間でも楽しみを味わっている。

「あーあ、まったく日本の貧弱な戦車に参るなあ」

 戦車の上で夕飯を食べる4人達。射撃手の辻が不満げに言葉を投げながら、炊事隊が作った握り飯とバッグに入れた大和煮を食いながら私たちは日ごろの鬱憤を晴らそうとしていた。同じ戦友も日本軍の戦車の装甲の薄さと火力の低さに、戦車兵と歩兵が肉薄する事態にまで陥り対戦車の能力の低さが現れていた。

 私もストレスが感じていた。特にあまりにも頻繁な体当たり戦法な事が隊内に広まり、「体当たり小隊」と言われる羽目になった。

 汚名返上に私は不満交じりの中で次の方法を考えていた。

 

「ん、何あれ」

 操縦手の近衛が指差したところに顔を動かす。すると薄い鉄板を簡素に張っただけのチハ車体の戦車が3台止まっていて、陸軍の75mm高射砲を無理やり搭載して完成した即席戦車だろうか。

「休憩終了!全軍進め!」

 戦車軍長の叫びに兵士は戦車に乗り始め、静かな夜の中が始まる中で戦車のエンジンの音が空に響き渡る。



 河が多いせいなのか地面がぬかるんでたり、じめじめしてたりと車内はとても蒸し暑く感じて涼しい夜はこの先無いと思いながら私はスコープ越しの影を眺めていく。

 戦車を操りながら操縦士の近衛は言う。

「今日、具体的な対戦車法言われて無いよね」

「お前話聞いてなかっただろう」

 私は言った。

 アキャブ周辺の敵の新鋭戦車に1車両には2車両で戦えとの事で、足回りの良い日本戦車は速度を利用し側面に周りこんでこれを撃破する。

 アキャブ戦車軍が敵を囲む為、傍にいた友軍の軽戦車や豆戦車が逸れた地形の山岳へ、森林の奥深くに溶け込み消えていき残る九七戦車小隊は私の指揮下元で行動を開始しようとした。しかし敵の位置も不明なままなので「全隊停止」の無線を送り戦車は前倒しの急ブレーキがかかり、エンジンルームの音だけが静かな空間に響いていく。


「全員、車外で作戦を立てる」

 真っ暗闇の車内から顔を出す。天の光を浴びながら角ばった戦車の影と黒いハッチから人影が続々と野外へ身を晒し、随伴歩兵は声を出さず何かと落ち着きが無いようで周りを見渡していた。地図を片手に小隊戦車員達が1番戦車、私達の新砲チハ周りに集合させ軍刀をぶら下げて歩いてくる歩兵隊長もその中に混じる。

 懐中電灯一つで地図を照らしその現在地を赤い鉛筆をバッテンを記入した。


「今現在北西地、一番幅広い河の手前、23地点の森林内に私達は居る」

「ここを拠点とし斥候を動かす・・」


 折り後のビルマの地図に赤線を書いていく。話を続け、

「敵の拠点はおそらく・・ここだ」

 自分の陣地からおよそ10km圏内、近い中で私は幅広い河を越えた小さな山岳部に私を目をつけた。山の高さはそれほどでもないが河を見下ろせる位はあると私は予想し、そこから戦車が待ち伏せていると思ったからである。

「何か異論ある人は居ないか・・。案があれば言ってほしい・・」


「はい」と歩兵集団の方から声が出た。階級軍曹の若い歩兵分隊長のようだ。

「斥候は我々に任せて欲しい」

 と言い、経験豊富な知識と慣れを使い赤ペンで地図へしるしを記入していく。

「敵拠点と思われる場所に我々が行く・・。もしそこで合っているなら・・」ときめ細かく全体的に伝えていき、夜の中で組み立てられる斥候の歩兵隊達による作戦が開始されようとする。


 翌日、夜明けと共に設営隊が森林に偽装した前線拠点の場で、私達は蒸し暑い戦車の中で一眠り終え、顔を車体から出す。また新しい太陽の目が草陰に差し込んで、また一日我々の士気を高め、遠くから聞こえる山彦の様に繰り返しながら鳴り渡る砲声が続く戦争を示していた。

 このとき斥候隊は昨日動いたばかりで、戦車歩兵の混成部隊長に勝手ながら任命された私は緊張と恐怖を交え戦車から抜けだす。歩兵達の明るい顔、闘士篭ったギラギラした目を輝かせ「いつでもやれる」の意気が伝わってくる。

 すると草や木が荒く動いているその先に人影が複数人。汚れた斥候隊達が小銃を抱いて私の方へ向かい走り出してくる。あの分隊長が私の目の前までやってきて敬礼した後に「斥候完了。すぐ作戦会議を」と言ったあと私は小隊長、歩兵長を呼び出して戦車の周りで再び作戦を練り始める。


「23地点より北進路、小さな山岳部に敵の戦車砲が3、M3スチュアート戦車が4両、M3リー戦車が1両・・。ここを拠点に歩兵が50を超える」

 例の分隊長の情報を元に私は話を聞いていく。

「また現在地から山岳まで河を挟んでいるが深くはない。・・あと、今夜は雲が厚くなり雨が降る。陣地を叩くなら今日が最適だ」


「そうだな・・。今夜攻撃を開始しよう。また移動の際は・・」

 私は土で汚れた分隊長の地図に滑らかな円線を記入する。

「迂回するように行こう。山岳部を三つの方向で取り囲むように・・」

「準備が出来次第ここの拠点から出て、作戦を開始する。何か異論は」

 私の言葉に皆が小さく頷く。

 今夜決行、胸から沸き上がる意気と熱が篭った血が沸きあがる感じが出てくる。



 拠点の撤去が完了するとエンジンルームから吹き出る戦車が発動機を唸り上げる出発の準備をしているところに、私は自分が乗る1番車へとハッチから乗り込んだ。

 歩兵達はすでに行動を開始して元の拠点にも一人も居なかった。

「急ごう。遅れを取るな」

 

 スコープ越しに見える小さな空に厚く、灰色の大きな雲が浮かび日光は遮られて走る森林の中はまるで日没のような風景である。時間はまだお昼、雨は夕方から降ると私は考えた。

 乾パンを車員らと分け合いながら食べてしばらく足場の悪い道路に揺れながら私は体の遠くから睡魔に襲われそうになりながらも何とか耐えつつ目的地とその時間までを向かおうとする。

 と、篭るようなエンジンの音が遠くから次第にでかくなる。そしてゴゴゴ・・と言う音に私は疑問になりながら、ハッチから顔を出した。すると突然、目の前に迫った戦闘機が機銃掃射を浴びさせてくるので私はとっさに蓋を閉じて「当たりませんように」って祈るとフライパンを叩いたような金属音に、地面が少々揺れた。12.7mm弾だろうと思い、もう一度頭を出して雲の中に消える敵機を双眼鏡で追って見る。

「あ!連中、敵と間違えたな!」

 

 腹が立った。

 紅色の円印の国籍、日の丸戦闘機の陸軍機が私達に誤射をして悠々と空を飛んでいるのにどうしても許せなくなった。

 そして轟くエンジンと共に大きく旋回、こちら真正面向かい急降下する陸軍機。仕返しに拳銃弾でも当ててやろうと、車体についた九九式系機関銃を手にして銃身を奴の空に向けて威嚇射撃。

 本当は敵に覚られるのが嫌で撃ちたくは無い。でも分からず屋にはこうしかなかった。


 自ら照準機に入った陸軍機、私は引き金を倒して威嚇のため発射する。

 ダダダ・・。

 4発1度入る曳光弾が陸軍機のプロペラに吸い込まれた。途端、その機体は攻撃態勢をやめ私達の真上を巡回するかのように緩やかなスピードで旋回し始め、操縦席からそのパイロットが顔をだしたので私は、

「バカヤロウ!敵と味方の区別もできないのか!」

 と腹の底から大きく怒鳴る。

 

 するとパイロットから「申し訳ない。許してくれ」と返された。

 視力の悪いへたくそめ!許されると思うな!

「うるさい!さっさと去れ!敵に見つかったらどうするんだ!」

 例の陸軍機はその場から逃げ去るかのよう厚い雲向かって飛び走り、森林の影に隠れて姿を消す。戦闘機のエンジン音が次第に遠ざかって行くのを聞いて私は再び車内へと身体を潜めて、車員達に「すっきりした」と言うと皆は大笑い。

「エンジンルームに当たってなければいいなぁ」と辻の一声に私は咄嗟に上半身を出した。


 エンジンルーム・・!よし弾痕は無い!

 車体全体を見渡す。

 あった!弾痕!

 履帯を覆う装甲に黒い穴が一つ。銀のジュラルミンがむき出していて、正面装甲にも複数の凹み。幸い砲塔上部に当たらずに済んでよかったと思い、最悪の事態が頭の中で揺らぐ。

 もし当たっていれば私は死んでいた・・。

 弾薬に命中してれば戦車丸ごと吹っ飛んでたはずだ。

 でも戦う前から早速弾痕を残されたことにムシャクシャしてしょうがない。

 

 こんなことで怒っていてもしょうがない・・落ち着こう・・。

 少しばかり深呼吸。

「気を取り直して進もう」

 私は狭い車内の中、みんなに伝えた。


 

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