表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虎の子戦車隊  作者: j
ビルマの戦い
10/12

M3リーとチハ

一時更新を中断し新しい作品を作る予定でいます

放置するわけでなく何か浮かんだらその場で書き溜めて、また再開できるよな感じでいます

 ビルマ アキャブ軍港。

 男達の合図とその声が飛び交うここ、アキャブの港では我々が使用する新型戦車と装甲車が降ろされている中、私たちはそれを退屈に見ながら参謀や海軍の兵員達と一緒に会話をしていた。

 揚陸艦から戦車が続々と出てくる中で視野に入ったハエのような物が飛んでいたので、それをじっと見続けると次第に大きくなってくる。同時に鈍ったらしいエンジンの音が轟きはじめてくる。


「ん、二式単座戦闘機か?」

 誰かの声を耳に高度が落ちて、軍港に居る私たち正面から入ってくる戦闘機。海水すれすれ、着水するのだろう。

 しかし着水するにも速度があるような気がして「失敗するんじゃないか」って思いながら見守る。

 が、不幸にそれは的中。

 戦闘機は白い水しぶきを散らし大きく機体は前転しながらひっくり返り、海の中から顔を出して泣きべそをかく陸軍の航空兵が「助けてくれー」と大声で叫ぶと、陸軍の兵士がロープを投げつけこれを救出。

 ずぶ濡れのまま港に上がる女性の航空搭乗員、青髪と雫を光らせて参謀の前にやってきた。水に塗れた重要書類と思われるものを泣きながら渡すと、参謀は「確かに・・。あと、大丈夫かね」と気を使う。

「すみません、飛行場分からなくて・・」


「あ、ああ・・うん」

 グシャグシャの書類に手がぬれる参謀の顔はどこかと気まずい顔をしていた。



 まだ時間はあったので着替えを着た航空搭乗員と一緒に、海軍の休憩小屋にお邪魔して暇つぶしとそのもてなしに羊羹を出して会話すると彼女は「航空学校卒業2ヶ月の新兵」と楽しげに話してくれる・

 私は、

「姉とか居るの?」と聞くと嬉しそうに「私には立派な海軍航空兵の姉が2人、ラバウルと空母部隊のほうで」と誇らしげに話してくれる。

「名前が遅れました。私は淵田(ふちだ)武子(たけこ)航空伍長です」

 髪の青いちょっと変わった小柄の女の子、私はどこかと違和感を感じた。

「・・どうしました?」

 そうか、髪だ。ぱっつんじゃないんだ。

 多分髪型にうるさくない部隊に居るのだろう。大抵陸軍は前髪を切り落とし、長い後ろを切るか束ねるかの規律があるのだけど、かなり緩めなんだろう。

「あ、なんでもない・・。まあ航空支援、いつも頼りになってるよ・・」


 ただでさえ貧弱な戦車だ・・。味方の爆弾がないととても進めない時だってるんだ。

 それに今の時代戦艦と言う物は時代遅れなのではないだろうか。それを崩せばいくつの飛行機や戦車、デカイ砲弾を溶かせば追加装甲だって出来るというのに・・。

 戦車の揚陸作業が昼間に完了すると私達は"新型砲塔チハ"と57mmの火力から、47mmと一回り小さくなっていた。

 "アキャプ戦車軍"と言う中で九七戦車小隊は行動を開始した。

 

「アキャブに敵戦車部隊が侵攻を開始した・・。これを撃退し防御せよ・・」

 深夜の野営地、戦車軍長の声が脳の裏から聞こえる。

 翌日午前、蛇行する河の中を渡り走った中で新品の戦車は泥だらけになりながらも、私はハッチから顔を出しながら双眼鏡を覗き森林、薄茶の河の中で敵を探ると視野に二つの砲を持った敵の戦車3両が川越しの木草陰に待ち伏せていた。

「敵戦車12時方向、噂のM3リー戦車だ」


 と、角張ったM3リー戦車の正面75mm砲が火を吹く。後に鈍い砲声が轟いた。地雷を爆発させたかのように、すぐ目の前の地が捲れ、土と砂が舞い上がり私の頭に降り注ぐ前に、ハッチを閉めて中へと避難。雨音の様に砂利が車体に当たりにくる。

「一旦回避しよう」

 戦車はゆっくり後退するなかで装填手の坂井は軽々持ち上げる47mm砲を次々に戦車砲の中へと食わして行き「はい」「次」と射撃手の辻との掛け声に合わせ砲は連射されて撃たれていく。しかしスコープ越しから眺めてもM3リー戦車に対しては何の変哲も無いまま、至近で小さな土柱が立っていることはこちらにも見えているからだ。

 友軍が撃ちまくってもM3リー戦車が破壊される様子も無く、ただ弾を無駄に撃っている気がして私はどうも気が進まなかった。

 果てに戦車軍長が『撤退せよ』の命令を出す始末である。


「ダメだ、ここでM3リー戦車を撃破させるぞ」

 アキャブ戦車軍長の顔をびっくりさせたいものである。怒られてもいいからな。

 敵の75mm砲は旋回が出来ないので、車体自体を動かなさなければならない戦車である。上部の37mm砲は旋回できるのでとにかく致命的な部分を避ければ何とかなると、私は随分無茶なことを思い浮かべていく。


 まず河の中へ入らなければならない。その間は的になる・・。

 そうだ!発煙手榴弾!

「各員、発煙手榴弾用意せよ。合図と共に車外につけろ」


 突撃と共に煙幕を焚いて、各小隊が左右に分かれてかく乱させる。そして敵の真正面から突っ込み、そこに手榴弾を投げつけると言うあまり計画性の無い判断だが、やってみるしかなかった。

「小隊突撃せよ」

 戦車達は横一列に並び森林の地を走りぬけ、川岸までたどり着く前に「2、3、4、5、分かれ!発煙弾投下!」と喉奥が潰れるくらいの声で命令を下したと同時に視界いっぱいに雲が作り出され、真っ白い空間を進む中で車体が前方に倒れる衝撃が走る。

 幸いに河は浅いようだ。

 ハッチから発煙弾を投げつける。

 相手の川岸まで辿りつくまでには発煙弾は煙を吹いてるであろう。


 白煙の中を突き抜けた。森林に入ればM3リー戦車がすぐ右手に居たので、すぐさま辻がハンドルを回し、側面に砲を向ける。距離は20m未満、図体の大きい敵戦車に47mm砲弾が撃ち込まれる。すると側面ハッチが破けたので「もう一発!」と坂井は次の砲弾を装填。再び発射され、敵戦車を吹き飛ばすくらいの大爆発が起きた!

 弾薬に引火したか・・。

 しかしあまりにも頑丈な装甲だ。


 随伴歩兵を踏み潰す勢いに私は残り2両の敵戦車を隅から隅へ探っていくと方向転換するM3リーが目に入る。二つの砲は赤い火炎を放ち、緑の草木を切り裂いた。長く吹き出る砲身の白煙に恐らく私が敵を探している間にも何発も撃ち込んだのだろう。

「もう4発以上撃ってるよ!いつになったら・・!」

「ぼやくな撃ち続けろ」

 距離は縮まりおよそ100m以内だろう。

「今だ!」

 車内が揺れても装甲射撃、私の声にチハの47mm砲は発射される。すると砲弾は捩れた糸のような直線を描き、敵の砲身目掛けて吸い込まれると同時に、敵戦車が突然として横転。『援護します』と小隊の声である。

 煙幕の効果はすでに切れていた。

 残り1両、横転した敵戦車のすぐ真後ろに居たので急ブレーキする暇も無く、側面を向けてこちらに気づかない我々は体当たり。強烈な衝撃に体が持って行かれそうになったがほぼ、ゼロ距離、砲弾が飲まれ射撃された。分厚い装甲にくっきり円状の風穴が一つで来たが撃破せず、砲弾が装填される。だが2発目も無効されて焦りが我々に襲い掛かってくる。

 3発目にようやく敵戦車内部から小さな火が見えていた。すぐさまチハ戦車は退いていく間に敵戦車は爆砕、私はこんなデカイ戦車たった3両の苦戦にどうも悔しく、また同じ体当たりをしたと思えばなんとも思えない気分であった。


 しばらくこのアキャブ近辺での戦いは長引くと上層部は予想した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ