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虎の子戦車隊  作者: j
マレーの戦い
1/12

突進せよ、マレー作戦1

太平洋戦争を舞台にした架空の物語です

登場兵器、出来事、すべてにおいて仮想的年表、地域に登場します。



2015 6/6 一時更新を中断し新しい作品を作る予定でいます

放置するわけでなく何か浮かんだらその場で書き溜めて、また再開できるよな感じでいます

 大地を揺らしながら堂々と進む鉄の兵器は、深夜の虫の声を踏み潰し、騒音を喚き散らしながらこのジャングルの中を進んでいた。

 これは鉄の兵器は戦車。地上の主役、歩兵を支援する大事な兵器だ。

 ハッチから上半身だけ出し、天の光を頼りに、灰色輝く木草を眼球の中で敵を探り出す。


 感じる・・。敵が居るな・・。

「前方の車長、隊長車両が停車しました」

 近衛(このえ)天木(あまき)兵長が私の顔を見て言うと「ああ」と私は素っ気無く返した。何故ならここは戦地だ。油断すれば私は頭を撃たれて死んでしまう。

 草木を揺らし走る歩兵たちの人影。槍の様に長い小銃を抱いて、戦車隊長の合図をじっと待ち、緊張感漂う雰囲気に変わりはじめる。


『射撃準備』と言う野太い男の声に、各戦車達が重たい砲身が軋む音をたてて垂直に持ち上げられた時だ。

『発射』

 暗闇に照らした砲炎と目に見えた焼かれた砲弾が、一瞬照らした暗闇のジャングルの中に飲み込まれ赤い火玉と悲鳴がたちあがり、待機していた歩兵たちの小銃からも発火し静かな夜は一変、火薬と焦げの匂いが立ち込める夜戦と化した。

 

 数時間前の出来事である。

 1941年のマレー半島コタバル上陸後、私達戦車隊は英軍を退し陣営を作った時のことである。

 緑の彩色鮮やかなジャングルに囲まれ、ここ野営地では歩兵は勿論、戦車兵が休憩をとり美味しいバナナを食べながら楽しい話、ふざけた事をしながら疲れを取っていた。


「敵地に夜襲し突破口を開く」

 と言う戦車隊長の命令に私達は今現在に至り、激しい戦闘が繰り広げられている。

 実際私は初めての実戦で内心怖いのであるが外には出さない。冷静を極力保ちたいからだ。

  

 身を屈めるようにハッチの下に隠れ、闇の中を"ペリスコープ"と言う鏡を利用した視認装置を使い、中から外の様子が伺えるもので、こういった戦闘中のみに活躍できる装置。

 すると無数の草陰から何回か光がついたり、消えたりとして赤い針が飛び、車内は鐘が軽く叩かれたかのように金属音が鳴り響いた。

「砲塔右旋回。敵の機関銃だ。榴弾砲装填」

 

 57mm砲弾を両手で抱きかかえ、大砲に弾丸を押し込んだ坂井(さかい)吉賀(よしか)伍長の様子を見た、射撃手の(つじ)美奈子(みなこ)伍長は照準機に顔を覗かせ「射撃」と言う声をだした時「発射!」と同時に車内が反動で大きく揺れ、焼きたてた薬莢は押し出され、熱と一緒に蒸し熱さが感じる。

 また外の様子を見ると例の機関銃は何も無かったかのように只の影になっていた。

 ヒューと金きり音に、地が小刻みに揺れて耳がきれるほどの爆音がすぐ間近で爆発した。


『敵の砲兵だ。全隊前進せよ!』

 戦車隊長の命令にチハ戦車、八九式の混成機甲部隊が砲弾の雨のなか前進をはじめ、我々も遅れてはならないと近衛は前進レバーを引く。重機の様に鈍ったいエンジン音は鳴きながら次第に車体の速度が増していった。

 非常に乗り心地が悪い。左右上下と地震の様に揺れるので、私は戦車帽の上からハッチが頭に当たり響くような痛みが続く。

 

 あ!いた!

 ペリスコープから見えるフラッシュにとてもじゃないけど目がつぶれそうだ。

 車内の足元は熱された太い薬莢で転がりがえり、脇から汗が滲む。まるでサウナのように暑苦しい。

 敵は驚いて逃げてしまったのだろうか?野砲から火が放たれない。


『歩兵が逃げるぞ、追撃だ』

 陣地を放棄し逃げる人影が重なって見えて、一つの固まりになっていた。

 車上の九九式軽機関銃でやってやろうと鉄兜を被りながらハッチから身を晒したとき、車内以上に音がすごく火薬の弾ける音が轟いている。

 

 ストックを右肩にあてながらグリップを握る。引き金は曲がり、軽機関銃の銃身から照らされる発火と4発に1発入る曳光弾が赤線を伸ばしてジャングルの置く深くに消えた。

 と、突然、車両が急に持ち上がると、今度は地上に突っ込かのように下がると、私は姿勢を崩してしまいお尻を打ってしまった。とても痛い。

「どうした!?」

 車内に戻された私は近衛に問うと「敵の残骸を踏んだようです」と素早い手先でレバーを操りながら言った。


 マレー作戦は「突進あるのみ」あの師団長の声が脳裏に蘇る。これくらいの事なんてちっぽけだ。

 ハッチを静かに閉じながら戦車隊長車の後を走り続ける戦車達はこれから来る戦いは、私達が想定以上なものがあるだろうと思いながら、唸り上げるディーゼルの音を耳にジャングルを通り抜けていった。

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