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作者: 綿崎 リョウ

 僕が人とのかかわりをほとんど持たなくなってから、何年が経っただろうか。

 みんなが僕の事を馬鹿にしているようで、笑っているようで、みんなが僕の事を大声で怒鳴り、暴力を振るってくるように思えて、怖かった、恐ろしかった。

 外を歩いていると、すれ違った人が僕の方を見て笑っている。

 電車に乗っていると、いろんな人が僕の悪口を言って盛り上がっている。

 すべてが妄想なのかもしれない、現実なのかもしれない。

 おそらくはほとんどが妄想なのだろう。

 でも、僕の中では、僕の心の中では、頭の中では、それは紛れもない現実で、実際に僕は苦痛を感じてしまっている。

 だから、そういうことを感じないように、考えないようにするために、できるだけ人には迷惑をかけないように生きている。

 電車ではお年寄りに席を譲る以前に座らない。太り気味の体格の僕が座る事自体が迷惑だ。立つときも、周囲の状況を確認して、その時々の最適なポジションに立つようにと心がける。

 人が一人しか通れないような道で反対側から人がやってきた場合はその人が通るのを待つ、自分から先に行こうとはしない。

 大きいバッグは持ち歩かない、普段は歩道の端を歩く、レストランなどで自分が出入りするタイミングで人がやってきた場合はその人が通るまでドアを押さえておく等、とにかく自分で気付いたできる事はすべてやっている。

 そうする事によって、僕は人から蔑まれない、馬鹿にされない、変な妄想もおこらない。

 人と話す時はとにかく相手を立てる、自分にはどんな不都合な事でも、相手の言い分を聞き入れ、相手に従う。

 そうすれば、怒られずに済む、殴られずに済む。

 結局は僕が注意すればいいのだ、周囲に気を遣えばいいのだ。

 たったそれだけのことで、僕の中の世界も、他の人の世界も、全てが上手く回るのだ。

 人が皆、そうやって気を遣って生きていければ、世界は平和になる、争いもなくなる、みんなが幸せに生きていける。

 でも、誰かがそういう人を自分の利益の為に利用しようとするから、気を遣う人から搾取をしようとするから、世の中は平和にならない。

 僕は永遠に搾取される側の人間であり続けるのだろう。

 そうしないと、生きていけない人間だから。

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