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77:打ち上げと次の約束

「料理揃った? じゃあ始めよっか。ウォレス、転職おめでとう~!」

「ウォレス、おめでとう、お疲れ!」

「おめでとうございます!」

「おじいちゃん、おめでとー!」

「おめでとう! いやぁ、なかなか面白いクエストだったな!」


 転職クエストも無事終わったし打ち上げをしようということで、私たちは銀葉の庵を後にしてサラムの街外れにある料理店に来ていた。

 皆が口々に私が無事転職できた事を祝わってくれて、何だかちょっとくすぐったい。

「うむ、ありがとう。皆の協力に感謝を」

 そう言ってお茶の入ったコップを差し出すと、皆も笑ってジュースやお茶の入ったコップをカンコンとぶつけてくる。

 大きな丸テーブルには美味しそう……いや、見た目はちょっと色とりどりだが味は問題ない、サラム独特の料理が並んでいる。

 紫色の鶏肉っぽいもののソテー、蛍光オレンジのシチュー、ピンク色の卵料理に、緑色の推定ポテトサラダなどなど……味はすごくいいんだよね、味は。

 この店の料理は見た目がすごいが、味に間違いはない。店を選んだ者の責任として、私が最初に料理を取り分けて口に運ぶと、それを見ていた皆もおっかなびっくり料理を皿に取った。

「あ、このサラダ美味しいわ……緑色で芋としてダメな色って感じするけど、美味しい……」

「このシチューも、濃厚で美味しいホワイトシチュー味で……美味しいけど胃で光りませんかね?」

「サラムって変な色の料理多いよね!」

「うう、脳が混乱する……」

「俺もちっと苦手だなぁ」

 気にしつつも美味しく食べているのはユーリィとヤライ君。気にしてないのはスゥちゃんで、気にしすぎて薄目で食べているのはミストとギリアムだ。

 私はもう慣れたので気にせず食べている。

「ここはわしがサラムで見つけた中で今のところ一番味がいい店なのじゃよ。今日はわしの奢りじゃから、沢山食べるといい」

 あちこち回ったけれど、こういうレストランの中では一番お勧めの店なのだ。

 皆も実際に口に運んで味には納得したらしく、段々と料理が減っていく。料理の色合いに疑問を投げかけながらも、打ち上げは賑やかに盛り上がった。


「ね、ウォレス、転職済んだけど、次は何か予定あるの? なかったら遊ぼうよ。まだまだ夏休みは沢山残ってるし!」

 確かに、夏休みはまだ序盤だもんね。休みに入ってから一緒に遊んだのは初めの頃にバカンスに行っただけで、それからこの転職クエストだったことを考えるとちょっと申し訳ないかも。

「うむ、新しい職で何が出来るのかも確かめたいし、構わぬよ。だがその前にギリアムに装備を頼まねばならんかの」

「おう、任せろ! デザインはもうアレコレ似合いそうなのを考えて絞ってんだ。見た目は今と同じ系統だが、性能はかなり上がるぞ」

「それは頼もしい。後でステータスを知らせるから、よろしく頼む。予算も潤沢じゃよ!」

 なんたって合間合間に生産を続けて、せっせと稼いで……稼ぎすぎたっぽくてどうしようって感じだからね!

「おじいちゃんがオークションに出してる魔道書の人気、まだ衰えてないもんね!」

「羨ましい話ですね。俺ももうちょっと鍛冶頑張って、金策しようかな」

 ヤライ君の生産は鍛冶がメインらしい。暗器使いだもんね。しかし今のところ自分で使う武器を生産するくらいで、あまり商売にはしていないんだとか。

「私もやっぱり薬師辞めて、別の職業やろうかしら。弾の種類が増えてきたら経費が馬鹿にならないのよね」

 皆それぞれ金策の悩みが尽きないようだ。

 薬や武器の売れ筋や流通が足りてない物の話でしばし盛り上がる。そんな話の中、ふとミストが顔をこちらに向けて口を開いた。


「そういやウォレス、まだフォナンに行かないのか? 夏休みで人も増えてるから、行くなら今のうちに移動した方がいいぞ」

 あ、それ丁度考えてたんだよね。

「うむ、転職が終わったら行こうと思うておったのじゃよ。あちらで探したいものもあるしの」

「探したいもの? 何……って聞くまでもないか。本だな?」

「うむ、本じゃな」

 聞いた様子だとフォナンは大分脳筋の街っぽいんだけど、でも多少の本くらいはあると思うんだよね。前にギリアムに話した廃鉱山の情報とかも探したいし。

「あ、なら装備の更新が終わったら一緒に行く? 馬車使ってもいいけど、レベル上げついでに歩きでのんびり行くのもいよね」

「いいねー! ボクも行きたい!」

「いいですね。俺も参加したいです」

 ユーリィやスゥちゃん、ヤライ君は乗り気のようだ。ミストとギリアムの方を見ると、二人も少し考えてから頷いた。

「俺も参加する。どうせ休みだしな」

「ああ、俺もいいぞ。出来たらついでにちっと寄り道してぇが」

「寄り道?」

「ああ。フォナンまではまっすぐ行けば小さな村と町を一つずつ経由するんだが、途中で道を逸れると立ち寄れる村がもう一つあるんだ。そこで装飾品の材料が買えるんだよ。転移石じゃ行けない小さな村で、ついででもなけりゃ行くのが面倒なんだが……」

「なるほど。急ぐわけでなし、わしは寄り道しても構わぬが」

 皆の顔をくるりと見回すと、全員が気軽に頷いた。

「全然いいわよ。休みなんだもん、気楽にのんびり、大いに寄り道していきましょ」

「そしたらおじいちゃんといっぱい遊べるもんね!」

「そうだな……ウォレスはフォナンに着いたらまた本を探して彷徨くんだろうしな」

 いやいや友人より本を優先するだなんてそんな……まぁ、するよねごめん。


「じゃあ、ウォレスさんの装備が出来たら日程決めましょうか」

「そうだな。そんなに時間は掛からねぇから準備してていいぞ。もう材料は大体揃ってんだ」

 ギリアムが任せろと言って笑うと、ユーリィやスゥちゃんは嬉しそうに笑って頷いた。

「じゃあ次は、フォナンね!」

「楽しみだねー!」

「あ、その前に俺はセダで路地裏探索しないと……!」

「ヤライ君は酒を手に入れるところからじゃな」

 忍者に続く道を探すためにはまず七種の酒が必要だ。

 居酒屋や食料品店でお酒を売ってるの見たことあるけど、そんなに種類がなかった気がするんだよね。ワイン、エール、みたいな大雑把なくくりだった気がする。

 ひょっとすると七種の酒を手に入れるのにまず苦労するかもしれないね。

「じゃあ、ウォレスの装備が出来るまでの間はそれぞれやり残したこととか、移動の準備ね。私も薬とか弾とか補充しなきゃ」

「遠出するなら、今飼ってる騎獣の様子見てくるかな」

「ボクはオークションとか自販機見てくるね!」

「うむ。わしもギリアムとの相談が終わったら、友人たちに挨拶してくるかの」

 まだサラムでやり残したこともあるし、探索し切れていない路地裏も、街中のクエストも残っている。

「まだまだ、やることがいっぱいじゃな。時間がいくらあっても足りぬよ」

「楽しみがいっぱいだね!」

「うむ。次はどんな楽しみと出会うかのう」

 夏休みはまだまだ残っているし、行きたい場所も、やりたいことも沢山ある。

 どうせなら、目一杯欲張って、楽しみたい。

 何となく見回せば、テーブルを囲んだ全員が私と同じことを考えているような気がした。

 さて……次の旅は、何が待っているんだろうね?

転職編、一先ずこれでおしまいです。

次はフォナンへの旅からかな。

再開までまたしばしお待ちください。

次はそんなにお待たせしないように出来ると……思いたいです。

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― 新着の感想 ―
魔法爺の浪漫もさることながら、この友人達も得難い宝ですね。 基本的にこういうVR MMOでの多数派って、理想の美男美女になって異性に囲まれたりモンスター多数倒してかっこいい装備揃えたりトップランカーや…
もうミストも引き込んでクラン作ろうぜ
一区切りって感じですね。お疲れ様でした。 おじいちゃん(少女)と同じ心持ちで、次なるエピソードを楽しみに、のんびり待たせていただきます。
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