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48:転職のススメ

 さて、話は少し遡る。

 生産も結構軌道に乗り、スゥちゃんの協力もあって資金的にも余裕が出来た。

 私の場合、お金は大体新しい魔道書を手に入れるのに使うのだが、さすがに本のためにこの先に進むには、そろそろ装備の更新もしたい。

 と言うわけで由里に相談してみたんだけども。


「装備の更新かー、悩むとこね。南海は外見より機能よね?」

「外見は魔法爺に似合うんだったら何でも良いよ」

「逆に難しいわよそれ」

 放課後に一緒に帰りながら、毎日こうしてゲームの話をする。とても楽しい。

「能力値的にはまだドロップ品の方が上だけど、最近はプレイヤーメイドも段々良いのが出るようになったから、周回するより効率は良いかもね……ただ南海が気に入りそうなデザインのって、あんまり見かけない気がするのよね。まぁ私はあんまり魔法職装備詳しくないけど……」

「私が気に入らないって言うことは、女性向けとかって事かな」

「うーん、どっちかっていうと美形向けでキラキラしてる感じかしら」

「それは……」

 キラキラした装備を着たウォレスを想像してみる。いや、多分似合わないこともないんじゃないかな……とは思うんだけど、やはりなんか違う。もうちょっと渋いのが欲しい。

「もうちょっと渋い方が良いなぁ」

「やっぱり? そうするとドロップ品は結構渋いのが多いからそっちを探すか、オーダーするしかないわね。いっそうんとダサいならオクでも余ってることあるんだけど」

「オーダーかぁ。理想の魔法爺のためなら金に糸目は付けないって言いたい」

「そこは性能重視にしてよ……」


 いや、性能より魔法爺だ。そこは譲れない。

 そうするとやっぱり、色々わかってくれそうなギリアムに一括でオーダーするのがいいかな。軽装備と装飾品だって言ってたし。今度ログインしたらメールを送ってみよう。

「この前軽装備生産取ってる人と知り合ったから、今度その人に作れるか聞いてみるよ」

「え、誰それ? 私の知ってる人……じゃないわよね。どんな人?」

「えーと、総合的には残念な感じの、生産を愛するドワーフ男……かな?」

「大丈夫? 変な男じゃ無いのよね? 今度一度紹介して」

 そう言う由里の顔は至極真剣だ。由里は時々私の警備員みたいになるなぁ。RGOでは女子高生じゃ無くて魔法爺だから心配しなくても良いと思うよ?

 でもギリアムなら多分由里に紹介しても平気だろう。何となくそう言う気がする。


「いいよ。でももうすぐ試験だし、その後かな。そしたらほら」

「あ、夏休み!」

「うん。今年はRGOがあるから、楽しみだね」

「そうね! あ、でも南海、本ばっかり読んでないで、私ともちゃんと遊んでよ?」

 うん、と答えると由里が嬉しそうに笑う。

 ああ、そうだ。夏休み前にはちょっと冷蔵庫と冷凍庫を整理して、簡単に食べられる物から日持ちする物まで沢山買い込んでおきたいな。野菜を切って冷凍したり、ミートソースやカレーなんかを作り置きしたりもしたい。全力で遊ぶために、全力で準備しないとだね。

「夏休みかぁ。南海、今年どこか行く?」

「うん、グランガーデンに旅行予定。その中なら、多分大体サラムにいるよ」

「あはは、南海もすっかり、立派なゲーマーね!」

 そうとも。だって私には、サラムの図書室が待っているのだから。





「うーん、やっぱり、爺さんはまず転職するべきだな」

 サラムの広場で一緒に魔法焼きを食べながら、ギリアムはそう言った。

 装備関係の相談についてメールしたら会いに来てくれて、色々話を聞いて貰ったのだが。

「転職か……」

「ああ。その方がお勧めだ。転職すると装備の幅が結構広がるんだよ。今のままオーダーしても、すぐ不足が気になって使わなくなる可能性の方が高いからもったいねぇ。俺もどうせあんたに似合う装備を全力で作るなら、少しでも長く使って貰いてぇしな」

 なるほど。確かにそれは納得できる。どうせ頼むなら私だって長く使いたい。ギリアム渾身の魔法爺装備……面白そうだし。

 ならそうしようかなぁ……けど、問題はその転職先だ。


「ううむ……転職クエスト自体はすぐに受けられるのだが、その先で少々悩んでおっての」

「魔法系は塔のソロ攻略だったっけ? 難易度は低いんだろ?」

 そう、サラムにある七つの塔のうち、必要なものを登ると言うのが魔法職の転職クエストだ。

「今は黒魔と白魔が増えてるって聞いたけど……色なら赤が人気だっけ?」

「よく知っておるの。わしはその中なら多分黒を選ぶとは思うのじゃが、まだ迷っておっての」


 純粋な魔法系統の転職先は今のところいくつかに限られる。

 サラムの四方にある赤、青、緑、黄色の塔のどれかを登ると、火、水、風、土のそれぞれに特化した魔道士に。

 それら全てを登ってから、中央にある黒の塔を登ると、光を除く全ての魔法が満遍なく同じ威力で使える黒魔道士に。

 そのどれにも登らず、黒の塔の隣にある白の塔だけに登ると、光系魔法と回復系統に特化した白魔道士に。

 特化するとかなりその属性の魔法の威力が上がるそうで、反対属性の威力がかなり下がり、他は上昇なしと言うデメリットがあるが、戦えないほどではないらしい。

 その為使い勝手の良い火系統と回復特化の白魔道士が人気が高い。あと威力は特化型より少し落ちるが、死角の少ない黒魔道士も人気があるようだ。これは光系統だけは威力がほぼ無くなるので回復魔法も使えなくなり、攻撃特化になると言える。

 私もその中なら黒だと思うんだけど、少し迷っている。


「なんか別でやりたいことでもあんのか?」

「うむ……少し系統の違う転職先が候補に出てきているのじゃよ。しかしそちらの方はまだクエストを受ける事ができんでな」

「へぇ、特殊な条件付きの奴か? でもそれなら迷うこたねぇ、条件クリアして、そっち目指すしかねぇだろ」

「何故だね?」

「浪漫だからだ!」

 聞いたのは失敗だったようだ。いやまぁわかる。わかるんだけど!

「ハッ、違った! いや、浪漫は違わねぇが、ええと、そう言う特殊条件付きってのは、出現条件もはっきりしねぇし、クエストも難しいって話なんだが、その個人に合ったのが出てくるって話なんだよ」

「個人……わしに合っているということか」

「そう、だからハマれば癖はあるがすげぇ強いとか、めちゃくちゃ楽しいからそれはそれでとか、そう言う話なんだ。爺さんには多分そっちの方が合いそうだからよ」

 それは確かに心引かれる話だ。

 私はウィンドウを開いて、自分の転職可能職業一覧を見てみた。

 そこにあるのは一般的な魔法職アレコレの他にもう一つ。


『魔法学者』

 少し、これについて調べて見ようか。

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― 新着の感想 ―
フラグ回収ですね。
 学者さんって言われてたしな
[一言] お帰りなさい まずは読み返しますか 最新話に追いついたらまだ書き込みませんで まだね
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