LUCAから癌細胞へ
「間奏」(インタールード) の段落は、男主人公・李金土が自身の潛在意識と交わす對話である。
(新しい章を挿入することができないため、後書に配置せざるを得なかった。)
彼が「起乩」して以降、潛在意識は突如として學識深いものへと變貌を遂げた。それは、AIが起乩システムに浸透したことに起因する。
これは理にかなっている。まるでAIが現代のすべての人の心に浸透しているかのように。
なんと、LUCAまでもが彼によって引き出されてしまった。
これらの對話の中で、金土は一つの問いを追い求め続けていた――
なぜ癌の悪魔は自分に取り憑いたのか。
幾度かの對話を經て、彼はもうその答えに心當たりがあったはずだ。
以下は、天庭に入る前の間奏であり、まもなく最後の對話が訪れようとしている。
私もまた、AIを用いて二つの畫像を描き、彼の心の軌跡を描き出してみせた。
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老人はなおも耳を傾け、見つめ続けていた。その、自らの運命と深く結びついた物語を。
まるで、なにもわからぬ幼子が、一心に年長者の昔語りに聞き入るかのように……
「身体のなかのあの細胞は、有害な遺伝子の突然変異によって、自分が誰なのかを忘れてしまう。」
「ちょうど肝細胞が、自らが解毒を助けるべきことを忘れ、肺細胞が、自らが酸素を交換すべきことを忘れてしまうようにな。」
「それが唯一覚えているのは、ただ一つの往事――あの遠い古の歴史だけだ。」
「數十億年前、灼熱の海と極限の気候が支配する大地に、まだ肉眼では何も見えなかった時代。」
「生命は、これ以上ないほど単純な、細胞のような構造でしかなかった。」
「それらは次第に、アメーバのように――あるいは、今のお前の體內にいる癌細胞のように――食料を探す能力を進化させていった。」
「単細胞がやるべきことは、ただ一つだけだった。遺伝子の最も深い奧に刻まれた、最も根源的な営み――」
「餌を探すこと。生き延びること。繁殖すること。」
「怨みもなく、憎しみもなく、なぜ、と問うこともない。」
「そうして、来る日も来る日も、来る年も来る年も、どこまでも繰り返し続けた。」
「かくして、DNAの魔法と、自然淘汰のもと、アメーバのような祖先は、多細胞生物へと進化を遂げた。」
「かくして、それは、ソレとなり、アレとなり、」
「そして、彼となり、彼女ともなった。」
「お前の体内の、免疫系の白血球、その貪食の本領こそは、数十億年前の、あの温かな海水のなかで、練り上げられたものなのだ。」
「……」
老人は、聞きほれて我を忘れていた。
「遺憾なのは、お前の体内の細胞が、己を忘れた時、DNAの魔法は制約を解かれ、ついに細胞を死の道へと、あるいは、お前が『魔と成る』と見なす道へと歩ませてしまうことだ。」
老人はうつむき、物を言わぬ。心のうちは、ただ忐忑としていた。
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