病棟XVIII
前回:廟公の吐血。海外から一人娘が帰国し、父に付き添い再診の結果を待つ。
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晝食後、晴天。
亜嬌は父・金土の足取りに従い、奇妙な「病院」へとたどり着いた。――その名は「性霊病院」。
「彼氏」の阿郎も同行している。
台南人の間では、性霊病院は特異で議論を呼ぶ存在だ。創立者の炎老院長・正英が、民俗学的な「起乩(シャーマンの憑依)」を治療法として取り入れて以来、台湾唯一の憑依医療機関を自称している。そしてもう一つ、有名な都市伝説がある。――「退院者数が、入院者数よりも常に多い」という不可解な噂だ。
「Shhhhit!」
病院を目の当たりにした娘の第一声だった。
そこには少なくとも四階建ての古びたビルがそびえ立ち、機能主義に基づいた過渡期の地域医療建築スタイルを採用していた。本来なら特徴がないのが特徴のはずだが、屋上にはあろうことか古代の「盝頂」様式の屋根が載せられている。
今や建物は朽ち果て、晴天の下でも陰湿な気配を放っていた。惨めな緑と白の外壁は暴行を受けた後の「痣」のようであり、四角い窓枠は無理やり閉じさせられた「瞼」のように釘付けされている。盝頂が醸し出す死の香り、そして正門に深く突き立てられた「桃木剣」……。かつての主が、よほどの未練を残してこの廃院を捨てたことが推測できた。門番のプレート以外に看板はなく、テープで封鎖された跡には銀行のロゴが見える。競売にかけられる直前なのだろう。
「再診の住所、ここで間違いないわよね?」
娘は父のスマホに届いたショートメールと住所を何度も見比べ、疑いと苛立ちの視線を父に向ける。
金土は無実を訴えるような顔で言った。「わしだってここで診てもらったことなんてないぞ、知るわけなかろう」
阿郎が亜嬌の肩を叩く。「落ち着けって。おじさんが怒ってまた血を吐いたら、それこそスプラッターだぞ」
ショートカットで快活な亜嬌に比べ、長髪でガッチリした体格の阿郎の方が、どうやら気配り上手なようだ。
伯父はそれを聞き、マスクをしっかりと着け直した。
阿郎がスマホのメッセージを凝視し、何かを発見する。「あ、おぉ~!」「これ、再診じゃないぞ。転院だ!」「正英記念病院から性霊病院へ……カッコ……病棟、エックス、ブイ、三……?」
亜嬌がスマホをひったくる。「勘弁してよ。ラテン数字も読めないの? 『病棟18』よ!」
さすがは海外帰りである。
せっかちな亜嬌が周囲を探索し、角の先に何かを見つけた。建物の裏手に「入口」を示す矢印がある。一行がその方向へ進むと、道は行き止まり、ただ一枚のドアがあった。新しく取り付けられたエレベーターの扉のようだ。周囲の古めかしさとは対照的なその扉の上には、(ようやく)看板があった。
【病棟XVIII】
扉にはQRコードスキャナーがついている。
「わかった! コードをスキャンするんだな!」金土がスマホをかざすが、反応はない。「なぜ開かん?」
彼はメッセージの時間を確認した。
「未時正中」
スマホの現在時刻は13時58分。
「開かないんじゃない、時辰(刻限)がまだ来ていないんだ!」
彼は何事かを悟った。
空を見上げて時間を潰していると、少し離れた場所に「出口」の矢印があることに気づく。ちょうどそこから、似たような三人組が出てきた。
親孝行そうな若い男女が、足元の覚束ない老人を支えている。老人の足取りはフラフラだが、その眼差しは朦朧としながらも、どこか陶酔しきっているようだった。
すると、彼らの背後から大量の「黒い影」が駆け出していくのが見えた。
考察する間もなく、「Wow!」と目の前の扉が左右に開く。亜嬌はその正確さに驚嘆した。
中はエレベーターの構造になっており、十数人が乗れる程度の広さだ。なぜかレインボーカラーのライティングが施されている。
刻限を過ぎて閉ざされるのを恐れ、三人はその中へと飛び込んだ。
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次回:『ファンタジー・エレベーター』
診察を受ける前から、ハプニングはすでにファンタジーの域へ……。




