表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仲間たちのミクロ決死圏  作者: 帝大医学士Cpline
長寿堡の奇珍異獣
19/27

天残絶命符

前回:癌細胞の奸計は恐るべきものだった。平穏の宗師たち(リンパ節の制御性T細胞)を惑わしたばかりか、寂冥の衛士たち(骨髄由来抑制細胞)をも召喚し、強力な免疫抑制の気場を作り上げた。樹状細胞(土)は臆病風に吹かれ、ヘルパーT細胞(太)は自ら進んで過激な手段に出て、その身は危機に瀕していた!


========


「陰陽逆転、五雷起つ——!」太は全てを懸けた覚悟を決めていた。


その瞬間、突如として――


「妹弟子よ、待て!」大気の中から、雷のように重厚で反響する男の声が響いた。彼女にだけ聞こえているようだ。

「意を丹田に貫け… 気を腹底に沈めよ…(意貫丹田 氣沉腹底) 」


それはさながら運功の心法を促すものだった。太はこの声に聞き覚えがあった。全身の精神と気が静まり、落ち着きを取り戻していく。

見ると、太の胸部の膨らみが引いていく。どうやら運功の心法が効いたらしい。


「腰脊で主導し、呼吸を合わせよ…(腰脊主宰 呼吸合勁) 」と声は続く。


太は深く息を吸い込み、全身に漲っていた血脈は静まり、強張っていた筋肉はほぐれていく。呼吸はゆっくりと、しかし力強く整えられていく。


「意勁を透達させ、一雷を元に帰せ…(意勁透達 一雷歸元)」


この時、気勁が太の体幹から丹田へと集まっていくのが見えた。

瞬く間に、太は悠然と両目を開き、「はっ」と一声発した。

——これは喉を鳴らす叫びではない。内息の迸りである。内家の初学者がよく犯す間違いは「声を出すために声を出す」ことだ。喉を使って大声を張り上げる。これでは発勁の助けにならないばかりか、かえって気を散らし体力を消耗し、上体が浮いてしまう。正しい声は、勁力に伴って自然に引き出されるものであり、身体の内息がその音を「絞り出す」ように感じられるものだ。これは世俗の医学で説明できるものではない。


高人の指針を得て、運勁から発勁に至るまで、太は実に余裕を持って振る舞う。気勁は目も眩む雷光の如く、太の丹田から四肢へと迸り、四本の青白い雷龍と化して、まさに彼女の四肢を引っ張っていた五角馬の目を正確に貫いた。雷は空気を裂きながら激しく放たれる「四雷、開眼——!」四方向にそれぞれ放たれた——


一、二発目は郎と嬌の眉間の朱い印に命中し、二つの印は突如として焼き鏝のように白熱する。

三、四発目は両側の観客席の観客たちに向かうが、彼らは依然として操り人形のように微動だにせず、雷が大気の中で炸裂するに任せている。


この時、太は馬もろとも地上に落下した。五角馬は深手を負い、四肢の先端の馬の頭は爆ぜてしまったが、頭上に残る一つはまだしっかりと残っている。太の顔は露わになったものの、真紅の眼光はまだ健在で、金剛圏のように、少なくとも太の頭を締め殺さんと決意している。


太はゆっくりと(馬の)頭を回し、顔の皮膚は干上がってひび割れた川底のように吸い付いている。彼女は嬌と郎に、静かでありながら震えた声で言う「今『慧眼』、全開なり… 水天乳長交地融久去吧…」そして左右の観客席に向かって震える手を差し伸べる「同道たちよ……」


尼は思わず涙して叫ぶ「嗚呼! 師太!」


しかし羅は腕を組み冷笑する「何を大げさな! 話がめちゃくちゃやんか!」


郎の方では、その表情に異変が現れた。彼はうつむいて自分の胸元を見ると、衣服の下からTの形をした白い光が浮かび上がっているのが見える。同時に、左右の剣指にも白い電光が走り始めている!

——キラーT細胞、活性化


隣の嬌も表情が変わった。彼女は腰に佩いた大剣が唸りを上げ、鞘の口から黄色い光が漏れているのに気づく。髪と衣裳はより成熟したものに変わり、抗体のトーテムが橙色の光の紋様を浮かび上がらせる。さらに重要なのは、彼女の両目に、自信と殺気が一筋加わったことだ!

——B細胞、活性化

挿絵(By みてみん)

活性化したB細胞


既に力尽き果てた太は、馬の頭を乗せたまま、嗄れた声で二人を促す「何を待つ? 門を破れ!」

「しかし師太は?」二人が躊躇するその時――


「ちっ、私がやる!」二人の目に、羅の姿が突然飛び出すのが映った。宙に舞う残像の中、優雅に傘を開く。太の真上で、一言:「薔薇、開蕾——!」傘の縁が鋸歯状になり、さらに真紅の薔薇の花びらがひらひらと舞い落ちる。

——吞噬作用、開始!


二人がうっとりと見惚れていると、羅が空中で突然表情を変え、下の二人に向かって怒鳴る「おい! いつまで見物しとるんや!」


郎と嬌は顔を見合わせ、うなずき合う「姉さん、承知!」奮力して前に飛び出し、瞬く間に平台へと続く階段まで辿り着く。

同じ時、上方の人型の鮕は軽く笑いながら、大犬の首輪を外して言う「ひひっ、天残坊ちゃん、ちょっと遊んでおいで~」


「Heavenly Crippled Dog?」嬌の驚きの声も虚しく、二人は頭上を覆い尽くす影に気づき、慌てて後退した。


轟音と共に地響きが立つ。この巨犬は彼らの倍以上の高さがある。毛はなく、ただ頭は胴体よりも大きく、贅肉が震え終わらない。顔つきは間抜けだが、両目の窪みには眼球がないようだ。


嬌は思わず批評する「SOB! この片足萎れとるのに、あんなに飛び跳ねるのが好きって、そら異名も付くわ!」


「こいつが猴坊を踏み潰したクソ犬や! 仇は取らなあかん!」大後方の土がタバコをくわえて大声で叫ぶ、実に響き渡る。


巨犬を目の前に、二人は以前とは違い、朱い印は燃えるように赤く、空中にはかつての開眼の符印も浮かび上がっているものの、それでも臆することは免れない「あ、あいつはとっくに見、見破ってるから、怖、怖くなんかない!」郎の声は震えている。

——前回、二人は既に鮕の舌(抗原)を識別している。天残犬は鮕から分裂したもので、同じ抗原を持っている。


「こいつは歩けへんのや、怖がることない!」土は相変わらず大声で、ありがたいのかどうかわからない応援を送る。


足が不自由で歩けないが、跳ぶことはできる。巨犬は瞬く間にまたも巨大な足に変わり、ワンと一声吠えて猛然と跳び上がり、郎目がけて一脚を踏み下ろす。「ドン!」郎はかろうじて避けたが衝撃波で吹き飛ばされる。それでも空中で颯爽と剣指を振るい「あたっ!」と一声、電光が犬の脚をかすめた!


「ワオーン!」犬が微かに鳴いた。

だが3秒と経たず……


傷口が蠕動しながら癒え始めた! 黒い粘液が生き物のように創面を覆い塞いでいく。人型の鮕が上方で甲高く笑う「ハハ鮕~!」


「修復の大法?」郎は半跪き、息を切らす。

——末期癌において、免疫細胞の技は癌細胞の変異のスピードに追いつかないことが多い。


しかし嬌は冷笑しながら巨犬の脚に向かって突進する「ふん!」鮮やかに手首を返して剣を抜き、「これを試してみな!」と言う。長剣はカチンという音と共に五つの手裏剣に砕け散り、自動的に五角の手裏剣の形に組み合わさる。回転しながら、正確に犬の脚に五つの創口を穿つ。一直線に並んだそれらは――

「爆剣五連星!」創口はたちまち五つのXマークへと変わる。

——B細胞が最初に分泌する抗体はIgM(五量体)抗体である。五角の手裏剣の形はこれを象徴している。後にさらに活性化されると、より先進的なIgG(単量体)抗体を産生するようになる。


嬌は標識が整ったのを見て、郎に再攻撃を促す「郎! 今よ!」

——抗体自体には直接的な殺滅作用はないが、敵の弱点を露わにすることができる。抗体は通常、敵に標識を付け、他の免疫細胞や精霊(補体タンパク質)に攻撃を指示するが、キラーT細胞のような特異的な一匹狼の殺し屋はその対象外である。ここでは嬌(李金土のB細胞)が院によって改造された結果、抗体を分泌し、キラーT細胞に認識させることができるようになっている。医学的に、この抗体は「二重特異性抗体」と呼ばれる。癌細胞とキラーT細胞の両方に結合し、両者を接近させて対決させるのである。


一方、羅は五角馬を傘の中に押し込もうと力を込めている。傘面が開いたり閉じたりするたびに、怪物は引き伸ばされて醜悪な餅の細長い形になり、下半身は既に傘の中に収まり、傘面は膨らんでいる。餅は粘り気が強く伸縮性があり、なおも地面にぐったりと横たわる太にへばりつき、赤い目の馬の頭はまだ彼女をしっかりと覆い被さっている。

——吞噬作用は真っ盛り、膠着状態である。


別の場所では、尼が座禅を組む天の傍らに跪坐し、口に念じながら、片手で数珠を数え、もう一方の手を彼の肩に置いている。彼女を中心に、温かく癒しに満ちた光の球が形成され、周囲の暗い雰囲気とは対照的である。

尼は理解している。強敵を前に、天誅型の武士が回復すれば、勝算は大きく向上する。

誰も邪魔をしなければ、の話だが……


この時、土がタバコをくわえて後方から顔を突っ込んで言う「小師妹、お前さん、いい匂いするなあ!」その間に大きく煙を吐き出すと、瞬時に光の球全体が濁り、尼と天はむせて咳き込む。


こちらでは、嬌の指示のもと、郎が攻撃に合わせる。雷電を帯びた剣指を掲げ、飛剣の標識の軌跡に沿って、深々と切り裂くように傷を刻む「穿孔毒殺——!」


「あおーん——」大足の犬が悲鳴を上げ、傷口からはアスファルトのような黒い血が噴き出す。

人型の鮕はそれを見て、痛ましそうな表情を見せ、突然ひどく悔しそうに言う「ああ、全部私が悪かった。お前の二つを取って遊んでいたからな!」彼は手にしていた二つの黒い長寿玉を弄ぶのをやめ、左右の手にそれぞれ一つずつ持つ。そこには白く「PD」「L1」の文字がある。そして一緒に投げ放つ「残坊ちゃん、お前に返すぞ~」


二つの長寿玉は大足の犬の方へ飛んでいき、まるで自動誘導のようだ。犬の頭が突然大きくなり、二つの玉は本来空っぽだった眼窩にそれぞれ嵌り込むと、瞬時に赤い眼球に変わる。犬の頭はすぐにまた縮み、大犬の体(脚)はたちまち変化を遂げる!

無数の骨の棘が皮膚を突き破って現れ、それぞれが無数の青黒い鱗に凝結する。不気味な文字が浮かび上がり、犬の脚を主とする全身を覆い尽くす。


人型の鮕は得意げに宣言する「皆の者、見てくれ! 我が家の残坊ちゃんは鎧を着て、なんと威風堂々としていることか! あの小さな刀や小さな指先たち、また挑戦してみるがいいさ!」


大犬の変貌は羅の目を逃れない。彼女は忙しい合間を縫って高声で叫ぶ「絶命符? 今度はやばいで!」


羅の鑑定により、太も当然その恐ろしさを知っている。忙しい中、息も絶え絶えに皆に警告する「この呪い、実に猛毒… 触れては…ならぬ」


太の声が息も絶え絶えだったせいもあり、実際には警告が遅すぎた。郎の剣指は既に巨犬に触れていた……


========


次回につづく《破甲》

爪よりも巨大な犬の脚を前に、それも絶命の鎧をまとっている。郎の危機は目前に迫り、郎の爪は無事では済まないであろう…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ