猊鮕盯(ニコチン)
前回:金土の日常——隣人や郷親たちが、次々と彼と共に細胞の異界へと引き込まれた!
彼らはもはや細胞としての視点しか持たず、「癌」も「タバコ」も概念から消え去っている。ただただ(システムによって)攫われた若い二人の行方を、力を合わせて探すよう命じられているだけだ。
ようやく足場を固めたその時、強敵が襲い来る!
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身体にとって、癌細胞という生来の宿敵は、まさに総力戦を強いられる存在。全村総出の大仕事なのである!
金土「土」:樹状細胞 (dendritic cell)
亜嬌「嬌」:B細胞 (B cell)
「太」:ヘルパーT細胞 (helper T cell)
四「郎」:キラーT細胞 (cytotoxic T cell)
「天」:天誅型細胞 (natural killer)
「猴」:好中球 (neutrophil)
「尼」:単球 (monocyte)
「羅」:マクロファージM1型 (macrophage-M1)
「淨」:マクロファージM2a型 (macrophage-M2a)
「迪」:幹細胞 (stem cell)
(以上、登場順。今後もさらに多くのキャラクターが登場する。)
このうち、天誅型細胞、好中球、マクロファージは自然免疫細胞。T細胞とB細胞は獲得免疫細胞。樹状細胞の役割は、主に獲得免疫細胞を活性化することである。
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血河の水面が沸騰し、川面は瞬く間に大波と黒い霧に包まれた。
「羅」の簪が刺すような青い光を放つ。彼女は本能的に両手で赤い油紙の傘を固く握りしめ、傘の先を荒れ狂う川の中へと向けた。
「前方高エネルギー! まるごとまとめて奴らが迫ってくる! もう目前よ!」 波濤の音に混じって、彼女は高声で皆に警告を発する。
タバコをくわえた「土」は慌てふためきながら桃木の杖を掴む。杖の先からかすかに浮かび上がる黄光が、かろうじて前方の濃密な黒い霧を貫く。霧の中では何か生き物がうごめいているらしく、背筋の凍るような「ブクッ」という音が、一つ、また一つと響いてくる。
「こ、これは……なんなんだ?」 土の声は恐怖で震え上がり、そのまま皆の後ろに隠れた。
その時、羅は最前列にいた。
その後方では「郎」と「嬌」が戦闘態勢を取っている。「太」は背筋を伸ばして立ち、両手を静かに後ろに下ろしている。
さらにその後方には二組の姿があった。
土は「猴」のそばに寄りかかっている。猴の爆竹には既に火がつけられ、土は気を落ち着けようとタバコを深く吸い込んでいた。そんな折、タバコから立ち上る青い煙が、何とも不気味に、そして場違いに漂っている。
「天」は「尼」の肩に手を置き、彼には何も見えないので、彼女から現場の様子を聞いているところだった。
怪物がその姿を現した! 三体の異様なシルエットが霧を破って飛び出してきた!
「猊」は既に陸地に上がり、ゆっくりと歩き回っている。狼にも犬にも見え、全身は爛れ、吐く息は糞のように臭い。
「鮕」は水から跳ね上がってはまたドボンと水中に戻る。不規則な形の血の塊のようで、そこから一本の長い何かを伸ばしている。
「盯」は空中を旋回している。大きな頭に九つの首を持つ蛇のような姿で、シューシューと鳴きながら、それぞれの目がその場にいる全員をじっと見つめている。
狗形の猊
蛇形の盯
怪物たちのもの凄い勢いに、皆はどうしても少しばかり怯んだ表情を浮かべる。ただ一人、天と太だけは表情を微動だにさせなかった。
天は元来、怖気づくということがない。彼には何も見えないからだ。
しかし太は、すべてをはっきりと見ている。
彼女の姿は松のように凜とし、山のように沈み、両足は前後に構え、息を丹田に落とし込む。まるで老木が大地に根を張るかの如く、全身の重みを後方へと移動させる——それは決して怯えの姿勢ではなく、まるで満月に引き絞られた弓のようだ! 彼女は千鈞の力を蓄えているのだ!
黒い霧が迫る。その時、鮕が再び水から躍り出た。皆の視線が一瞬でそれに注がれる。空中で見ると、それは魚のような形に変わり、伸びているのは長い舌であることがわかった。
鮕が水面に落ちかけたその瞬間——太が「ふん」と鼻を鳴らし、足先を一つ蹴り、腰と股関節がばねのように解き放たれた。彼女の全身は弦を離れた矢のごとく炸裂し、駆け抜けた空気は震え、衣の裾が翻る合間には、気勁の螺旋軌道がかすかに見える。瞬く間に羅を追い越し、敵の目前まで迫ると、足の裏が巨木の門のように轟然と大地を踏み鳴らし、猊と盯をその眼差しで射抜く。二匹の獣は黒い霧ごと、数丈も押し戻された!
「いわゆる……『引き込み、受け流し、合わせて即座に放つ』なり(引進落空合即出)!!」 言い終わるや否や、彼女はなんと皆の方へと振り返った!
「皆の者、貧道はすでにこの目でしっかりと見極めた。この海陸空の災いの連中は、淨と迪を拐かした奴らと同類であろう! 今は急務、我ら同道の者よ、貧道の言葉を聞いてほしい。まずは奴らの急所を見破ることが肝要、そして…」
——太(ヘルパーT細胞)の大いなる恐れなき精神。彼女は敵のものすごい勢いを理解した上で、まずは一撃で威圧し、免疫の兵たちの士気を高めねばならぬと判断したのだ。特に今は土(樹状細胞)が縮こまってしまっている状況、彼女が自ら立ち上がるよりほかなかった!
しかしながら…彼女には直接攻撃する能力が欠けている……
太が語っているその間に、猊と盯の二匹の獣はそれぞれ「ガルルル!」「シャーッ!」と叫び声を上げ、一斉に彼女に襲いかかった!
危機一髪、郎と嬌は互いに目配せを一つ交わすと、二人揃って猛然と駆け出し、それぞれ地上の猊と、天上の盯へと剣指を向けた!
郎は疾風のごとく、瞬く間に技を繰り出し、相手の急所を突く:「死穴毒殺!」 剣指は毒竜の息吹きの如く、正確に猊の咽喉を貫かんとする!
同じ瞬間、「神剣、出鞘!」 嬌が軽やかに跳び上がり叫ぶ。透明な刃が優美な弧を描き、空中の「盯」の頭目がけて真っ直ぐに振り下ろされた!
さすがは獲得免疫のスターたち。初陣の技は実に優美であった!
しかし……
郎の指先が猊の爛れた毛皮に触れた瞬間、「カン」という金属音が響き渡る。それはまるで鉄壁を突いたかのようであり、猊は半歩後退したのみだった。
「ああっ、くそったれ!」 郎はよろめきながら後退し、指は痺れ、変形していることに彼も気づいた。
一方、嬌は自らの剣身がすでに盯の頭部にめり込んだと見ていた。だが、剣刃が幻なのか、それとも盯が幻なのか、両者の間には全く衝突の感覚がなく、盯は向きを少し変えただけである。盯は得意げに振り返り、彼女に向かって細かい歯がびっしりと並んだ大口を開けてガチガチと笑い声をあげた。
「ホーリー…スネーク!」 嬌は着地し、足首をひねりそうになりながら、無傷の盯を信じがたい面持ちで見つめる。「ワット・ザ・ファック!」 彼女は気づいた。自分の「剣」は確かに透明だったが、柄しかなく、刃など存在しなかったのだ!
何しろ、両者とも「獲得免疫」である。まずは育成を経ねばならないのだ。
郎と嬌の攻撃は不発に終わったが、かろうじて太が二匹の獣に襲われるのを防いだ。太はいら立ちをあらわにし、足を踏み鳴らす「話を聞いてくれと言っているのです! まずは怪物に目印をつけて、それから…」
太が言い終わらぬうちに、猊と盯はまたもや襲いかかり、揃って彼女に飛びかかる。二匹の獣の「ギィギィ」「ガアガア」という声と、彼女の「わあっ——」という声が入り混じるのだった。
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次回につづく《先天の勇士》
太が二匹の獣が素早く迫るのを目にしたその時、さらに速い、彼女の目では捉えきれないほどの現象が起こる!
「太」:ヘルパーT細胞




