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第14話 クラッシャーの脳筋大作戦(後半)

第14話(後半)


 社の奥の奥。

 ウツロが普段、村全体を監視する部屋「神隠しの間」

 そこに恐らく、ウツロはいる。


「ま、ウツロが出てこなかったのはラッキーだったな。」

 クラッシャーは頬から垂れる血を拭き呟く。

「確かに⋯。なぜ出てこないのか。この広間での戦いも、見られているはずだが。」

「一つ言えるのは、チーターがやられるとは思ってなかったんだろうな。」

 歩きつつ、口に溜まった血を廊下に『ぺっ』と吐き出す。

 血の中に歯が一本混じっていた。

 甲高い音を立てて、廊下を転がっていく。


「⋯大丈夫なのか。一度、チーターがやり合ってるから分かるが、ウツロは強いぞ。」


「あ〜、やるしかねえだろ。というか、チーターが負けたって方が信じらんねぇ。」

 呑気に話しながら歩く二人。

 戦闘の疲労か、勝利の高揚か。社が、来たときよりも薄暗く、冷たくなっていることに気づかぬまま。



 最初に気づいたのは、キーパーだった。


 クラッシャーが自室で寝ているため、起きてくるまでシーカー考案の遊び"さっかぁー"を外の公園でやっていた4人。

 体を使うだけでなく、意外と頭も使う。


 集落にいた白装束の村人たちも集まってきて、白熱していた。


 ハンマーが球を槌で殴る。打ち出された球は、ものすごい勢いでキーパーの立つ"ごぅる"へ。

 球はキーパーのちょうど右横へ入りかける。

「よっしゃ!」

 ハンマーがワンテンポ早くガッツポーズをしたそのとき、銃声が聞こえ球の軌道が代わり、キーパーの手元へ収まる。

「⋯よし。」

 撃ったのはもちろんガンナー。シーカー的"さっかぁ"では、圧倒的ルール違反である。

「んもー〜!だからガンナーはキーパーの仲間じゃないんだって!」

「知らん。皆でよってたかってキーパーに球を打ち込んでいるんだ。私ぐらい味方せねば。」

「⋯ははは。」


 地面に線を削り、そこらへんにあった木で枠をつくった"ごぅる"。能力を使おうが何をしようがOK。とにかくごぅるに球を入れれば1点。キーパーに止められたり、ごぅるを破壊してしまうと退場。

 

 そんなシンプルな遊びでさえ、大盛り上がりして既に20人近くの人だかりが出来ている。

「ねえ!オイラも入れて!」

「俺にもやらせてくれ!」

 戦いを禁止され、慎ましく生活していた集落の者たちにとって、久しぶりに熱くなれる"娯楽"。

 静かな集落に、歓喜の声や楽しい悲鳴が交差する。


 そのとき――光が、揺れた。


「なんだか、暗くないか?」

 キーパーが周りをキョロキョロと見渡す。

「え?そう?」

 一人がよそ見をすれば、周囲の者もつられる。するとシーカーが公園から出た先を指さして

「あそこ!」と叫ぶ。


 そこは、居住エリア。

 乾拭き屋根の低い家々。それぞれの家から、同じ方向に向かって"影が生えていく"。

 家だけではない。周囲の木々や、路地。集落全体に影が広がる。


「な、なんだこれ?」

「影が⋯、伸びて⋯。」

「い、いや違う!"光の方"だ。

影を照らしていた光が、引いているんだ!」

 

 よく見ると、光が社の方へ引いていっていた。集落全体から、淡くぼんやりとした光が、社へと吸い寄せられていく。


 しばらくして、伸びていた集落の影は止まった。

「なんだか、村全体が暗く感じる。」

 ハンマーが影のある村を見て、話す

「いや⋯恐らくこれが、普通なんですよ。今までが"明るすぎた"。」


「⋯何か、あったのかもしれない。社へ向かおう。」

「クラッシャーは?」

 ハンマーの問いかけに、キーパーは少し悩んで答えた。

「いや、アイツも疲れているのかもしれない。寝かしておこう。」

 そうして、4人は社へ向かう。

 このとき、もし社に向かわなければ。

 もしクラッシャーを起こそうと部屋を確認していれば。

 世界の結末は、変わっていたのかもしれない。



 広間での戦闘の余波で、社全体の壁や柱にきしみがはしる。

 隙間から差し込んでいた白光が、脈打つように明滅する。

 

「あそこが、神隠しの間だ。」

 タイガーは続ける。

「俺も、あの部屋には入ったことがない。だが、間違いなくウツロはそこにいる。」

 

「⋯なぁ、なんかちょっと"寒く"ねぇか?」


 後ろを歩くクラッシャーからの疑問。それに応えようとタイガーが後ろを振り向いた、そのとき。


 ボッという何かが燃える音と共に


 社の白が、濃くなった。

 影が消える。

 床の亀裂も、倒れかけの柱も、血溜まりも――


 白。


 そして次の瞬間、視界すべてが塗り潰された。


 クラッシャーは地面を殴りつける。"破壊"の力を使う。

 床を砕き、床下を穿ち、更にその下の地面までも続くぶち抜く。

 タイガーは突然の浮遊感に襲われる。落ちざまに、頭上で爆熱が走り髪の毛先が焦げた。

 

『その判断に要した時間は僅か2秒』


 ほんの刹那でも遅れれば、二人は消し炭になっていた。

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