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第11話 盗み聞きしても生き残った。

第11話


 案内されたのは、小さな茅葺き屋根の小屋。

 扉を開けると、拍子抜けするほど整っていた。

 白い畳。白い壁。白い寝具。

 窓から差し込み続ける、明るい日差し。


 僕らを案内してすぐに、面の二人は出ていった。

「村の中を自由に過ごして良いが、勝手に外に出るのは駄目だ。」

 タイガーは出ていく際に忠告してきた。


 明らかに異常をきたしているキーパーとガンナーを、急いで寝具に寝かせる。

 うなされ、脂汗が止まらない二人の体を、シーカーとハンマーが拭いてやる。


 そんな様子を見てもどこ吹く風のクラッシャーは、何も言わずに部屋を出ていった。



〜 

 視界に広がるのは、星の海。

 そして星の光に紛れる、大量の戦艦。

 

 一つの戦艦から、通信が入る。

『もう、終わりだ。お前たちは包囲された。投降せよ。MB1019。』


 "私"は、通信ボタンを雑に押して、声高に叫んだ。

『ふざけるな!誰が貴様らなどに⋯!私たちはまだまだ戦える!!』

『お、おい待ってくれ!!アサ⋯隊長!』

『投降しましょう⋯このままじゃ全員宇宙の藻屑になる⋯!』


『な、何を弱気なことを!!貴様らに星を守る者としての誇りは無いのか!?ーーガハッ⋯!!?』

 そのとき、"私"の腹部が燃えるように熱くなった。

『もう、うんざりなんだ⋯!』


 いつまでも、熱いのに。

 体は、少しずつ冷たくなって周りの声が聞こえなくなる。


『ア⋯ヒ⋯隊長には⋯ついて⋯ない』



(⋯眩しい。)

 ガンナーは目を覚ます。この世界はどの街もそうだが、どれだけ時間が経ったのか外の状況では分からない。


 影の角度が、変わらない。

 ガンナーはゆっくりと身体を起こした。


「ガンナー!平気?」

 起き上がったガンナーを見て、ハンマーが駆け寄る。

 その声に気づいたシーカーも寄ってくる。


「額に残っていた汗も引いていて、呼吸も安定している。良くなったみたいですね⋯」

 シーカーが胸を撫で下ろす。


 ガンナー自身も、あれほど激しかった頭痛が嘘のように消えていたことに驚いた。


 だが。


「⋯!キーパーは!?」

 ガンナーの問いかけに対し、ハンマーがゆっくり後ろの布団を指さした。

「キーパーは⋯まだ⋯。」


 ガンナーは指さされた方へ駆け寄る。

「はぁ⋯はぁ。ウッ!!」

 そこには、布団の上でうなされるキーパーがいる。


「お、おい何が⋯!キーパーは、キーパーは大丈夫なのか!?」

 取り乱すガンナー。

「ガンナーも、あんな感じでずっとうなされていたんだよ。もしかしたら司祭の能力なのかも⋯」


「司祭の⋯?」

 何かをされたような気分では無かった。それよりも"何かを引き出されそうになった"。そんな感覚。


「ガンナーさんも良くなったし、多分キーパーさんももう少し休めば治ると思うのですが⋯」

(キーパー⋯!!)

 ガンナーは、その場に座り込み、心配そうにキーパーの顔をのぞき込む。

 そして、キーパーの手を強く握りしめた。

「キーパー⋯!起きてくれ⋯」



 サンライズヴィレッジを歩く、白装束の男。


 笑い声が遠くで響く。

 花畑を男女が愛でている。

 水車が回る。


 平和だ。

 ——吐き気がするほどに。


「……救い、ねぇ。」

 視線の先に、社が見える。

 昼なのに、なぜかあの建物の周囲だけ、空気が淀んでいるように感じた。


 入口に面の者はいない。

 男はためらいなく裏手へ回る。


 白い壁。

 白い柱。

 白い世界。


 その中で、炉の煙だけが細く立ち上っている。

 裏口の障子は、わずかに開いていた。


 中から声が漏れている。

「——規律違反は明白です。」


 覗き込むと、白い能面を被った者が3人と、虎面の者"タイガー"。

 能面の者たちは、タイガーを囲むように立ち、話している。


「客人に、襲いかかった。」

「そ、それは⋯。」

「それは?」


 沈黙。


「し、しかし⋯寸前で止めました⋯」

「問題なのはその"衝動"です。当たろうが当たらなかろうが、仕掛けた時点で問題。そうでしょう?」


もう一度、重い沈黙が室内を満たす。


「その衝動は⋯罪です。」

 冷酷な判決。しかしその声は穏やかだった。

「だが……奴は侮辱した!」

 タイガーの声がわずかに震える。

「Zooの名を……兄貴の名を……!」

「終わった組織の名など関係ありません。掟は掟。」

 淡々とした宣告。

「浄化は、三日後に決まりました。」

「そんな⋯!」


 わずかな間。


「本日、執り行うことも可能ですが?」

 空気が凍る。

 障子越しでも伝わる、緊張。


「おもしれぇことになってんなぁ。」

 男は、白い歯を見せ笑う。

 そのとき男の背後から、突然声がする。


「ーー何を、しているのですか?」

 振り向くと、そこにいたのは司祭"ウツロ"。

「本日ここに警備が周る予定は無かったはずですが⋯。」


(チッ、社に集中し過ぎて油断した。)

 間を空けるとマズイ。そう察した男は、すぐに取り繕う。

「お客人⋯クラッシャー様より、司祭様へお話があると仰せつかりまして。」


「ほう⋯。なぜ、裏手に?」

「どうやら、内密のお話と⋯。」


 もちろん、嘘。だが、咄嗟の言い訳にしては上出来だ。男は心の中で自画自賛する。

 

「そうですか⋯。」

 ウツロはジッと男を見つめ、何かを考えたようだが、納得してくれたのかすぐに薄い笑顔に戻す。

「では⋯⋯クラッシャー様をこちらへご案内してください。」

「かしこまりました。」


 男は、すぐにその場を去る。

(あっぶねぇ〜)

 チラリと振り返る。

 ウツロはこちらに背を向け、社へと入っていくところだった。

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