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第7話 笑い合って生き残った。

第7話


 クラッシャーが戻ってきてから、何事もなく平和な日常があった。変わったことと言えば、拠点が少しだけ⋯いや結構、騒がしくなったことくらいだ。


 ナイトタウンは、相変わらず“静かな街”。

 ネオンは相変わらず、意味もなく瞬いている。


 立体駐車場の最上階。


「最近のミッションは平和だね。」

 ハンマーが、床に寝転がったまま言った。

「ガンナーがいると、飛行型マモノ相手でも苦戦しなくなったし、頼もしいよ!」

 シーカーが、爛々と話しかける。ガンナーは、相変わらず無愛想な相槌をうつが、どこか嬉しそうにも視える。


「今までは、あのデンジャーって奴と3人で生き残っていたのか?」

「うーん、デンジャーくんは緊急ミッションのちょっと前に出会ったんだ。」


「あんまり話さない奴だったな!」

 ハンマーは相変わらず寝転がって話す。コンクリートの床は冷たくないのだろうか。

「そうだね⋯。大型マモノ戦の後からは見かけないね」


「アイツはすぐ逃げ出したからな⋯。弱腰な奴はいるだけ迷惑だ。」

 ガンナーが銃を手入れしながら、冷たく言い放つ。

「デンジャーね〜。なかなか"アブねえ"名前じゃねえの!俺も会ってみたかったなァ〜」

「思ってないだろ。」

「へへへっ」

 

「しっかし、その緊急ミッションってやつ。俺も参加したかったなぁ。」

「クラッシャーが居れば、もう少し楽に勝てたかもな。」

「どうだか⋯。コイツはいざってときに、頼りにならない」

 ガンナーの鋭い一言に、クラッシャーは苦い顔をして言い返す。

「あのな〜、俺はこれ以上スコアが上がらないように待ってやってんだっての!」

「待ってもらう必要など無い。」

「なんだと!」

 ギャーギャー


「楽しいね。」

「そうだね。クラッシャーくんとガンナーくんは仲良しだからね。」


「仲良くなどない」「仲良くねえ!」


「⋯息ピッタリじゃん。」

 くだらない話をしながら、俺達は笑い合う。こんな時間も、悪くない。

 


「そういえば、最近掲示板は見たかい?」  

「いや、見てないな。」

「まー、掲示板周りは少し治安悪いからねぇ〜。」

 ハンマーは大きな槌を軽々と振りながら言った。


「あー、こっちに戻ってくる時、軽く見たぜ。」

「上位陣は大方変わってねえな。DOWNの奴らと、サンセットタウンに居た奴らが、ゴッソリ消えたくらいで。」

 クラッシャーは伸びをしながらあくびをする。


「⋯相打ちとはな。」

 クラッシャーが戻ってきてから、サンセットタウンでの出来事は聞いていた。

 DOWNと、リーダー達の相打ち。クラッシャーはリーダーがやられた隙を見て抜け出してきたと。

「⋯とはいえ全滅なんて⋯。そんな都合のいい話があるだろうか。」

 顎に手を当てて考え込むシーカー。

「DOWNの奴らは新進気鋭の派閥として勢いもあったからなあ。もしかしたら別の派閥からも目をつけられてたのかもなっ!」

「なるほど、第3勢力がいた可能性もあるか⋯。」


「ま、目立ちすぎると良くないってこった。ソレで言うと俺達も最近目立ってきてるぜ」

「えぇ!マジで!?」

 目を見開いて聞き返すハンマー。

「そりゃ、元々有名だったこのクラッシャー様の下に、大型マモノにトドメをさして一躍話題のガンナー含めてBランカーが4人。」


「この世界じゃ、危機感を持たねえ方が、不自然だよなぁ⋯?」


「そろそろトップランカーらへんが、俺達を潰しに来るんじゃねえか?」

 クラッシャーの脅かしに、ハンマーは口をあんぐりと開けて涙目になってしまった。


 ガンナーが「お前の下になった覚えは無い。」とでも言うかと思ったが、ハンマー達にからかわれたので、無視を決め込んでいる。


「確かに。気をつけておいた方がいいね。」

「や、ヤバいよぉ〜」

 震えるハンマーの背中を、ニカッと笑ってクラッシャーが優しく叩く。

「冗談だよ!しょせんBランクだし、今どき生存者同士の殺し合いはナンセンスだって!」


「ほ、ほんとかよぉ〜」


「⋯とはいえ、僕たちはより強くならなくちゃ、戦闘になったときに生き残れません。」

 シーカーはクイッとメガネを上げて、全員を見渡す。

「"アンサー"を探しに行きませんか?」

「「アンサー?」」


 

"アンサー"

 この世界にまことしやかに噂される、伝説の生存者。

 ありとあらゆる問いに対して、必ず正しい"答え"を教えてくれる。


 古参の生存者でさえ、出会ったことは無いというが、掲示板には確かに名前が存在している。

 

 噂だと、どこかの強力な派閥に囲われているとか、人里離れた山奥でひっそりと暮らしているとか⋯


「って、ことなんですが、気になりませんか?」

「う、嘘くせえ⋯。本当にいんのかよそんなチート能力な奴。」

 クラッシャーは懐疑的な目をしてシーカーを見つめる。

「能力の詳細は分かりません。ただ⋯結構前ですが、僕も一度気になって掲示板で探したことがあります。」


「でた!シーカーの好奇心!」


「そのとき、確かにありました。"アンサー"という生存者の名前は。」

(アンサー⋯。確かに、あらゆる疑問の答えを知るのであれば、それは驚異的な力だ。)

「だが⋯どこにいるかも分からないんだろう?それに、会って何を聞くんだ?」

「キーパーの言うとおりだ。」

 俺の言葉に、ガンナーは同調する。


「まず、居場所についてなのですが、僕の"探求者"としての能力によると、『サンライズヴィレッジ』に手がかりがあると思っています」

 サンライズヴィレッジ。知らない名前の街。

「それに、もし会えたら"シン化"について聞きたいのです。キーパーさんだけでなく、僕やハンマー、ガンナーさんもシン化出切れば⋯」


「戦力アップ⋯ってわけだね。」


「シン化ね〜。それも眉唾だけどな〜。」

「そ、それはあります!キーパーさんの能力が⋯」

「能力が強くなったんじゃなくて、使い方が上手くなっただけカモよ?」


 珍しく、クラッシャーは否定的だった。

(こんな話こそ、おもしろがって聞きそうなものなのに)


「とりあえず、サンライズヴィレッジには行ってみませんか?そこで何も無ければ、泣く泣く諦めますから!」

 シーカーの必死な懇願に、見ていられなくなった俺は加勢してやることにした。

「まあ、行くだけ行ってもいいんじゃないか?道中でもミッションは出来るし、どこにいても危険度はそう変わらないだろう。」

「なら、私も行こう。」

 ガンナーは真っ直ぐに俺を見る。さっきから俺の同調しかしてないような気もするが、今は良いだろう。


「そうだね。皆で行けば、怖くないよ!」


(さて、残すはクラッシャーだが⋯)


「しょーがねえな〜。キーパーに言われちゃ、拒否できねえよ!」


「あ、ありがとう⋯!みんな!」

 満面の笑顔を浮かべるシーカー。

「とはいえ準備もある。今日は休もうぜ。」

 

 クラッシャーの一言で、出発は明日ということになった。

 サンライズヴィレッジの場所や行き方等を軽く話し合ったあと、いつの間にか決まった各々の寝床へと散っていく。



 立体駐車場の3階

 3階に、キーパーの自室⋯とはいっても小さな壁の凹凸に、布のカーテンをかけている程度のスペースがある。


 柵にもたれ、街を見下ろす。


 大型マモノとの戦闘、サンセットタウンの壊滅。この世界では、やはり死は身近なもの。


(皆を⋯守りたい。)


 気づけば、そう思っていた。


 最初は自分が生き残るためだった。だが、今は違う。


 ここで笑いあう時間を、この仲間を、守りたいと思っている。


「……何をボーッとしているんだ?」

 そう言って、俺の隣に立ったのはガンナーだった。

「いや⋯。」

 俺は一瞬誤魔化す。

「なんだ、不安なのか?」


 少しだけ、考える。


「……まぁ、な。」

 

「ふふ。」

 ガンナーは静かに笑う。

「おおかた、自分のことよりも私たちを守れるのか不安なのだろう。」

 相変わらず、ガンナーの考えは鋭い。

「私も、仲間を失った。」


「この世界は、あまりにも死が日常だ。」

 

「でも、だからこそお前と出会えて良かった。キーパー。」


「そうか。」


「お前と一緒にいると、戦場でも落ち着いていられるんだ。」


「射撃手が焦ってるようじゃ、いつ背中を撃たれるか分からないからな。」

 俺が軽口をたたくと、ガンナーは「間違いない」と笑った。


「お前が盾である限り、私が矛となろう。どんなヤツでも、私が撃ち抜いてみせる。」

 真っ直ぐな瞳。自信と、深い信頼を感じる。

「頼りにしてるぞ。」


「あぁ。任せろ!」

 短いやり取り。  それだけで、少し肩の力が抜けた。

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