プロローグ 守れなくて生き残った。
『エスケープ 逃げ続けて生き残る』
が意外と好評いただけましたので、続編書いていきたいと思います。
よろしくお願いします
プロローグ
――守れなかった
◆
――血の匂いと、焼けた空気。
辺り一面、砕けた地面と燃える野原。
俺の腕に抱かれる冷たい体。
「……すまない。」
もはや、涙も出ない。
どれだけ殴られても、刺されても、壊されても。立っていられた。耐えられた。
なのに――
そのときだけ、俺は耐えられず両膝が崩れ落ちた。
自ら、死を選んだ少女。
「あなたは……生きてくださいね。」
最後に彼女は、無理をしているように笑った。
最期の言葉が、俺から死への選択肢を奪う。
そのあとのことは、あまりよく覚えていない。とにかく、生きて、生きて、生き残った。
生き残って…しまった。
世界が白く染まり、
音が消えて、
俺は叫ぶことすら出来なかった。
◆
――目を覚ます。
硬い床の感触。
天井は低く、無機質な光が並んでいる。
(ここは……?)
起き上がろうとした瞬間、体中に痛みが走った。
全身の痛み。無いはずの左手も、痛むような気がする。
(そうだ。俺は生き残って…。)
それだけは、分かる。
その時だった。
『――おめでとうございます』
無機質な声が、視界に響く。
『あなたは、第1ラウンドを生き残りました』
(このアナウンスは…!)
俺は改めて頭が真っ白になり、全身に冷たい汗が流れる。
『これより、第2ラウンドを開始します』
「終わったんじゃ…ないのか」
視界の前には、大きな建物。
まるで摩天楼のような、高い高い建物。
そしてその建物の壁に、光の板がある。
見覚えのある――あれは掲示板だ。
『第2ラウンドは「ランク戦」です』
声は淡々と、感情なく続ける。
『第1ラウンド同様、他の生存者の殺害でスコアが加算されます。』
『第2ラウンドからは、1日1つのボーナスミッションが掲示されます。ミッションをクリアすることによって、追加のスコアを獲得できます』
『第1ラウンドで行われていた生存ボーナスは存在しません』
『なお、第1ラウンドのスコアは持ち越されます。』
俺は、掲示板を見る。
『 Keeper 4,200 』
順位は、下から数えた方が早い。
俺のランクは…Dランク
『ランク基準は以下の通りです』
次々と条件が表示される。
ランクは全部でS、A、B、C、Dの5段階。
そして、最後の一文。
『Sランク到達者が四名を超えた時点で日数カウントが始まります。4名を越えたまま七日が経過した時点で――』
『Sランクの者は解放されます』
『解放者が現れた場合、残りの参加者は、全員死亡します』
……それは、第1ラウンドと同じなのか。
つまり。
今度は「生き残る」だけじゃ足りない。
殺せ。
奪え。
上に行け。
そういうゲームなのだろう。
◆
説明が終わり、視界にアナウンスが流れることは無くなった。
俺は、力なく左の拳を握った。
(俺は…生きなきゃならない。)
はっきりしていることは、
俺の名前。
第1ラウンドの"Keeper"のまま。
つまり、能力は第2ラウンドでも変わってないということだ。
生きる意思がある限り、希望を持つ限り。
俺はどんな攻撃でも耐えることが出来る。
骨が砕けても。
腕が吹き飛んでも。
血を流し尽くしても。
――死ねない。
死ぬことはないが…
怪我は治らない。
失った腕は戻らない。
(それでも…)
俺は、立ち上がるしかない。
この狂ったゲームの中で、
それがどれほど愚かでも。
俺は、生き残らないとならない。
それが、彼女の最後のお願いだから。
きらびやかに輝くネオンは、見上げる俺の額を冷たく照らした。
(エスキープ・プロローグ 了)




