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一人と独りの静電気 改訂版  作者: 枕元


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13/40

12

 夕飯を食べ終え、俺と幸は特に何をすることもなく、ただ時間が流れるままに過ごした。


 俺はポケットより、宮島から渡された紙を取り出す。


 そこには電話番号と、一言【不躾なことを、ごめんなさい】と書かれていた。


 そのメッセージから読み取るに、おそらく彼女の目的は、俺に謝ることなんじゃないかって思った。


 だけど気になるのは、どうしてこのタイミングでってこと。


 板倉が絡んでいるのはほぼ確定だし、何なら呼び出された先で待ち伏せ、なんてことも考えられる。


 捻くれてるだろうか。いや、前例がある以上、そういう警戒をしてしまっても仕方ないか。


 「お兄ちゃん、どしたの?」

 「や、何でもないよ」


 顔に出てただろうか、幸が俺の方を覗き込むように伺ってきた。


 「じゃあ聞かないけど、無理はしないでね?」

 「分かってるよ」


 何でもなくないことは、バレバレだった。だけど幸は距離感を考えてくれた。その気遣いに、少し心が温かくなった。


 「もし、さ」


 気づけば俺は、幸に向けて話し出した。


 「俺が全部嫌になっちゃって、全部投げ出して、全部捨ててどっかに消えたとしたら、幸はどうする?」


 言った後で、激しく後悔する。同時に恥ずかしさが込み上げてきた。


 俺は妹に一体何を聞いているんだ?

 こんなの、ずるい質問じゃないか。半ば強制的だ。


 幸は支えになってくれる。そんな盲信が生んだ独りよがりの悲劇だ。


 こんなの、一歩を踏み出すのに背中を押してもらいたいだけ。

 素直に頼れない自分に、嫌気がさした。

 

 つい手で抱え込む形で、顔を隠した。

 幸の顔を見るのが怖かったから。



 「どうもしないよ」



 幸から帰ってきたのは、そんな答えだった。


 そしてそれは、俺に取って何より嬉しい言葉だった。


 「別にどうもしない。どうにかする権利なんかないし、責める権利も私にはないから」


 今の私にはね、と彼女は付け足して続ける。


 「お兄ちゃんに選択を迫って、それでもなお受け入れられなかったら、私にはもうどうしようもないってわかってる。それを罰として、受け入れる」


 つまりは、俺の選択を受け入れてくれるってことだ。

 つまり俺は、俺のことを受け入れてもらいたかったんだ。

 どんな結論であれ、その出した答えを。


 「もしそれが、お兄ちゃんの選択ならね」

 「俺の、選択」


 「うん。お兄ちゃんが考えて、その末に出した納得のいく結論なら、私は諦められる」


 だけど、と続ける。


 「もし誰かに迫られて、その末に出した苦肉の策なら、私は認めない。認めたくない」

 「幸」


 「私がずるいって言ったのは、そういうこと。兄妹っていう立場を、お兄ちゃんの優しさを利用して、選択を迫ってるから私はずるい。ね?」

 「確かに、それはずるいな」


 そう言って俺と幸は、目を合わせて、笑った。


 いつからこんなに、二人の空間は居心地のいいものになったのだろうか。


 「ま、なんてことを言いながらも、多分私はお兄ちゃんのことを諦めないかもしれないけど。お兄ちゃんが私の望む答えを出さなかったら、反対しちゃうかも?」 

 「それこそ、ずるいだろ」


 「そうだよ。私はずるい子なんだよ」

 「何言ってんだ、ふふっ」


 ここまで言わせて、一歩踏み出さないわけにはいかないな。


 理由ができた。いや、理由を作ってもらった。


 俺自身のためには、俺自身のことに向き合うのには、少し勇気が足りなかった。


 だから俺もずるくなろう。理由をでっち上げてしまおう。


 ()()()()()


 理由としては十分だ。幸が望む答えを出せるように、俺は頑張ろう。


 俺がしたいことを、幸のためにしよう。


 言ってることはめちゃくちゃだ。だけど、そんなの俺だけが分かってればいい。


 言い訳も逃げ道も、情けない武器は出揃った。


 「ありがとな」


 俺は幸に一言、そう言った。


 幸は何も言わずに、ただ笑顔を返してくれた。



ーーーー


 翌日の朝、登校した俺は早速面倒な事態に見舞われた。


 「おい、お前どういうつもりだ?」


 白河だった。朝っぱらから迷惑だからやめてほしい。


 教室にいる生徒も、俺たちに注目を集めた。そりゃ、何事かと気になるよな。


 「何が?」

 「あ!?とぼけてんじゃねぇぞてめぇ!」


 キンキンうるさいな。てか、とぼけてなんかない。


 「てめぇ、二人に謝ってねぇだろ!!」

 「あっ、そういえば」


 とぼけているわけではない。

 昨日絡んでこなかったから、てっきり無かったことになったのかと思ったよ。てか、忘れていたことすら忘れてたわ。


 「テメェのせいで!俺が恥をかいちまったじゃねーかよ!!一体どうしてくれんだ!?」

 「恥をかいた?まじで何言ってんの?」


 なぜ俺のせいでお前が恥をかく。てか、今この状況が1番の恥だろ。なんでそんなに熱くなってるんだよ。

 

 「うるせぇ!このっ……」


 白河は悪態をつきながら、俺に迫ってきた。

 凄んでくるが、全然怖くない。


 初対面の店長の方がよっぽど怖かったな。今じゃあんな感じ(主に榊原のせい)だけど。


 「殴れば?」

 「なっ!?」  


 こいつ勘違いしてるな俺は別に暴力なんか怖くない。


 「ほら、みんな見てるよ?」

 「このチキン野郎が」


 そう吐き捨てて、どこかバツが悪そうな表情で白河は一歩引く。


 俺としてはそのままお家までおかえり願いたいが、そうもいかないようで。


 「何で二人に謝らなかった?」


 まだそこにこだわるのか。


 「前にも言わなかったか?何に謝るんだよ。そもそも俺が悪いことしたっていう証拠は?」


 「あ!?そんなの()()が言ったに決まってんだろ!!」


 なるほど、本人が言っていたと。だから、証拠はあるんだと。


 嘘をつくなよ。


 「嘘だな。お前、板倉に聞いたんだろ」 

 「だ、だったらどうした。お前が犯した罪は消えねーぞ?」


 お、あっさり認めたな。そこはさして重要じゃないと思ってるのか。


 「本人はそんな謝罪望んでないかもしれないだろ?」

 「んなわけねーだろ!!加害者が高説垂れてんじゃねーぞ!」


 口悪すぎだろ。どんな教育受けてんだ。

 てか、いちいち凄もうとするのやめてくれ。耳が痛い。


 「だったらさ、本人に聞いてくれよ。本当にそれが必要なのかって。聞けるよな?板倉経由でもいいぞ」

 「……ちっ。お前本当に覚えておけよ」


 やっぱり、聞けないよな。だってこれ、お前らが勝手にやってることだもんな。


 でなきゃ、あんなすれ違い起こるはずがない。


 白河は悪態を残して帰っていった。


 (なんだ、簡単だったな)


 強気でいれば、なんてことない相手だった。今までは、怯えすぎだったかもしれない。


 いや、事実怯えていたのか。何せ、独りになりかけていたから。


 今は、全てを投げ捨てられる。全てを諦められる。


 正直な話、学校とかどうでもいいや。


 逃げ道がある。


 それを作ってくれたのは、幸だ。



 


 とにかく、だ。幸のために、俺は変わるって決めた。


 だから、踏み出す。


 俺は携帯に届いたメッセージに目を通す。


 【今日の放課後、駅でお待ちしています。】


 俺は宮島と会うことを決心した。


ーーーー


 時間帯的に、自分と同じように放課後を迎えた生徒たちが、駅には多く見受けられた。


 広がって歩く学生グループに少しばかりの嫌悪感を覚えながら、俺は待ち合わせ場所に向かう。


 駅は通過点。目的地は別の場所。


 俺は10分ほど自転車を走らせ、目的地に到着した。


 「店長。わがまま言ってすいません。少し、長くなっちゃうかもですが大丈夫ですか?」

 「大丈夫だ。この前のお詫びとでも思ってくれ」


 場所はバイト先だった。向こうから場所は任せると言われたので、俺はこの場所を選んだ。


 店長に、少し込み入った用件であることを伝えたら、快く受け入れてくれた。


 まぁ、普通に客として利用するだけだから、断る理由もないのかもしれないが。


 「お待たせ、宮島」

 「ううん。ありがとう。来てくれて」


 先に案内されていた宮島は、深妙な面持ちで俺を迎えた。



ーーーー


 「あー、注文は済ませたのか?」

 「いや、まだで、一緒でいいって店員さんが言ってくれて。注文自体は決まってる……ます」


 なるほど。きっと店長が気を遣ってくれたのだろう。


 というよりも、少し気になることがある。遠慮なく指摘させてもらおう。


 「別に、敬語じゃなくていいよ」

 「えっ。あーうん。わ、分かった」


 様子から察するに、無意識だったようだ。

 まぁ、おそらく俺の考えが正しければ、きっとこの後の会話に関わるような要素なのだろう。


 「とりあえず、頼むか」

 「うん」


 俺たちは注文を済ませる。そして、いよいよ彼女に話を振った。


 「それで、話っていうのは?」

 「あ.。うん。あのね。まずはーー」


 彼女はそこで一度言葉を区切り、一つ深呼吸を入れた。

 声はすでに震えていた。その震えに、つい最近の出来事が重なった。


 やはり、か。


 「まずは、謝らせてください。あの時は、本当にごめんなさい」

 「……」


 彼女は頭を下げて、そう言った。声も、体も、震えていた。まるで何かに怯えているようだった。


 何が、とは聞かなかった。それが無意味な質問であることはわかっていたし、俺は目の前の少女に、追い討ちをかけたいわけでもなかったから。


 その代わり、こう聞いた。


 「どうして?」

 「……どうして?」


 なぜ今、急に?それがどうしてもわからない。


 いや、一つだけ考えられる可能性はあった。


 「もしかしてさ、板倉に何か言われたか?」

 「っ!そ、それは」


 図星か。結局、何か企んでいるのだろうか。


 だって、理由がないじゃないか。彼女が俺に謝る必要のある事態。


 それが俺にはわからなかった。


 「ま、待って!ちゃんと説明する!私が悪いのも分かってるの!だからお願い!」

 「説明するって、何を?」


 説明も何も、そもそも味方かも怪しいのに、何を信用しろと?


 「今、瑞樹に何かされてるんじゃない?」

 「それは……どういう意味だよ?」


 墓穴を掘ってしまうような、そんな無様は晒したくない。俺はあくまで彼女からの説明を求めた。


 「これを見てほしい」

 「うわ。まじかよこれ」


 宮島から差し出された携帯。その画面には、板倉からのメッセージが表示されていた。


 【☆速報☆喜多見が成増駅から十分のカフェでバイトしてた!!みんな注意!!】


 【喜多見が彼女連れて歩いてた!!その子も騙されているっぽい!】


 【学校で舞華にも迷惑かけてるっぽい!!しかも噂によると、二股までしてるらしい!!】


 数々の個人情報。誹謗中傷。その数々がそこにはあった。ドン引きである。何だよ☆速報☆って。


 「これ、私だけじゃなくて色んな人に送られてるらしいの。その、私以外の、喜多見をいじめてた人にも」

 「これはひどいな」


 ここまでやるか。というか、おそらくだが。


 「これ、多分俺の学校にもいつか広がるだろうな」


 もう広がってるかもしれない。いや、そうと考えるべきだろう。


 何せ、白河と板倉は繋がってるからな。


 「それで、なんとかしなきゃって、そう思って。もちろん、私なんかが言える立場じゃないんだけど」


 そう彼女は自嘲するように言った。


 なるほど、事情はわかった。


 だけど、それでもわからない。


 どうして彼女が俺の前に現れたかが。


 「どうして、なんとかしなきゃって、思ったんだ?」

 「……それは、えっと」


 彼女はそこで言い淀んだ。


 「ごめん、聞き方が悪かったかも。えっと、どういう考えで、思考回路で、いや、違うな」


 うまく言葉がまとまらない。


 『ーーーーだったから』


 だけどふと、ある言葉が浮かんだ。俺の胸にいまだ引っかかり続けている、ある言葉が。


 だから、あの時と似たような言葉で、俺は問う。


 「どうして、俺を助けようと思ったんだ?」

 

 別に、放っておけばよかったはずだ。


 連絡も無視して、見て見ぬ振りができたはず。それが何よりも楽だったはずだ。


 なのに彼女は、俺に関わることを選んだ。それが、理解できないのだ。


 「少し、長くなってもいい?」

 「ああ、大丈夫だ」


 少し昔の話からするね。そう言って彼女は、ゆっくりと話し始めた。依然、その声は震えていた。


 「あのね、後悔自体はずっとしてたんだ。タイミングで言うと、喜多見のことをいじめ始めた、その瞬間から」



ーーーー


 私は、恵美のことをいじめていたわけではなかった。私がいじめに加担したのは、喜多見に対してのものだけだった。


 恵美がいじめを受けていたのは知っていた。でも私は、何もしなかった。


 報復を受けるのが、次のターゲットになるのが怖かった。


 恵美とはそこそこの仲だったと思う。一緒に遊びに行ったこともあったし、友達と言える存在であったことは間違いない。


 だけど、私は見て見ぬ振りをした。怖かった。保身に走った。


 そして自分に言い聞かせた。関係ないって。


 きっかけは、ある放課後。


 恵美が、喜多見の教科書に悪口を書いてるのを目撃してしまった。


 私は正しく事態を理解していた。


 喜多見が私にできなかったことをして、私が恐れた事態に陥ってしまっていたことを。


 恵美が加害者側に回っていたことは、その時に知った。


 私は恵美を止めた。こんなの、喜多見が可哀想だって。


 「何もしてくれなかったくせに!!勝手なこと言わないで!!」


 帰ってきたのは、そんな言葉。

 

 そして続く言葉は、正しく最悪なものと言えた。


 「あんたも手伝って。じゃないとまた私か、それかあんたがいじめられる。だから、()()()()


 そしてその提案を、私は受けてしまった。


 断れなかったのではない。断らなかったのだ。


 その後喜多見は学校に来なくなってしまった。


 そして最終的に、残った結果は「お咎めなし」だった。


 そもそも、私と恵美はいじめに加担していなかったことになった。

 

 なんでかは知っている。恵美が、もともと自分たちをいじめていた人たちを()()()()()


 私たちの罪をばらせば、全部の嘘をばらす、と。


 要は喜多見一人を犠牲にして、自分に最も都合の良い形で事態を収束させた。


 彼女はたった一人の()()()となった。



ーーーー

 

 ここまで話したところで、注文の品が届く。


 しかし彼女はそれに手をつけることは無く、話を続けた。


 「脅されたとか、流されたとか。そんなものが私の罪を軽くするなんて、そんなこと全く思ってない。私は間違いなく、みんなと同罪。喜多見を傷つけた」


 「ずっと謝りたかった。だけど、喜多見は引っ越しちゃって、その機会もなかった」

 「それで今回居場所がわかったから、ってことか」


 俺はしばらく黙って話を聞いていたが、ここでようやく口を挟んだ。


 「でもそれは、俺の手助けをする理由にはならないだろ。あくまで宮島は、俺に謝れればそれで良いんじゃないのか?」


 あくまで、彼女は俺に許されにきただけで、俺の味方になる必要はないはずだ。


 彼女にとっても、予想外の質問だったのか、しばらく考え込むようにして黙った。

 俺も急かすことなく、ただ待った。


 そしてしばらくして、彼女はぽつりと言った。


 「罪滅ぼし、かな」

 「罪滅ぼし?」


 「いや、正しくは自己満足、って言った方が良いかも、です。多分、喜多見の味方になることで、自分のことを許せるようになりたいのかもしれない。ごめん。私、最低だよね」

 「自己満足、か」


 彼女は泣きそうになるのを、グッと堪えている。傍目から見ても、それがよく分かった。


 まるでその行為が、許されていないかのように、彼女は耐えていた。


 おそらく、自分の行動原理に、彼女は今気づいたのだろう。彼女自身、この言動が自己満足からくるものだとは気づいていなかったのだろう。


 そしてそれは、彼女にとって受け入れ難いものだったようだ。


 「ごめんなさい、私」

 

 それが利己的であることに気づいたのだろう。

 それが100%相手のための行動でないことに、気づいてしまったのだろう。



 「別に、自己満足でもいいよ」



 「……え?」


 俺の言葉に、宮島は呆気に取られる。


 あまりに予想外の返答だったらしい。



 「はっきり言うよ。俺はまだ、宮島のことを許せない。許せるほど、俺の中で整理がついてない」

 「……うん」


 「だけど、宮島が反省してて、どうにかしたいと思ってくれたことは、わかった」

 「っ!あ、ありがとう」


 だから、だからだ。


 「だから、その思いだけは受け取りたいと思う」


 分かってる。この言葉が「自己満足でもいい」の答えになってないことは。


 口には出さない。いや、出せない。


 だって、俺も同じだから。


 俺がしたいと思ったことも、かつて何かを救おうとしたことも、間違いなく自己満足だったから。


 彼女を許さないのもそうだ。


 反省して、行動に移した。


 なれば本当なら、俺は彼女を許すべきなのではないか。それが彼女の自己満足だったとしても。でないと、俺たちの関係は何も変わらない。それはただの停滞だ。


 分かってる。俺は認めたくないんだ。この選択が間違いじゃなかったって。


 許さないことが、間違いだって認めたくない。


 だって俺は、目の前の少女よりも大切な存在を、まだ許すことができていないから。


 ここで彼女を許してしまったら、その想いを、俺に向けられた言葉を否定してしまうことになる。


 俺は拒絶した。だけど、否定したかったわけじゃない。

 

 少なくともその言葉がかけられて、俺は嬉しかったんだ。


 母さんが俺を見てくれたことが、嬉しかったんだ。


 支えになった。俺が許すだけで、元に戻れる可能性が、俺の心を満たしたんだ。


 だから、俺は目の前の少女の自己満足を否定しない。その在り方が正しいかなんて、誰にもわからないんだから。


 俺を案じてくれている、それがこの場において最も重要で、大切なことだ。


 俺の都合で、俺の想い。彼女の都合で、彼女の想い。


 そこに1%でも、他者への想いがあれば、十分じゃないか。


 正しいか正しくないかではなく、俺自身が、彼女自身がどうしたいか。


 だから、俺は彼女の想いを否定しない。


 「宮島の思いはわかったよ。許すのは、さっき言った通り、まだ難しいけど」

 「ううん。本当にありがとう。いつか許してもらえるように、頑張るから……」


 彼女は堪えきれずに、涙を流した。


 そしてそれは、俺もだった。

 

 何に対してなのか分からなかったけど、俺にとって大切なものだって、それだけはわかった。

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