第二十一話 本当のお姉さんの性格は?
『へえ、あの子、遂に英樹と別れたんだ。ま、あの調子じゃ時間の問題だと思ったけどね』
夜中になり、葉月さんに里美が英樹と別れた事を教える。
黙っていようか悩んだが、葉月さんの弟と付き合っていたんだし、一応、片足突っ込んでいるから、報告だけはしておくことにした。
『英樹もこれで何人目かしらねー。私が知っているだけでも、七、八人は彼女を作っているよ。どの子も半年も持ちはしなかったわ。あれじゃ、将来心配よねえ』
「七、八人……凄いですね」
『自慢にもなりゃしないわよ。姉としては恥ずかしい限りだわ。注意しても、姉貴には言われたくねえと言われるだけで、言う事を聞きやしないし。あの子も子供じゃないんだから、放っておいても良いかしらね。その内、刺されそうだけど、自己責任で良いんじゃない』
英樹は確かに嫌な奴だけど、姉である葉月さんにまでここまで言われるのは少し不憫な気もする。
というか、俺だったらそんな彼女をとっかえひっかえ出来んな。
「ちょっと聞いても良いですかね? 葉月さんは、その……今まで何人と付き合ってました?」
『何、その質問? まるで私が男遊び大好きみたいな聞き方じゃない。失礼しちゃうわね。英樹の姉だからって、私もあいつと同類じゃないか疑っているの?』
「す、すみません……ちなみに、俺は里美が初めての彼女だったんですよ」
『ふーん。じゃあ、そうね、百人くらいの男と付き合っていたかなー。いちいち、数えていないから、覚えてないけど。私って遊んでる風に見えるから、男が寄ってきてしょうがないのよね。アハハ』
「真面目に答えてくださいよ。一応、男関係で過去にトラブルないか確認したかったんです』
『はん、随分と上手い言い回しするね、進一郎。あなた、政治家とかお役人仕事、向いてるんじゃない? てか、今の質問で、前に補導員に絡まれた事、思い出しちゃったじゃない』
今の質問で心象を悪くしてしまったみたいだが、葉月さんはやっぱり口が悪いかも。
というか、補導員に絡まられたって……。
「何かやらかしたんですか?」
『何もしてないわよ。ただ、高一の時、バイト帰りに友達とコンビニの前で深夜まで話していただけだって。ウチの近くだったし、次の日、学校休みだったんで日付変わるまで話し込んでいたら、補導員のおっさんに、こんな時間に何やってんだとか言われてさ。超ムカつくよね〜〜。何か女だと思って、偉そうな態度取っていたし、固い事言ってんじゃないって話よ」
「はは……そんな事、あったんですか……」
話を聞いた限り、今のは葉月さんが普通に悪い気がしたが、こういう事を日常的にやってる人だったんか。
深夜のコンビニで話し込むくらいなら、大した事はないんだろうけど、それでも警官か補導員に見つかったら、ヤバイくらいはわかるだろうに。
『進一郎もそういう経験ないの?』
「普通、ないと思いますよ」
『へえ、それが普通なんだ。そういや、英樹もないって言っていたわね。あいつ、あんな性格をしているくせに変な所で真面目ぶるのよね。そういう男、めっちゃムカつくのよ』
あいつの肩を持ちたくはないけど、それは葉月さんの方がおかしいと思うんだが……ま、英樹も女をとっかえひっかえしても表向きは問題を起こしていないっぽいので、そこだけは救いと言えば救いなのか。
「何だか今の話を聞くと、心配になってきたんですが、大丈夫なんですか?」
『進一郎も真面目な子よね。別に犯罪とかしてないわよ。今のも補導されかかったってだけで、実際に補導されたわけじゃないし。ま、深夜にコンビニでたむろしたり、友達と出歩いたりは何度かあるけどね。あの時は運が悪かったかなあ』
やっぱり、何度もやってるんかい。よく親御さんも許しているなと感心してしまうが、葉月さんってもしかしてヤンキー娘なのでは?
『まあ、実際に結婚するなら真面目な人が良いけどね。私と同じような性格だと逆に疲れそうだし、弟はクソみたいな性格しているしさ。進一郎って、一緒に居ると安心するのよねー。私が遊び人っぽいからって、進一郎は私と同じような事をしちゃだめよ。やるなら、私と二人きりの時にね』
「それはどうも」
『ふふふ。何で次はいつ会える? もう試験も終わったんだから、私と思う存分デート出来るわよね? ね? 日曜空いているから、会おうねー』
「わかりました。今度の日曜ですね」
今度の日曜日に葉月さんとデートをする約束はしたものの、今の彼女の話を聞いて、色々と不安になってしまったな。
この人と付き合っていて大丈夫なんだろうか……素行が悪いとか、遊んでいそうだとか以前に、考えていることが自分勝手すぎて、付いて行けそうか心配になってきた。
里美の時はこんな気持ちになったことはないんだけど、あいつは俺の前で良い子ぶっていたくせに、陰で男と浮気していたから、余計に性質が悪いか。
日曜日――
「はーい、進一郎。こっち、こっち」
約束通り、葉月さんとデートする事になり、彼女との待ち合わせ場所の駅前のコンビニへと行くと、既に葉月さんは待っており、俺を手を振って出迎えた。
「すみません、待たせちゃいましたか?」
「五分待ったよ。時間通りだから良いけどね。その五分の間に、私がナンパされたら、どうするつもりだったのよ?」
「ええ? いや、断ってくださいよ」
「もちろん断るけど、強引に連れ出されて抵抗できないかもしれないじゃない。やっぱり、か弱い女子が一人だと心細いしさー。特に私みたいな可愛いイケてるギャルだと変な男も寄ってくるのよ」
「そ、そうですね。気を付けます」
確かに葉月さんは美人なので、ナンパはされやすそうだけど、だったらもっと時間ギリギリに来てくれればいいのに。
「ぷ……嫌な女だと思った?」
「え? いえ、そんなことはないですけど」
「ゴメン、ゴメン。ちょっと意地悪な事を言っちゃったわね。でも、ああいう無理な我侭を言って、進一郎がどんな反応をするか試してみたくてー。今に反応なら、私の我侭もある程度聞いてくれそうね。良い事じゃん」
「…………」
今の俺を試していたの? この人は俺というか、彼氏に対して、どんなことを求めているんだろうか……。
自分の言う事をひたすら聞いてくれる従順な男が理想なの?
「別に私の言う事を全部聞けって言っているんじゃないの。私って、こういう面倒くさい性格しているから、ちゃーんとそれを受け入れてくれるかなって思って」
「面倒くさい……そんなことは……あるかも」
「でしょう。んじゃ、そろそろ行こうか♪ 今日は何処に行こうかしら?」
もうこの人が一筋縄ではいかない性格の女性だというのはわかったのだが、こういう性格の女性が俺みたいな男と付き合っていて楽しいんだろうか?
彼女と付き合っていく内に、むしろ葉月さんと言う女性がますますわからなくなってきてしまった。
「ね、行きたい場所ある?」
「そうですね……どっか二人きりになれる場所が……」
「じゃあ、ホテルに行こうか。そこが一番じゃん」
「どうしてそうなるんですか!?」
「二人きりになれる場所って、そこくらいしかないじゃん。てか、進一郎ももっとがっつきなよ。事故起こしたお詫びに一発やらせろくらい言っても怒らないからさ」
「言えませんよ、そんな事!」
葉月さんが腕を強く組みながら、近くのラブホに連れ込もうとするが、無茶な事を言わないでほしい。
事故の時はあんなにしおらしい女性だったのに、これが葉月さんの本当の性格なのか?
こういう人も悪くはないと思うけど、果たして付き合っていて大丈夫なんだろうか……。




