表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

第一話「アキラとキミコ」その2

 改札を出る。

 左右、どちらに行けばいいのかわからずキョロキョロと左右を見る。

 壁に張られた「ロータリー」の文字を見つけて左へと向かう。

 そこでまた辺りを見渡しその人を見つけた。

 いつもと着ている服が違うと誰かすぐにはわからなかったが、女性にしては高い身長とスッと伸びた背筋は、その雰囲気を独特のモノにしている。

 

「ごめんなさい、遅くなりました」


 息を切らしながら駆け寄る。

 普段運動していないと少し走っただけでしんどくなる。


「いえ、そんなに待っていませんよ。アキラさま」


 表情一つ変えずに返事をする彼女はどこか冷た目ではある。


「アキラさまはやめて、キミチさん。お店じゃないんだから」

「ではわたくしのこともキミチと呼ぶのはお控えいただけますか? キミチはお店での名前なので」

「じゃあなんて呼ぼうかな、、、」

「本名は、上野公子(きみこ)といいます」

「キミコでキミチか、、、じゃあキミチでいいじゃん」

「ですから、、、」

「わかったって、キミちゃんでいい?」

「わかりました」

「あんまし変わんない気もするけど、、、ところでキミちゃん。今日はどうしたの?」


 この一連の会話の中でも一切表情を変えないキミコに「やっぱりいつものキミチだなぁ」と感じつつアキラは聞く。


「アキラさんをお連れしたい場所がありまして。話はその道中で行いましょう」


 そう言って歩き出すキミコの少し後ろをアキラは付いて歩く

 バスやタクシーに乗らず歩いていくということは、その目的地とやらはそう遠くないのかもしれない。

 まさか騙されてる? キミちゃんに限ってそんなことないよね?

 相手とは数年来の付き合いとはいえ、あくまでも店員と客の立場ではあった。

 お互いがどんな人物でどんな生活をしているのかは、本当のところはわからない。

 でも、私が仕事を辞めたってことも知っているはずだし、お金がないことも知っているはずだから、  何かお金をだまし取ろうってわけじゃないと思うんだけど。


「どうかなさいましたか? アキラさん」

「ううん、何でもない。こうしてお店の外でキミちゃんに会うのも新鮮だなぁって。ところでキミちゃんの方こそ何かあった?」

「アキラさんは先日、会社を退職されたとか?」

「うん、そうだね」

「実はわたくしも、あのお店を辞めました」

「へー、、、えっ? えぇぇぇぇ!」


 一瞬理解が出来なかったが、あまりの衝撃に大声をあげてしまう。

 その声にまわりの通行人たちが二人の方を見る。

 駅前から離れてきているとはいえ、まだそれなりに通行人はいる。

 アキラはそんな通行人に愛想笑いを向けながら、少し速足でキミコのそばへと寄る。


「いったいどうして、、、」

「わたくしも迷っていたのですが、アキラさんが会社を辞めたということで決心がつきました」

「お店で何か嫌なことでもあった? まさかイジメとか? キミちゃんは美人だしスタイルいいし、気がきくしね。嫉妬かなぁ?」

「いえ、そのようなことはありませんでした。皆、良くしてくれましたよ。私がお店を辞めた理由がこちらです」


 突然立ち止まったキミコは、そう言いながら顔を向ける。

 アキラもそれにつられて顔を向けると、そこには一軒の古びた建物があった。

 

「これは、、、? お店? 喫茶店?」

「アキラさん。私と一緒にメイド喫茶、やりませんか?」

「、、、は、え?」


 アキラは思考が追いつかず、その場で立ち尽くしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ