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第三話「帰ってきた」その6

「あなたたち、、、」


 アキラが声のする方を見ると、そこにはタマラが立っていた。

 

「タマラさん。来てくれたんですか?」

「マルティナ、、、どうして、、、」


 タマラはアキラの言葉には答えずマルティナの方を見ていた。


「知り合い?」

「タマラさん、、、お久しぶりです」

「あなた無事だったの? いえ、それよりこれはどういう? もう訳がわからないわ」


 タマラは片手で頭を抑える。

 まぁ確かに、状況としては訳がわからないかもしれない。

 というかアキラ自身もよくわかっていない。

 見ると兵士たちがトラックのあった場所や崩れた塀などの確認をしている。

 そのうち一部の兵士たちがこちらへとやってきた。


「キミたちはいったいなんなのだ? そしてあのモンスターはいったい、、、何か知っていることがあれば教えてほしいのだが」


 それはアキラたちもわからない。

 どう説明したものかと頭を悩ます。

 

「あれは謎のモンスターで、、、私たちもよくわかっていなくて、、、」


 アキラは何とか取り繕うように言葉を紡ぐ。

 そこにさらに別の人物が近づいてくる。

 幼い子供を抱えた女性、さきほどアキラが助けた女性だった。

 

「あの、、、」

「ご無事だったんですね。ケガとかはないですか?」

「ええ。あなたのおかげで助かりました」


 女性は深々と頭を下げる。

 なんかごちゃごちゃになったが特に大きなケガを負った人が出なかっただけでも良かった。

 もしかしたらあのトラックが街の外で暴れたときに被害者がいたとかはあるかもしれないがそれはこの世界の人々がなんとかしてくれるだろう。

 アキラ自身はあまり何もできなくて、目の前で疲れて横になっているクロのおかげなのだが、結果的にはそれほど街にも大きな被害がでなくて良かった。

 ただこの世界に暴走トラックが現れているのが意味がわからないし、アキラたちの責任でもないのだが。

 いやアキラたちがこの世界にやってくるのに何か関係しているのか。

 ただ、どうもクロの話ではアキラたちがこちらに来る前からトラックはこの世界に現れていたそうだからやはり関係ないのかもしれない。

 

「どけ!」


 そんなことをアキラが考えていたら、さらにまた別の人物が現れた。

 それはこの世界の住人にしては明らかに高そうな服を来た恰幅のよい中年男性だった。

 男は兵士とアキラが助けた女性をどかすように手で押しのけながらアキラたちの方へとやってきた。


「これはお前たちの仕業か!」

「あなたはいったい、、、」

「旦那様!」


 アキラが聞くと、そばにいたタマラが答えた。

 旦那様? この人がタマラが使えている家の主人なのだろうか。


「ワシらにあんな化け物をけしかけて。お前たちは魔女か! どうゆうつもりなのだ!」

「魔女、、、て」

「アナタ、違います。彼女たちはあのモンスターから私たちを救ってくれたのですよ?」


 女性がアナタと呼んだ。

 どうやらこの二人、夫婦のようだ。

 タマラが、旦那様がご家族で出かけていると言っていたが、どうやらこの人たちのことだったようだ。

 そういえばトラックが押しつぶした馬車があったが、あれはこの人たちのものだったのかとアキラは気づく。


「救ってくれた? 確かに結果的にはそうだが。見ただろ、大きな氷の塊が空から降ってきたのを。あれが魔女の魔法でなくてなんだというのだ」


 それはそう。

 もしかしたらヤバい状況なのか?

 街を救った英雄かと思ったが、もしクロが魔族だとバレれば捕まってしまうかもしれない。

 クロに助けを求めようにも、クロは疲れ切ってキミコの腕の中で眠っている。


「ん? お前はどこかで見た顔だな」


 男はマルティナに気づく。そしてじろじろと顔を覗き込んだ。

 マルティナは都合が悪いのか顔を背ける。

 

「旦那様。この方々は旅の方です。私も先ほど知り合って。彼女たちがあのモンスターから街を救ってくれたのは事実です」

「タマラ、お前もそんなことを言うのか。使用人の分際でワシに意見するとは」


 タマラもフォローしてくれようとしていたが、この男性の怒りが収まる気配はない。

 彼も自分や家族を襲われて気が動転しているのかもしれない。

 というかあんなとんでもない出来事を目の当たりにすれば混乱するのは当たり前だ。


「もういい。おいそこのモノたち。こいつらを捕まえろ。魔女か、ひょっとしたら魔族の疑いがある」


 男性の声に答えるように兵士たちがこちらへと集まってくる。

 

「待ってください!」


 私たちと兵士たちの間にタマラが割って入る。


「旦那様、申し訳ありませんがこのタマラ、お暇を頂戴します」

「タマラ、何を言って、、、」

「マルティナ、こっちよ」


 タマラは深々と男性に頭を下げると、マルティナの手を取って走り出す。

 アキラとキミコもそれにつられて走り出した。

 男性の「追えー」という叫び声と共に兵士たちが追いかけてくる。

 こちらは女性の足、しかもキミコはクロを抱きかかえている状態であまり早くはないが、兵士たちも着こんだ鎧のせいかあまり早くは走れていないようだ。

 タマラはあえて人通りの多い所を走りながら途中で路地裏へと入る。

 息を切らしながら何とか兵士たちを撒き物陰に隠れるが、外ではアキラたちを探す声が聞こえてくる。

 見つかるのも時間の問題かもしれない。

 

「マルティナ、会いたかった。心配したのよ」


 タマラはマルティナに抱きつく。

 マルティナは一瞬申し訳なさそうに顔を背けるが、タマラのことをそっと抱きしめる。


「ごめんなさい、タマラさん」

「いったい今までどこに、、、それにこれはいったい、、、」


 タマラがそう言った瞬間、クロが急に苦しみ始める。


「クロ?」

「どうしたの? 大丈夫?」


 アキラとキミコが心配そうにクロを見つめる。

 するとクロは急に光だし、その光はここにいる5人を包み込んだ。

 そして気づくとアキラたちは見慣れたキミコの喫茶店へと帰ってきていた。

 そこにはタマラの姿もあった。

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