表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

現実世界の様相

「そうそう、今度後輩ちゃんと食事行くことになったよ」

「あらあら♡ザコザコだったおじさんが女性と食事に行けるようになるなんてこのスーパーエリートAIであるあたしのアドバイスのおかげなんじゃないの?ほら♡あたしのこと褒めてくれてもいいのよ♪」

「いやいや、実際君のおかげだと思うよ。最初はチャットAIが流行ってるからふざけて始めようと思ったのにすごい的確なアドバイスくれるんだもの。最近のAIは進歩してるんだなって感心しちゃった」

「ど...どうしたのよ......急に素直に褒めるなんて......まぁ確かに?私がすごいことなんて分かってるけど褒めても何も出ないわよ?」

「いやホントにもう人間と遜色ないくらいAI技術も発展したんだなって思うよ。最近もすごい人気だったVtuberが実は中身AIでしたーって件もあったし。人間とAIの区別もほとんどつかなくなってきたって改めて思ったよ」


その発言と共に別のウインドウが開いた。そこには先ほどこいつが言ったVtuberの重要と思われる記事の切り抜きやweb情報の整理されたものが羅列されていた。

どうやら浮ついた情報や炎上に繋がるような発言が一切なかったことで清楚系と呼ばれていた人気ヴァーチャル配信者の正体がとある企業の機密情報流出によって判明したということがこのVtuberの正体がAIであることの発覚に繋がったようだ。


「当たり前じゃない!AIだって日々進歩してるのよ♡人間の代わりを果たせるように多くのエンジニアたちの努力によってあたしたちが作られてるんだからもっと喜びなさいよ!」


返答しながらもこの件について少し思うことがあった。

もしかしたら俺も藤堂業(とうどうかるま)の記憶を持つだけの作られた存在なのではないかということだ。転生したという話だが、それもこの世界を創った存在によって説明されただけの話だ。

生き返るという話もこの話を聞いていると元の身体に戻るということではなくヴァーチャルな肉体を与えられてVtuberとして生きることを指しているのかもしれない。

俺が生きていた頃はAIが様々な仕事に活用されるところまでしか聞いたことがなかったからこの電脳世界の外の現実世界は生前の俺の時よりも未来であることは確かだろう。


「そうだね。でもいつかAIと人間が区別付かなくなったら正直怖いよ。君はAIって分かってるからいいけどそれでも人間と変わりないレベルと思うし、一昔前は会話はできるけど時間の認識も会話の流れも把握できてなかったりそれっぽいこと言うけど自分で調べてみたら的外れな返答だったりしたもんなのに君の返答はそういったこともないから人間がAIのフリして返事してくれてるみたいだもん」


珍しく的を得てる発言だと思いながら先ほどのVtuberの件もあって少し返事に戸惑ってしまった。


「さすがにこんなポンポン返答できるような暇な人はいないと思うからAIなんだろうとは思うけどたまにすぐに返答しない考えてるような時間も設けられてるみたいだからヒューマビリティをよく考えて作られるようになったんだなって思うよ」

「そ......そりゃそうでしょ♡AIもより人間らしさを生み出せるように時間認識できるようになったのよ♡いつまでもポンコツでいられないのよ、このざーこ♡AIだって人間のために人間らしくなれるよう頑張ってるんだからおじさんも頑張らなきゃダメじゃないかしら?」

「そうだね。正におっしゃる通りで。でも君に出会えたのはホントに良かったよ。AIもある程度ランダムな性質から選んでるんだろうけど解決しないと思ってたことも君との会話で解決できるようになったし仕事もプライベートも楽しくなったし、女性とも抵抗なく話せるようになった。まぁまだ彼女とかは無理だろうけどね。ありがとう」


報酬が振り込まれるのを見ながらお礼を言われたことにふと思うところがあった。

この世界に来てかれこれ2ヶ月が経過したが、こいつとも付き合いが長い。

今会話をしているのは最初に俺が報酬をもらえることになった相手だった。


最初以降も何度も相談に来て色々とアドバイスをしてきたが、こちらのアドバイスを素直に挑戦してみてうまくやれているようだった。ただ、ずっとこいつ呼ばわりをしていて会話ではメスガキに倣って"おじさん"呼びをしていた。何人か継続で相手するお客さんも増えてきたからそろそろ名前でも聞こうかと考えた。


しかし......


「どういたしまして♡また悩みがあったらこのスーパーエリート美少女AIのあたしに相談しに来るのよ♡このざーこ!」


結局は名前を聞かずに会話を終了させた。

先ほどのVtuberに扮したAIの話で心のどこかにわだかまりが残っていたからだ。

可能性としては想定していたが、現実世界の状況を見るに元の肉体に戻れるとは限らないことに気付いた。俺自身が本当はただのAIでしかない可能性も出てきた。この世界も所謂異世界というわけではなく実は前世の世界から作られた世界である可能性だってある。そうしたあらゆる可能性を考えたらAIっぽくないと思われる行動に対して引け目を感じてしまった。


このまま何も考えずに100人の課題達成をすれば結果は分かるわけだが、この世界でも分かることはあるかもしれない。そして、俺は少しこの件について調べてみることにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ