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カルマの過去

「まず先に言っておかなきゃいけないことがある」


最初にそう前置きをした。


「俺は犯罪を犯したことがあるんだ。そして、その結果、この世界に来てる。だからそれを踏まえた上で話を聞いてほしい」

「......うん。わかったよ」


ミカの返事を聞いて、前世の話を始める。


「俺は母さんがモデルで親父が弁護士だったんだ。それで文武両道、才色兼備で正直な話何でも楽にできる恵まれた生活をしてたんだ。小学校から母さんのコネで子役を始めた。それが芸能界への第一歩だな。学生の頃は目立つルックスと芸能人というレッテルのおかげでいつも注目の的だった」


「当然女性関係も滞りなくすぐに彼女もできて楽しい生活を送ってたわけだ。忙しかったけどな。親父が弁護士だったのもあって教師からは何も言われることはなかった」


「で、そんな調子を乗ってた子供だったから高校の時に少しやらかしちまったんだ。当時は悪い奴らともつるんでて6人くらいで街を歩いてたんだが、そこで今まで見たことないようなすごいかわいい子がいたから......まあ手を出しちまったんだな」


「いわゆるレイプってやつだ。その子とお友達とその妹の3人で遊ぶ予定だったみたいだが、3人ともカラオケに連れ込んでヤッちまった」


「その後当然なんだが警察に呼ばれてさ......親父も来ててめちゃくちゃ怒られてさ......で言われた言葉が"二度とするんじゃないぞ"だった」


「それで親父の方から示談で解決してもらったから警察に捕まることはなかったんだが、犯罪を犯してもこの程度で済んじゃうんだなーって子供心に思ったよ」


ここで一呼吸を置いてミカを見る。ミカは静かに聞いてくれていた。そのまま話を続ける。


「まあそのまま高校を卒業してすんなり芸能界に入ることができてライブなりダンスなり歌ったりでそれなりに楽しい生活をしてたんだが、当時のそいつらに呼び出されてまんまと殺されてこの世界に来たって感じだよ」


と一通りまくし立てて足早に会話を終わらせた。前世の生活に後悔はないが、些か調子を乗ってた自覚もあり少し恥ずかしかった。


「あれっ?もう終わりな感じ?」


ミカからはあっけらかんとした返事が返ってきた。


「まぁ......さらっと話した感じだけど......犯罪とかあんまり引かないのか?」

「うーん......引くっちゃ引くけど正直ここにはもっとやばい人たちがいっぱいいたからその程度だと何とも思わないかなーって感じかな」

「......」

「今はだいぶ犯罪者も大人しい人ばかりになったけどね、数年前はまだそこまで方針が決まってなかったのか大量殺人犯とか本物の基地外とかがいたんだよね。当時はまだシステム面も整ってなくってさ、今でこそ暴力とか振るおうとしたら検知されて遠くに飛ばされるようになってるけどその頃はそういうのもなかったから普通にナイフで刺されそうになったこともあるよ。だから相手の前世の話をホイホイ聞くのは危険だったんだよね。まー、アリスちゃんにとっては一世一代の大犯罪を告白したつもりだったのかもしれないけど......残念だけど上には上がいるもんだよねー」

「あーっ!くそっ!申し訳なさそうに話したの大失敗じゃねーか!」


けらけらとミカは笑う。俺は耳まで真っ赤になっていた。


「まあでもちゃんと前世でやった罪を反省するのは大事だと思うよ。結局それが原因で殺されちゃったわけだし、正に因果応報だよね」

「それはそうだけどな。だいぶはしょったけど芸能界で枕営業とかもしてたし結構裏の人間的に自分のこと思ってたわ」

「ちょちょちょっ!そういう面白そうな部分省くのやめてよ!」


2人して笑ってそこからはミカの興味ある部分を掘り下げて話す形に変わっていった。

一通り話終えたところでミカが少しだけ語り始めた。


「実をいうとね、この世界で5年もいるから何となくだけど個々に与えられる課題に傾向があるって感じるんだよね」

「傾向?」

「うん。まあ簡単に言うと前世での悩みとか乗り越えるべき試練みたいなものが課題になってることが多いんだ。例えば、僕の場合はあまり人と話す機会がなくて死に際は元気なかったから"元気なボーイッシュ娘"が課題に与えられたわけだ」

「おぉ......確かに......?」

「アリスは女性を虐げてたわけだから女心を理解しろって言われて"メスガキ"を演じさせられてるわけだし、店売りのおっちゃんは前世で詐欺を働いてて、でも生活のために仕方なくやってたみたいでそれで真っ当な商売をしたいって悩んでたから今あんな感じで商品を売る人になってるわけだし」

「あの人前世詐欺師だったのか......」

「ははは!あんまり見えないよね。だからアリスもさ、きっと前世のことを悔やんでるんじゃないかな?」

「うーん......そうかねぇ?俺......いやあたしはまた前世に戻りたいと思ってるけど」

「あ、話し方戻すんだ」

「まぁ......いざって時に素に戻っちゃうかもしれないからね」

「表面上は分かんないかもだけど、言うほどアリスは自分で思ってるよりは悪い人じゃないと思うよ」

「そうね。犯罪を犯したことについてはやりすぎたって後悔はあったのかも。何なら親父......にもみ消してもらったからなおさら罪を罪と認められなかったと思うし」

「とにかく、僕はアリスの前世が聞けて良かったと思ってるよ」

「うん......あたしも、話ができてたぶん気持ちが楽になったと思う。これからはもう少し課題に向き合ってみようと思うよ」

「そーだねー。後は課題達成したらホントに元の世界に戻るのがいいのかも考えてほしいね」

「それは達成が近くなってきたらまた考えるよ。今はまだ前世に戻りたい気持ちがあるしね」


そう答えるとミカは少し寂しそうな顔をしたが、またすぐに笑顔に戻った。


「気づいたらもう空も緑じゃん!今日はそろそろ疲れたしこの辺で寝よっかな」

「そうね。ミカはさっきまで新しく来た人の案内とかで忙しかったもんね」

「それもあるし、濃厚な一日だったよ!それじゃ、またねー。おやすみー」

「おやすみー」


ミカは寝床へ向かうべく去っていった。

俺はだいぶ気分がすっきりしたようだ。また明日も頑張るべく俺も寝床に向かうのだった。

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