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初めてのお客さん

転生が始まり、身体が組み変わっていくのが分かった。


白に近い金色でショートボブだった髪はより金の輝きを帯びて腰くらいまで伸びていく。

色も少し鮮やかになったようだった。

日焼けして茶色がかった肌は全身が真っ白な雪のような色に変わっていき、やや逆三角形だった肩幅も腰と同じ程度まで縮んでいった。

同時に、筋肉質で割れていた腹筋も柔らかく滑らかなお腹へと変貌し、178cmあった身長も30cm近く縮んでいく感覚を感じた。


どうやら、ここの空間自体が転生先である電脳空間であったらしい。ホスト然としたがっちりした肉体は今では華奢なヨーロッパ風のお嬢様のような肉つきに変化していた。かつては存在感を放っていた男の象徴も消滅してしまっている。(そこだけめちゃくちゃ強い光が輝いており、見た目がどうなっているかを見ることはできなかった。)


女の身体に作り替わる感覚を感じてから胸の大きさがどうなるか少しだけ気になっていたが、メス"ガキ"ということもあってほとんど大きくなることはなかった。


変化が一通り終わるとその身を仰々しく隠すようにメイドのような服が一瞬にして現れた。どうやら長々と裸でいさせるわけではなかったらしい。


身体の変化も終わり、これからどうすれば良いかと軽く逡巡すると間もなくこの電脳空間に小窓が現れた。その小窓に近づこうと意識を向けると身体がそのまま小窓の方へ引き寄せられていった。


なるほど、この空間ではこのように移動していけばいいらしい。


光の漏れていたその小窓に近づくと、どこかの一室が映し出されているのを見ることができた。


「どこだ?......って声高っ!」


いつの間にかこの空間で声を出すことができるようになっていたらしい。

ややダミ声がかった媚びた感じの甲高さで所謂アニメ声といった感じだった。

自分の口からこんな声が出るなんて少し気味が悪いと思いつつ、頑張って元の声に近い低めの声にしようとするが、よりアニメ声に近くなっていってしまっていた。

そして、喋ったことが反転した文字として先ほどの小窓に書かれていっていることに気づいた。


どうやら、この小窓がモニターでこのモニターを通して"非モテおっさん"どもの相手をするようだ。


「つまりはこういった感じでこちらは会話感覚で話してやれば、向こうにはそのまま文字として出せるからこれでやり取りができるってことね。」


そのまま話した内容が反転文字で表記される様はやはり気持ちが悪いものだったが、とりあえず何をすればよいかは把握できていた。


このモニターはテスト用だったようで、数分試していたらそのまま消えていってしまった。


そして、飛び交っていた光の線も一旦すべて消えて、この空間全体が数秒真っ暗になったかと思うと、次の瞬間、多くの光とモニターが出ている電脳世界が突然姿を現した。


先ほどまでと違い、暗闇の中を光の線が飛んでいるだけでなく、青空や下の方には小さな島の中に様々な建物が建っているのが見えていた。


本格的に、異世界へと移動してきたようだ。空に浮かぶモニターの一部に矢印が見えていた。

近づいてみると、先ほどとは違い、チェックの服を着たやや小太りの30代くらいの男が見えていた。

頭が完全に剥げているわけではないが、少し薄くなり始めているように見える。

眼鏡をかけており、如何にももてない男といった風貌だ。


すぐに、モニターに文字が浮かぶ。


「メスガキ風にお願い」


なるほど、これが最初のお客さん......ってわけか。


アイドル活動を通して女を喜ばせることは精通しているつもりだ。

そして、女を喜ばせるためには当然女の立場に立って考えなければいけない。

相手の要求は"メスガキ"というものだ。神のやつも言っていたが、おそらくこの男はM気質があり、罵ってやることで喜ぶはずだ。


そういう女の"クソガキ"はたくさん見てきた。神のやつには悪いが、こんな課題とっとと終わらして元の身体に戻ってやる!


「ギャハハハハハ!オメーみてーな禿げたおっさんがあたしに声かけるなんてちょーきめえんですけどー!いったい何の用ですかー!?」


......カタカタカタ


"お前はメスガキではない"


ピチュン!!という音を立ててモニターが消えた。


......は?どうなってる?失敗したのか?

明らかに手ごたえがない感覚だ。"メスガキ"って高校生くらいのギャルみたいな生意気な女の事じゃなかったのか?

くそっ!わからねぇ......


こうして、すぐに終わらせてやると思った課題は、最初の一人目にして、とてつもない途方感とむなしさを抱え、初めての"メスガキ"体験を終えるのであった......

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