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モニュモニュモニュモニュ。
ゴツゴツとした筋肉に憧れてるんだけど、強い騎士たちにはそういうこれ見よがしに大きな身体をしている者は誰もいないんだよね。
サーフェス団長もそうだし、ブレトもそうだ。
モニュモニュモニュモニュ、モニュモニュモニュモニュ。
良いな、ブレトは。
これくらい大きな手をしていたら、どんな太い把手だろうと軽々と握れるし、扱えるだろう。
そうだ。できることならもっと大きな得物も扱えるように、手も大きくなりたい。
槍斧を使うなら、そもそも背ももっと高くないと駄目だな。
ブレトほどは大きくなくてもいいけど……でも本音でいえば、ブレトを見下ろせる位大きくなれたら嬉しい。いつか、僕がブレトを腕に乗せて走れるように生れたら、凄くない?
ブレトの腕や手と自分のそれを重ねて比べてみては、凹みそうになる気持ちを妄想を膨らませて持ち上げる。
指や手首の太さが全然違う。そもそも関節のつくりも違うんじゃないかと思うほど、僕とブレトのそれは違って見える。
触った感触も全然違うんだよなぁ。凹むなぁ。
なんでこんなに違うんだろう。
騎士の食事を参考にして、僕の食事もそれに合わせたものを出して貰う様にしたら同じになってくるだろうか。駄目かな。
あぁ、でもいいなー。僕もこういう強そうな手になりたい。
それに、なんでこんなに触り心地までいいんだろ。
ずっと触っていられるな、これ。
モニュモニュモニュモニュ。サスサスサスサスサス。
夢の肉体像を想像しながら、目の前にある太い腕の筋肉に自身のそれを重ねて比べてみたり、手で感触を確かめるために揉み擦る。
「……あの、あのっ」
「ちょっと黙ってて」
「あっ、はい」
「……」
「……」
「あのっ! も、もう無理です!!」
なんなの、一体? 真剣に僕が理想の自分を思い描いているんだから邪魔しないで欲しいんだよね。
せっかく楽しかったのに邪魔をされて、目を据わらせて顔を上げれば、そこにあるのは真っ赤に顔を染めたブレトだった。
「?」
「あの、せめて、執務室へ戻ってから……あぁ、別にいいいいいいかがわしい意味ではないです! そんなつもりは一切ありません!!」
片手を顔の前で大きく振り、顔を背けて懸命に主張している言葉の意味が、理解できなくて少し悩む。
そもそも、なんで片手?
「あ」
僕が、ブレトの手に自分の手を重ねて握り込んでたからだった。
その上で、ブレトの手の甲から腕へと続く筋と筋肉を、反対の手で撫でさすってたんだった。
「ごめん。つい」
ついってなんだ、ついって。
自分でも何も説明になっていないことを言ってしまったと顔が熱くなる。
「そうですよね、つい、やっちゃう……いえ、やりたくなる……そのそういう時ってありますよね。ははっ」
ブレトの顔も真っ赤だけど、多分きっと僕の顔の方が赤い。
「あはは。そうなんだよ。うんうん」
思わず、繋いだ手に手を重ねてブンブンと振った。
その重ねた手が視界に入る。指と指の間に自分の指を絡めるように繋いだ手は、あまりにも親密そうで、慌てて手を離した。
なにしてんだ、僕のばか。
ううう。周囲の視線が痛い。
僕は慌ててブレトから離れて、執務室へと足早に向かった。
「ディード様! お供いたします、お待ちください」
ブレトが声を掛けてくるけど気にしないで進む。
追いかけてくるブレトに、今の僕の顔を見られたくなくて、足を速める。
だって。
顔が、熱い。熱いのに、離してしまった手だけが、寒いというか冷たいというか、寂しくて。
ぎゅっと手を握りこむ。
その手の中に残る、ブレトの手の感触を、閉じ込めるように。




