表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きを取り上げられた王子様は  作者: 喜楽直人
第二章 ディードリク・エルマー・グランディエ 第一部 摘み取られた薔薇
32/128

2-1-26.



 なんてことだ。

 地図が頭に入っていても、それを使うには、自分の現在位置が分からなければ意味がない。


 煌々と街を照らす松明のせいで夜空を見上げてみても星はまったく見えないし、雲が増えてきたのか月がどこにいるのかすら、まったく見つけることができない。

 当然、王都から見上げた景色など見たことのない僕には、微かに見える遠い明かりが、王城のものなのか城壁のものなのか、もしくはまったく別の建物のものなのかすらさっぱりだ。


 困った。男たちから逃げる為に、まずはまっすぐ行って、右に曲がって左に曲がって……斜めに進んだけれど。ううん。


 元来た道を戻ることはできるかもしれないけれど、あの男たちの前に行くのはちょっと遠慮したい。

 認識阻害(ハイド)が効いているのだから見つかることは無いと思うけれど、あいつ等の顔を見るのは精神衛生上あまりよろしくない気がする。うん。


 ──どうしようか。どっちにいけばいい?


 怒声と嬌声が交差する街ギョルマク。


 危険と隣り合わせの街を笑い合い楽しそうに行き交う人達が、往来の真ん中にいる僕と視線を合わせることなく避けていく。


 それが魔法の効果だって分かっていても、視線ひとつ合わないことが不安の種を心に撒いた。


 ううん、それでいい。先ほどのような目に遭いたくないし、それでいいんだけれど。


 同じ世界から切り離されてしまったような、不安で足元が揺らいだ気がした。


 何処へ行けばいいのか、どうすればいいのか。


 この中で、僕だけが、自分がどこにいるのかどちらへ行けばいいのか分からない。


 視界が揺れた。涙が、目に幕を張っていた。

 それが零れ落ちる前に、腕でぐいっと拭う。


 何を弱気になっているのだろう。


 違うちがう。全然駄目だ。こんな気持ちになっている場合じゃない。


 僕は、ロザチャン様とお会いする為に、摘み取られた薔薇(ピケットローズ)を探しにきているんだ。

 僕は、そこで好きを取り戻し、自分自身を取り戻すのだ。その為に努力してきた。


 下を向いてる時間は、もう無いんだってば。


 この夜何度目になるのか。自分で自分を叱咤激励する。

 周囲を見回すと、今いるこの細い道をもう少し先まで行けば、人通りが多そうな道と交差しているようだった。


 あの大きそうな通りに出て、そこからランドマークになりそうな建物の看板を探し出す。うん、完璧だ。


 両手で頬を叩いて気合を入れ直す。


 朝までには王宮の自分の部屋へ戻らないといけない。


 それまでに、僕はこの世の真理と好きという言葉を取り戻す術を、賢者ロザチャン様から教えて貰わなくちゃいけないんだから。


 悩んでいる時間なんて、本当にない。


認識阻害(ハイド)


 念の為にもう一度。


 そうだ。認識阻害だって掛け続けているのだから、このまま声を出さずにさえいれば、誰にも見つかりっこないのだ。


 ドラン師だって見破れなかったこの魔法を、市井で破れる者などいないだろう。


 誰も僕を見ることができないのなら、こんなフードを深く被っている必要はない。

 道を探す邪魔になるだけだ。


 僕は魔法の力を信じて、グッとフードを引き下げた。



「え?」


 ──え?


 よく知ってる声が聞こえた気がして、動きが止まった。


 振り返るとそこには、目を見開いて立つ、今日何度も頭の中で思い描いたその人が、いた。


「こんなところで何をしているんですか、()()()殿()()

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ