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好きを取り上げられた王子様は  作者: 喜楽直人
第二章 ディードリク・エルマー・グランディエ 第一部 摘み取られた薔薇
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2-1-17.



 バーン隊長が見張っていない時を狙って王城内を好きに出歩けるようにはなったし、各部署に勝手に入って書類を読んだりすることもできるようになった僕は、きっとすぐに摘み取られた薔薇(ピケットローズ)について、調べがつくものだと思っていた。


「考えが、甘かったな」


 図書館で、摘み取られた薔薇(ピケットローズ)やそこにいる賢者ロザチャン様について調べてみたけれど、まるで駄目。情報らしきものはまるきり見つけられなかった。


 意を決して、使用人たちが使う食堂や休憩室へも足を運んでみたけれど、そもそも総都合よくロザチャン様に関する噂をしている場面に行きあたることなどある訳もなかった。


 なにしろ声を出したら見つかってしまうのだから。

 話し込んでいる最中に、こっそり混ざって会話を誘導することすら叶わない。


 何の情報も得られないまま、ただ月日が過ぎていく。

 お陰でいつも寝不足だし、王太子としての仕事も溜まり気味だ。


「これは……駄目かもしれない」


 そう口に出して、悔しくて。やっぱり諦めたくなかった。


「まずは情報を整理してみよう。少ないけれど、それでもやってみる価値はある」

 摘み取られた薔薇(ピケットローズ)に行ったことがあるといっていた、サルコン卿。


 彼は近衛であり、少し軽い性格ではあるが勤務実態として無断欠勤をしたことはない。

 普段の近衛は3日勤務して1日休みを取る。勿論、体調を崩したり家族に何かあった時には申請すれば長期休みも取れる。

 しかしこの一年間において、サルコン卿が長期の休みを申請したことはない。

 それは認識阻害(ハイド)を使って事務方へ忍び込んだ時に確認したから間違いない。


 知識としてしか持っていなかった認識阻害(ハイド)という魔法は、使ってみれば今回の摘み取られた薔薇(ピケットローズ)捜索において、とても重要な役割を果たしてくれそうだった。


 魔力の高い相手には無理だったが、庭師や下女たちのようなそれほど魔力量を持たない相手なら、少しくらい声を出した程度では、僕を認識できなくなるようなのだ。

 だから、足音がしようが衣擦れの音がしようがあまり気にしなくてもいいのだ。

 むしろ堂々としていた方が、そこに人がいるとは思わないらしい。


 ただ、ドラン師や騎士団員などは、声を出したら見つかる。

 何度か確かめてみたけれど、駄目だった。だからいつか来るその時は、絶対に声を上げないようにしないといけない。


 僕は、認識阻害(ハイド)の効果を確かめるべく呪文を唱えて執務を抜け出し、王城内を歩いて廻った。


 そうやって城内を歩き回ってみたけれど、結局噂から情報を得ることはできなかった。けれどサルコン卿に関する資料を読むことができたのは大きい。


「それにしても、当てもないのに歩き回るのは疲れるものだな。何処に行けば情報を掴めるのか分からないから余計にそうなのかもしれないけど」


 王城内は広いので、隈なく歩くと結構疲れた。


「そうだ。つまり、近衛としてこの王城に勤務しているサルコン卿が仕事を抜けることなく行って帰って来れる場所に、摘み取られた薔薇(ピケットローズ)は、あるのではないだろうか。そう、もしかしてこの王都に?」


 そう思い付いて、胸がどきどきした。




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