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Edens Entelecheia -ラクエンテンセイ-  作者: 迷迭香
第一章 最弱の強者が目醒める
7/16

『名優』エトワール

 総勢150余名による大遠征は、レオンが想像していたよりもずっと快適で、同時にひどく退屈なものだった。

 それは2ヶ月間の濃密な戦闘・射撃訓練と、レオンの開発した爆裂式魔弾加速射出銃ボルト・エクスプロージョン(レオン命名)もとい、魔銃の功績によるところが大きい。

 この2ヶ月間で鬼人は『思念伝達』に適応し、人狼との連携を強化、さらに相互での対話や他のペアとの手合わせを繰り返すことで互いの癖、得手不得手、緊急時の対応などを相互で把握することで比翼連理、一心同体と言えるほどにまで息を合わせられるようになっていた。

 それだけでなく、今回の遠征のために開発された魔銃は一見すればただの火縄銃だが、その実態は魔法による小規模の爆発により爆発の術式を込めた魔力弾を撃ち出すという設計になっており、その仕様上、物理的な弾薬資源を必要としない。

 彼らはまだ気づいていないが、リロードすら必要とせず魔力のある限り撃ち続けることのできるこの魔銃は、この世界においては完全なオーバーテクノロジー。

 その威力は、全長30mほどの野良のはぐれ大型飛竜を数発で撃ち落としてしまうほど。

 意図せず、レオンは現代知識無双をする形になっていた。

 そんな大幅に強化された大部隊を率いた行軍は、時速50km程で疾走する人狼族の脚力により破竹の勢いで進んでいた。

 しかしその時、東の空からけたたましい雄叫びが聞こえる。


「東よりはぐれ赤竜の接近を確認! 魔銃射撃隊、構え! 撃て!!」


 茜雫せんなの素早い号令に合わせ、40程度の銃口が東の空から迫る全長およそ50mの赤竜に向けられ、合図と共に一斉掃射。

 放たれた魔弾はその全てが赤竜に着弾し、本来なら刃をも弾くほど硬質な赤竜の鱗を爆発の威力でぶち抜く。

 全身を爆破された赤竜は、甲高い悲鳴を上げながら反転して飛び去っていった。


「撃退を確認。撃方やめ!」


(あれから茜雫がより一層頼もしくなってる……)


 とこのように、外敵に見舞われた場合も茜雫の迅速で正確な部隊指揮により、レオンが何かする前に対処・解決される。

 この遠征中のレオンは、終始シルヴァの背でただ風に揺られているだけ。

 ピクシーやシルヴァと雑談を楽しむだけの旅が2週間ほど続き、彼らは山越え谷越え平原を駆け抜け森林を踏破したところで、彼らは不意に足を止められた。


「ふむ。人狼と鬼人を束ねるハーフエルフとは、君の事かな?」


 まるで舞台役者のようにどこか誇張気味でハキハキとした声と共に、遥か上空から急降下してきた何者かが、レオンの進路を塞ぐように5mほど先の大地に盛大に、しかしとても静かに着地する。


「だとしたら、なんだ?」


 慎重に見定めるように応じるレオン。

 立ち上る土煙の向こうから姿を現したのは、肩まで伸びた太陽のように明るい薄橙の髪と、海よりも澄んだサファイア色の瞳、その全身を絢爛で煌びやかな宝石が散りばめられたネックレス、腕輪、指輪など装飾の数々でこれでもかというほど飾り、身に纏った真紅の外套を風に躍らせる、一見すればただの高校生程度の年齢に見える男だった。


「ハーッハッハッ! そう警戒しないでくれたまえよ、僕は君に会えるこの瞬間を心待ちにしていたんだ」


 まるで演技をするかのように、右手で額を押さえて何かを嘆くような表情をしながら、残る左の掌ををレオンに示す。

 それを少し呆気に取られたような顔で見ているレオンや、彼に付き従う一行が最初に抱いた感想は「なんだコイツ」だった。

 しかしそんな拍子抜けな態度に一瞬不意を突かれこそしたが、この世界でそれなりに生きた者たち……とりわけ、承影やシルヴァと言った面々はその正体と恐ろしさを知っている。


「『名優』エトワール——ッッ!!」


「そうとも! 僕こそ【魔天七星セブンスヘヴン】序列2位『名優』エトワール! 世界を彩る花形役者さ、以後お見知り置きを」


 その正体を見抜いたシルヴァや承影が一層警戒心を強める一方で、エトワールと名乗った男はカーテンコールの挨拶でもするように、優雅にレオン達の方へ一礼する。


「して、その序列2位殿が何用かな?」


「ふふっ、そう畏まらないでくれ。君と僕の仲じゃないか。なぁ、《《レオ》》?」


「俺の名前は《《レオン》》だ。誰かと勘違いでもしているのではないかな?」


 エトワールは、その返答を受けて「ふむふむ」と2、3度相槌を打ち、何か合点がいった様子で頷く。

 そしてレオンが瞬きした瞬間、視線の先にいたはずのエトワールが消えていることに気づく。

 それと同時に、優しく掌で背中を触られた感触を知覚した。


「なるほどなるほど。一見、そこらの脇役と変わらない弱者に見えるが……君の心臓から感じるこの鼓動、間違いなく『始原』の波動だ。さては君、僕のことも覚えていないね??」


 レオンの背中に手を当てていたのは、先ほどまで前方の立っていたはずのエトワール。

 その事実に気づいた瞬間、全員の背筋が凍え、レオンを乗せたシルヴァが咄嗟に飛び退く。


(触られるまで全く気づけなかったっ!? 俺だけじゃない、全員が! 奴がその気なら今の一瞬で心臓をやられていた!!)


 レオンが内心で肝を冷やし、戦慄に冷や汗を流す。

 しかし、エトワールは一切の害意も殺気もなく、むしろ旧友に向けるような笑顔をレオンに向ける。


「あぁ、すまない。驚かせるつもりはなかったんだ」


 やはりどこか演技混じりに語りかけるエトワール。

 それに訝しむような視線を向けながら、レオンは再び同じ問いを投げかける。


「……それで、俺に何の用かな?」


「あぁ、まだ答えていなかったね。僕の用件は単純さ、君が本当に『始原』の芽を持っているのか、それを確かめたかったんだよ。そして君はそれを持っていた! わかるかい? 君は僕と同じ、選ばれし存在だ!」


 感傷的な表情で歓喜を謳い、左手を胸に添えて右手をレオンへ差し出す。

 エトワールの一挙手一投足は、全て煌びやかで華やかだった。


「わかるわけがなかろう」


「うーん、それは残念。まぁいいさ! 今は解らずとも、すぐにわかるようになるだろうからね!」


 エトワールが何かに納得したように仰々しく頷いた時——


 ——グルルガアァァァッッ!!


 南東の空から、空を震わせる重低音の音波が響く。

 そちらに視線を送れば、聳え立つ山の向こうから飛来したのは、先日レオン達が撃退した赤竜に引き連れられた10体以上の赤竜の群れだった。

 一体一体が50m以上の体躯を持ち、硬質な鱗に身を包む『紅蓮色の絶望』とも言われる赤竜の群れが、レオン達の軍目がけて殺到する。

 それを見上げる彼らの視線は険しく、茜雫が全体に射撃命令を出そうとした時、エトワールが動いた。


「全く、役者のセリフを遮るものじゃないよ。公演中の乱入は御法度だ」


 少し冷ややかな目で赤竜を見上げるエトワールは、右手を上空に向けて胸の前で袈裟に振り上げる。

 ただそれだけで、遥か上空を飛翔していた10以上の赤竜が1匹残らず胴を綺麗に両断され、断末魔の合唱を響かせながら地に落ちる。


「ふむ、少々見栄えに欠けたかな? もっと華やかさを追求したいところだね」


 そんな超常的な芸当を成し遂げた張本人は、顎に手を当て自らがもたらした結果を見ながら、少し納得がいっていない様子で唸った。


「うっそぉ……」


「これが……『名優』……」


 一方、ピクシーや承影達は空いた口が塞がらない様子で、視線を上空からエトワールへ向ける。

 空いた口が塞がらないのはレオンも同様であった。


(何だ今の!? 空間ごと斬ったのか……?)


 それをおくびにもださず、傲岸不遜に構えるレオンにエトワールが向き直った。

 エトワールは、再びレオンへにこやかに微笑みかけてウインクする。


「さて、それじゃあ話を戻そうか。僕から2つ提案をしよう。それを受け入れるかどうか君が選ぶ。どうだい? 簡単だろう?」


「——内容次第だ」


「十分だとも! それに、君に取っても益があると思うよ。ではまず1つ目の提案だ。レオ、いや今はレオンだったかな。君を【魔天七星セブンスヘヴン】最後の1人に推薦する!!」


 まるで存在しないスポットライトが彼を照らしているかのように、全員の視線を独り占めしたエトワールは、歌劇で躍る演者のようにしなやかに、機敏に身振りしながら大きく両手を広げて空へ掲げる。

 それを聞いたピクシーとゼンゼ以外のレオンの配下たち全員がざわめく。


「嘘だろ!?」「これは大変なことだぞ!」「【魔天七星セブンスヘヴン】最後の1人ってことは……」「あぁそのまさかだ!」「マジかよ!?」「やっぱ閣下すげーっ!!!」


「ハッハッハッ! 観客も大喜びだね。いや、彼らの場合はエキストラか」


 それを聞きながら小気味良く笑うエトワール。

 一方、レオンは自分がどれだけすごい提案をされたのか、イマイチピンときていないかった。


「ふむ。僕を忘れているくらいだ。何故そうなってしまったかわからないが、その様子だと本来の君が持っていた基礎知識も全て失っているのだろう」


「ほう? 本来の俺とは、また興味深いことを言ってくれる」


「ハハッ! そうだろうとも。まぁそれもいずれ順を追って話そうか。今は【魔天七星セブンスヘヴン】の事について知ってもらおう」


 両手を腰に当て、レオンに身体ごと向き直ったエトワールが説明を始めた。


「【魔天七星セブンスヘヴン】とは、この世界に君臨する7人の魔族の頂点。魔王達の総称だ。その強さは1位から7位までの序列で表されている。僕は2位だから、2番目に強い魔王ということだね!」


「して、最後の1人という事はどこかに空席があるのだろう?」


「その通り! 現在【魔天七星セブンスヘヴン】は6人しかいない。僕を始めとして、3位の『龍皇りゅうおう』、4位の『魔導工房まどうこうぼう』、ここまでが上位と呼ばれる【魔天七星セブンスヘヴン】創立以来顔ぶれが変わらない古参だ。次、5位『人形使い』、6位『悪魔公爵あくまこうしゃく』、7位『眠り姫』。この3人は、ここ500年で入れ替わった新参だね。でも序列に食い込むだけあって、誰も彼も強く個性豊かで魅力的だ」


 陽光のスポットライトの下で、指折り数えながら優雅に踊る歌劇の主演はそう言って一度言葉を区切った。


「しかし、君も気づいただろう。実は現在、いやここ8000年の間、1位が空席なんだ。そこで、僕はその1位に君を推薦したい!」


「8000年だと? 繰り上がりで卿が1位になればよかったではないか」


「もちろんそう思うよね、だが違うんだ。1位は、これまで意図的に空席のまま確保され続けてきた。時にレオン、君は前任の1位のことは?」


「無論、知るはずもない」


「やはりそうか……前任者、初代序列1位は『始原の魔人』。まぁ結論から言えば、かつての君自身だ」


 何気なく告げられたその事実に、レオンだけでなく、配下達も驚愕に包まれざわめく。


(かつての俺が1位だと!? まるで心当たりがない! 俺はレオンで、武田慎之介のはず! もしやそれ以前の話か!?)


「そして君はその転生体に当たる、ここまで言えばわかるだろう。僕たちは君に帰ってきてほしいのさ、例え記憶を失おうと、肉体が変わろうと、魂は、その力は! 変わらずそこにあり続けた! 僕は喜ばしいっ!! 親友の君が、再びこの舞台に上がってきたことが!」


 1人歓喜を噛み締めたように目を輝かせ天を仰いで大きく両手を掲げる。

 全身の宝石が彼に当たる光を反射して、その姿がとても煌めいて見えた。

 一方、レオンは少し困ったように額に手を当て、小さく唸る。


(情報が多すぎるっ……俺の過去のこと、俺の中にあると言う力のこと、聞きたいことは色々あるが……ひとまずは——)


「エトワール殿」


「何かな? あと呼び捨てで構わないよ、僕たちの仲だ」


「そうか、ではエトワールよ。俺のことを親友と言ったが、以前の俺と卿はどういう関係だったのだ?」


「僕らの関係か……それを話すには、まず【魔天七星セブンスヘヴン】の真の目的を話さないといけないね」


「真の目的? 人間どもを滅ぼすことではないのか?」


 エトワールの言葉に引っ掛かりを覚えたシルヴァが食ってかかる。


「あぁ、体外的にはそうなっているね。でも実際は違う。簡単に言うと、僕たちの本当の目的は創世神を殺すことだ」


 その発言に、さらに周囲のどよめきが強まる。その中でも最初に口を開いたのは承影だった。


「本気なのか!?」


「あぁ、もちろんだとも。かつては仕損じたが、今度こそ可能だと思ってるよ。何せ彼がここにいる」


 エトワールが向けた視線の先には、何が何だか理解が追いついてないレオン。


(創世神って……誰?)


 一見余裕そうに見える表情の裏で、混乱と情報過多でレオンの頭はパンクしかかっていた。


「そして僕と君の関係は、神殺しを成すための長い戦いの日々の中で、互いを対等だと認め合い絆を紡いだ協力者にして、唯一無二の心の友! と言うわけさ」


 エトワールは決め台詞と言わんばかりに腕を大きく振り回して、全身の装飾、白い歯、そして瞳にスポットライトを反射させて輝かせながらレオンは語りかける。


「さぁ、答えを聞かせておくれ。尤も、ここで断る利点はないと思うがね」


 エトワールに解答を迫られ、レオンの思考は引き戻される。

 事実、彼の提案に乗る利点は大きい。【魔天七星セブンスヘヴン】の序列1位ともなれば、肩書きにも箔がつく。もしかしたらわざわざ戦わずとも協力を取り付けられる相手もいるかもしれない。

 また、魔王の一角になれれば配下達への示しにもなる。彼らに反逆の意志を与えさせない材料にもなるだろう。尤も、既に仲魔になった彼らにその意志はないため、実質合って無いような利点だが。


(悪くない話だ。デメリットがあるとすれば、ほぼ間違いなく神殺し計画に巻き込まれるだろうことと、他の魔族から明確に狙われやすくなること……)


 静かに、しかし僅かに期待の眼差しでレオンの答えを待つエトワール。

 やがて2分に渡る長考の末、レオンは結論を出した。


「わかった、その提案に応じよう。して、卿は俺の味方だと認識して良いのかな? エトワールよ」


「ああ! ああ!! もちろんだとも心の友よ!! 僕は誰よりも君の味方さ!!」


 レオンの返答に心底嬉しそうに頷き、その表情と仕草に歓喜の色を滲ませるエトワール。

 そして歓喜を噛み締め終えると、もう一度レオンへ手を差し出す。


「それと、2つ目の提案なんだがね。この僕が、君の道行きに同行しよう!」


「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!???!?!?!?」」」」」」」」


 サラッと言ったエトワールと、事の重大さを理解できていないレオン以外の全員が驚愕と声を上げた。


「『名優』さん、アンタ正気か!?」


「仮にも魔王の一角、それも序列2位がそんなことして大丈夫なのか!?」


「大丈夫だとも。どうせ七星会談しちせいかいだんの召集がかかるまでは、演出や表現の研鑽くらいしかすることがないからね。それより、僕は8000年ぶりに再会を果たせた親友と共にいたい! その方がきっと面白くなるしね」


「……俺はまだ卿の言葉の全てを信じたわけでは無いんだが」


「構わないさ! むしろ当然と言える。もし保証が欲しいなら……そら!」


 エトワールが魔力で宙にサラサラと短く文を列ね、それらをレオンの元へ飛ばした。

 そして文字列がゆっくりとレオンの前まで来て止まる。


「それは魔法契約と言ってね、別名『破れぬ誓い』とも呼ばれる。そこに『この僕、エトワールはレオンを盟友と認め、君と君が配下と認めた者達へのあらゆる敵対行為を行わず、君たちを仲間と認め、危険が及ぶことがあれば全力で守護する』という旨の条文を記しておいた。あとは君がそこに調印すれば契約完了だ。破れば、僕は命を失う。ま、僕が君を裏切るわけがないがね!」


「ホントだ、今言ってた事が血判付きで書かれてる……ここまでの魔法契約普通はしないのに」


 レオンの方から飛び出して条文を覗き込んだピクシーが、口元を押さえて呆然とする。


「ハハハッ! 君の信頼を得るために、僕から示せるせめてもの誠意だと思ってくれたまえよ!」


(エトワールが若干胡散臭いのは置いといて、ピクシーが言ったことが本当なら、こいつは今相当重い契約を持ちかけてきてる……本当に味方になってくれるとしたら心強いことこの上ないし、ひとまず味方に引き入れてもいいか……?)


「……わかった。ここまでされたとあっては答えないわけにもいくまい。一度、お前を信じてみよう」


 レオンは、未だこの世界の言語を知らない。

 故に条文を読むことはできなかったが、ピクシーを信じて英語でサインする。

 調印が完了すると、文字列は空間に溶けるように消えてしまった。


「よし! それじゃあ、たった今から僕は君たちの仲間だ! 変に畏まらず、10年来の旧友と接するつもりで話してくれたまえ! よろしくお願いするよ」


 調印を確認して、再び優雅に全員へ一礼するエトワール。

 かくして、レオンは思わぬ形で予想外の戦力を手に入れた。


(現世界最強格がこんな序盤から仲間とか、なろう小説でもやらないよなぁ……まぁ事実は小説より奇なりって言うし、現実でチート展開になってくれる分にはまぁ困らないか……)


 未だ状況についていけず、物思いに耽るレオン。

 隣では別の人狼の背に跨ったエトワールが高らかに笑い、前方を指差す。


「さぁ行け! スレイプニル! 次の舞台が僕らを待っているぞ!」


「俺の名前はアイオーンだよ!!」


「ふむ、そうだったか、これは失敬。では行くぞアイオーンよ! 僕らの次の舞台へ!!」


 そんなやりとりをしながら、楽しげに駆け出すエトワールの背を追いかけるように、レオンもシルヴァに出立を命じる。

 そしてエトワールに並びかけると、レオンに気づいた彼が話しかけてきた。


「ふむ、そういえばレオン。今、君はどこを目指しているのかな?」


「天翼種の所だ。戦で奴らを打ち負かし引き入れた後、他種族も併合する」


「なるほど。それなら1つ朗報だ。天翼種相手ならわざわざ戦う必要はないさ。何せ、彼らを生み出したのは他でも無いかつての君自身。君が造物主だとわかれば喜んで力を貸してくれる。まぁ僕に任せておくれよ」


 エトワールは、自信ありげに顔だけレオンへ向けてニッと笑いかけ、高らかに笑う。


「ではこちらからも1つ。俺を【魔天七星セブンスヘヴン】序列1位に推薦すると言っていたが、具体的にはどうするつもりだ?」


「あぁ、それは簡単だよ。次の七星会談で僕が君を1位に据えると提案する。それを僕以外の他の魔王達の過半数、つまり3人以上が承認すればいい。尤も、古参の2人は僕と同じで君の帰りを待ってた存在だから、実質あと1人だね」


 エトワールは風に髪を靡かせながら、「楽しみだね」とにこやかな笑顔で無邪気な子供のようにレオンに笑いかける。


(大丈夫かなぁ……)


 ただ1人、レオンだけは内心どこか不安げな様子でその背中を追いかけていた。


エトワールみたいなキャラは個人的に好きなので、書いててとても楽しいですね

頭の中の映像でも彼は非常に活き活きしてます

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