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Edens Entelecheia -ラクエンテンセイ-  作者: 迷迭香
第二章 VS帝国 人魔大戦
14/17

人魔大戦①『開戦』

テンポ早過ぎないかなぁ。と思いつつ、実際戦争って待ってくれないからなぁ。とも思う今日この頃。

大変お待たせしました。

更新再開です

 それから、7日が経っていた。


 4つの人類軍はそれぞれ【魔国領】国境付近まで到達し、そこに布陣していたレオンたち魔王軍の面々と会敵する。

 ここ【魔国領】南部にて、最初の戦場に立つのはレオン、エトワール、ピクシー、ゼンゼ、ゼノンの5人。

 他の兵は存在せず、ただ5人でこの場を守護する。

「ナグモを前に数万の兵力など無意味」というエトワールとゼノンの助言を取り入れた形だ。

 そして、ついにその時が訪れる。

 昇る日を背負いながらこちらに歩いてくる1人の男、ナグモケイタロウの姿。


(……1人か?)


 他の仲間を1人も連れていない様子に眉を顰めるレオン。

 それを慢心や油断の表れかと思考しかけて棄却する。両隣に立つエトワールとゼノンの表情が一層険しくなったからだ。

 最初に口を開いたのはゼノンだった。


「やはり1人で来たか」


「当然だ。徒に兵を死なせるつもりはない。それに、1人の方が動きやすいのでな」


 ナグモは軍帽のツバをクイと持ち上げて目を細める。

 最上位の3人を前にしてこの余裕を見せるナグモに、レオンは気を引き締める。


(大丈夫、やれることはやった。エトワールの教えも覚えてる。仲間もいる)


 エトワールのハードな訓練によって、レオンは間違いなく強くなった。戦いとは無縁の日常にあったレオンが、エトワールにくらいつける程度には。

 その確かな自負を持って自身の恐怖心を抑え込む。


「レオン、これは相当大変な戦いになる。覚悟はいいかい?」


「あぁ、背中は預けるぞ」


 自然と口をついて出た言葉に、珍しくエトワールが目を見開き、その表情はやる気と歓喜に満ちた勇ましいものへ変わっていく。


「本当に、親友冥利に尽きるよ」


「話し合いは終わったか? では、征くぞ」


 その瞬間、ナグモの纏う闘気が膨れ上がり禍々しい

 紫黒色のオーラが溢れ出した。

 軍帽と前髪の隙間から覗く瞳から、ギラリと鋭い眼光が瞬き5人を射抜く。


 創世歴8046年。遥か北の果て、静寂渦巻く殺戮の大地で、世界最大の生存競争が幕を開けた。


 ————————————————————————


 その頃、レオンたちの戦場よりも東部の平地では、ゴッドハイド率いるおよそ24万以上の王国帝国の2カ国連合軍と、メルトハルト、レイアス、そしてナンバーズ率いる魔王軍が既に衝突、互いに総力をあげた激戦を繰り広げていた。

 13人の聖鍵騎士たちには茜雫と、彼女が直接指揮する、5人1組(ファイブマンセル)で構成された10の精鋭小隊がローテーションを組んで順次対応。

 その他の大軍勢との乱戦も、聖遺物の扱いや個々の基本能力で上回る魔王軍側に軍配が上がりつつある。


 しかしそれだけの要素があっても尚、状況は魔王軍の()()()()()と言ってあまりある。

 たった1人、その男が立っているという事実だけで。


「どうした? 【魔天七星(セブンスヘヴン)】2人と、最上級魔族の名持ちが揃いも揃ってこの程度か? 魔王の称号が泣いているぞ」


 この戦場の中心、最高戦力同士の戦いが繰り広げられている場。そこには、左手に首から腿までを覆うほどの大盾、右手に刃渡1mの両刃の長剣を構え、たった1人でその場に無傷のまま涼しげな顔をして堂々と立つ重装の騎士——ゴッドハイドがいた。

 開戦直後から、メルトハルト、レイアス、承影、シルヴァの4人がかりで挑みかかるも、ただの一歩としてその場を動かすことすら叶わない。

 メルトハルトのブラックホールに匹敵する重力場を生み出す魔法、レイアスの大地を抉る破壊の手刀、承影の大気を焼き焦がすほどの赫刀、シルヴァの目にも止まらない素早さの爪牙、それら全て、等しくゴッドハイドの持つ盾に防がれ、淡い光を放って霧散する。


「くっ、魔王殺しってのは、伊達じゃねぇな」


「......わかってはいたが、やはり創造神の生み出した神器『熾天使(してんし)つるぎ』と『力天使りきてんしたて』は健在か。

 あれを破らん限り、ワシらに勝機はあるまいて」


 一度後退し体制を整えた承影が、和服の袖で口元に流れて来た汗をぬぐい、小手調べを済ませたメルトハルトが、その側にフワリと降り立つ。

 ゴッドハイドの持つ2つの『神器』と呼ばれる特別な聖遺物は、神聖王国が誇る人類の切り札の1つだ。

『熾天使の剣』は、相対する敵と、所有者の信心深さによって斬れ味が変化する特別な剣。

 相手が強ければ強いほど、そして神意に背くものほど鋭く、所有者の信仰心に一片の濁りもない限り、あらゆる刃物を凌駕するほどの絶大な斬れ味を誇る、言わばゴッドハイド専用の対魔王決戦兵器。

魔天七星セヴンスヘヴン】のメルトハルト、レイアスにとっては、これ以上ないほどの天敵と言える。

 しかし、ただの強力な剣一本で戦況が不利になるほど、ナンバーズと魔王たちは弱くない。

 彼らに苦戦を強いているのは、もう一つの神器『力天使の盾』の存在だ。

 そのカラクリは「所有者の周囲に、受けたあらゆるエネルギーを光に変換して周囲に霧散させる特殊な力場を生み出す」と言うもの。

 恐るべきことに、その還元効率は脅威の100%。

 あらゆる攻撃を全て光へ変えてしまうこの絶対防御の存在が、かつてゴッドハイドが序列6位だった当時の魔王を降せた最大の理由であり、ナグモと並んで人類最強と称される所以である。


「メルトハルト、お前はわかっているはずだ。どのような攻撃も、この盾を持った私には通用しない。遊んでばかりでは、徒に短い寿命を縮めるだけだと知れ。

 さぁ、審判の時間だ」


 言葉と共に、開戦後初めてゴッドハイドが歩を進める。

 一歩、また一歩と、その姿が近づいてくる事実に、承影はレオンと出会うきっかけとなったあの瞬間を思い出さずにはいられない。


(くそっ、やはりナグモと同列視されるだけはある。あの武具をどう攻略すればいいっ!)


 承影にとって、否、この戦場にいるすべての魔族にとって、最大の脅威の一角が動き始めた。


 —————————————————————————


 魔国領西部、レイヴンガルド担当のミカエル&ライオット部隊では。


「......おかしいですね。雑兵が群れているばかりで、軍を率いる将が見当たりませんね」


 ゴツゴツした大小様々な岩が転がり、乾いた風が吹き荒ぶ極寒の荒野に、上空から天使軍の天撃による破壊の雨を降らせ、既に何百という敵軍を笑顔で虐殺したミカエルが、眼下の光景を見て不思議そうに呟く。

 それが聞こえていたわけではないが、地上で戦っていたライオットも同じ感想を抱いていた。


「もしや、噂に聞く【亡霊小隊】とは、本当に亡霊のことなのでございましょうか? もしそうなら、攻撃時に魂を捉えなくてはいけないのが面倒でございますが.......おや?」


 その瞬間、ミカエルは『パスッ!』という微弱な乾いた音を聞いた。

 直後、地上方向の死角から亜音速で迫る不可視の弾丸を本能で知覚したミカエルは、翼による飛翔を意識的に減衰させ、マニューバを使用してそれを回避。

 初見の攻撃手段に、思わず口角が上がる。

 翼を掠めた弾丸の軌道から、発射元を瞬時に導き出し視線を送るが、そこには無骨な岩が数個転がっているのみで、生物の持つ熱すら感じない。

 試しに天撃を落としてみるが、岩が砕ける意外には一切の手応えもなし。


「あははっ♪ どうやら先ほどの仮説はあながち間違いではない様子でございますね♪」


 未知の敵を前に、ミカエルは興奮と期待を抑えきれない。

 戦闘能力において、下位の魔王たちにすら匹敵し得る彼女にとっては、今まで戦いは弱者を蹂躙するだけの単調な作業に過ぎなかった。

 しかし、その常識が覆す可能性を持った者がこの場に存在する。

 その事実を前に、ミカエルはこれまでで最も無邪気で邪悪な笑みを讃える。


「さぁ、是非命の限り、私を楽しませてくださいませ」


 残忍に、しかし油断はなくまだ見ぬ敵に懇願する。

 返答は、ミカエルのいる座標を目掛けて、十字に交差するように放たれた2発の銃弾だった。


 —————————————————————————


 そして南東部......ユイ&イヴリットの担当地帯。

 南と東の戦場を遮るように広がる、針葉樹の大森林が彼らの戦場となる。


「なぁ婆さん。本当に奴らはここにくるのか?」


「無論じゃ。お主は知らぬようじゃが、銀天郷は夜こそを己が世界とする者たちの集まりじゃ。

 彼奴等きゃつらは昼の戦場とあらば、このような陽の当たらぬ場を選ぶ。

 それに、ここには足場が多い。お主のような身体能力を活かす戦い方を好む者には打ってつけじゃよ」


 どうやら森林の中に布陣したユイとイヴリット選抜の精鋭部隊も、同じ疑問を感じていたらしい。

 ユイに言われて彼らが視線を上へ向ければ、確かに遥か上空では針葉樹がその枝を伸ばし、葉を茂らせて陽光を遮断している。

 光の当たらないこの場は、明るさだけなら夜とそう変わらない。

 加えて木々の密度も、イヴリットのような戦士にとっては、立体的な動きをするのに嬉しい配置間隔。

 情報が確かなら、敵にしても戦場にはもってこいだと言えた。

 そしてイヴリットが理解を示すのと同時に、その時は訪れる。


「貴公らが、魔王軍の戦士か?」


 聞こえてきた声は1つ。しかし迫る気配は1つにあらず。

 声と共に、次第にその姿が明らかになる。

 それは、ユイと同じ様な服装の男。

 腰には二振りの刀を携え、眼帯で左目を覆い隠し、残った右目で鋭く魔王軍を見渡す。

 その問いかけに真っ先に答えたのはユイだった。


「いかにも。我らは『始原』の魔王陛下に仕える僕よ。

 ふむ......その出立いでたち、お主が当代のサクヤ......『天剣』と言うわけか」


「左様。知っているかもしれないが、改めて名乗らせてもらおう。

『月虹団』が団長、水無月サクヤ。貴公らを斬り裂く”夜“の名前だ」


「かかか! 相手が剣客とあらば、我も名乗らねばなるまいよ。

 生まれはシロガネ。姓は白雪、名をユイと申す者!

 我が刃こそ、お主らを喰らう魔王の剣よ。

 とくと味わい逝くがよい!」


 その名に覚えがあったのか、サクヤが微かにニヤリと笑った。

 しかし、それも束の間。両者の視線が交錯し、その手は腰元の刀に伸びる。

 それ以上の言葉は不要だった。


「然らば」


「いざ」


「「尋常に!!!」」


 その掛け声が、全ての戦士にとっても合図となる。

 斬り結ぶ鈍い金属音に続くように、幾つもの激突音が森に響き渡った。


 —————————————————————————


 ここではない遥か遠く。

 彼方のホワイトルームから、全ての戦場を興味深そうに見守る存在がいた。


「武田様、いえ、レオン様のご活躍は大変素晴らしい。

 ()()()()この世界で無事魔王に就任され、ついに最初の試練に差し掛かられたのですね。

 苦労して彼の偉大なる魔王の魂を見つけ出した甲斐がありました。

 ふふ、いや本当に......」


 レオンたちを温かい目で見守りながら、クツクツと笑いを堪えきれない様子のヴィルヘルム。


「もしもあの方がこの試練を超えることができたなら......本当に()()を殺すことも叶うかもしれませんねぇ?」


 たった1人、真っ白なその空間に唯一備えられた執務机の前に優雅に座したまま、虚空に視線を送り、ここにはいない何者かに語り掛ける。

 もちろん返答などないが、ヴィルヘルムはそんなものを期待していたわけではなかった。

 彼が真に期待を寄せる者は、その視線の先にはいない。


「ふふふ、レオン様。どうか、見事成し遂げてくださいませ。

 私は、いつでも貴方様を見守っておりますよ」


 レオンに思いを馳せるヴィルヘルムが、どこか子供を見守る親のような表情をしていたことは、本人しか知らない。


本格的な開戦に際し、今回は少し短めです


年内にはもう一本くらいあげたいね......頑張ります......

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