世界を縛る法則
——翌日昼前、レーゼンハイドにて。
その日、レーゼンハイド城外には新しき王の言葉を聞こうと、数千を超える【魔国領】中の全ての魔族たちが集っていた。
彼らは一様に城のバルコニーを見上げて、その時を今か今かと待ち侘びる。
そしてバルコニーに現れた2つの人影を見て、自然と歓声が上がる。
「総員、静まりなさい! これより、マスターからお言葉を賜ります」
最初に声を発したのはミカエル。彼女の一声で、騒ついていた場が一気に鎮まる。
彼女が横に立つレオンへ深々と一礼し、一歩後ろへ下がる。
バルコニーの縁まで歩み出て、手すり越しに大衆を見下ろしたレオンは、豪華絢爛な衣服……ではなく、茜雫指導で仕立てられた黒い和テイストの軍服に身を包んで満足げな笑みを浮かべていた。
(事前の打ち合わせよし、エトワールの作った台本もよし! 準備は万全、あとは噛まないようにしないとな)
「この国に生まれし国民——いや、新たなる我が爪牙たちよ」
バルコニーの手すりに仕掛けられた拡声魔法。
だがそれを必要としないほど毅然とした声で、力強く声を張り上げ、民に語りかける。
「今日この日、諸君らを新たな同胞として迎えられることを、俺は大変喜ばしく思う」
レオンの言葉に、大衆は聞き入る。
一体この新たな王は、自分たちにどんな魅惑的なことを嘯いてくれるのかと期待をこめて。
「かつて、我らはこの戦の絶えない世界において、忌まわしき神を下さんと覇を唱え、かつては魔族域全土をすらその手に納めた。ここで俺は皆に問おう。それは何故か!!」
投げかけられた問いに、大衆は騒ついた。
——当時の魔族たちが強かったから——最強の魔王がいたから。
各々の答えを待って、レオンは再び口を開く。
「そう、我らが、そして何より俺が強かったからだ! だが、今や栄華を極めたこの国は、ここまでの縮小を余儀なくされている。それは何故か!!」
続く問いに、民衆は答えることができなかった。
いや、誰もが答えに気づいているが、それを口にできない。
「答えられないか! あるいはわからないか! ならば答えよう! それは諸君らの、そして何より俺自身の怠慢が招いた結果だ!! 強者であるという驕りが、慢心が、俺たちを愚かな行為に走らせた! それがこの惨状だ!!」
響き渡るレオンの声に、新しき魔族たちは悔しさに歯噛みし、古き魔族たちは視線を落とし、指摘された自らの怠慢を恥じる。
しかしレオンの話は、終わったわけではない。
「皆よ、面を上げよ。そして思い出せ。諸君らの前に立つのは誰か!」
三度投げかけられた問いに、全員がハッと思い至った様子で声を張り上げる。
「「「「「レオン閣下です!!!」」」」」
「そうだ、俺がここにいる! 俺たちは後ろを振り返って過ちを正すのではない! やり直すのだ! 終わっていない故に、続けるのだ!!」
その言葉に心を揺さぶられた民衆の瞳に、次第に希望の光が灯り、少しずつ湧き上がる熱がレオンの元まで伝わってくる。
「俺たちが求めた真実を思い出せ! 即ち、俺たちは奇跡を殺すための刃だ!」
レオンは大きく腕を振り、声に熱量を乗せて、臣下を激励する。
そこで、大衆のボルテージが上がった。
新たな王の鮮烈な宣誓に、誰もが拳を突き上げその名を叫ぶ。
それを受け、エトワールの演技指導を思い出しながら、力強く高らかに宣言する。
「俺は【魔国領】改め、【リベリオン・ムーブメント】の立国並びに、【魔天七星】序列一位、『始原の魔人』レオンとして復活したことを宣言する!!」
レオンが緩やかに右手を胸の前まで持ちあげ、小さく挙手して宣言したと同時に、大衆からレオンの名を呼ぶ大歓声、否、咆哮が轟いた。
彼らの怒号にも等しい咆哮は、空気を震わせ、大地を揺らし、空へ轟いた。
そしてその瞬間、レオンの掲げた右手の掌に見たこともない緋色の紋様が浮かび上がる。
レオンはそれを見てニヤリと表情を安堵と歓喜に歪めた。
(エトワールに聞いていた通りだな。まさかここまでうまく行くとは)
その烙印は、レオンが他の魔王達から序列一位を名乗ることを許された証。
その演説を聞いていたのは、その場の大衆たちのみに止まらなかった。
この場にいない5人の魔王達も、それぞれの手段で遠隔的にこの演説を聞いている。
その魔王たちが彼の演説を聞き、過半数がレオンを承認したのだ。
湧き上がる大歓声を尻目に、レオンは城内へ戻っていく。
中へ入れば、エトワールが腕を組んだまま壁にもたれかかりしたり顔でレオンを待っていた。
「かんっぺきじゃないか!! 僕はとても感動したよっ、君にはやはり演技の才能があるね! 君こそ、この歌劇の主役だ!!」
「ははっ、相変わらず卿の発言は訳がわからんよ。だが、ひとまず予定通り行きそうでなによりだ」
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——時は少し遡る。
あの決闘の後、レオンはエトワールに捕まっていた。
「素晴らしい戦いぶりだったよレオン! 流石は我が永遠の友!」
「あれが、俺の本来の力、だと? なんだか、記憶がボンヤリ、しているのだが……」
壁に左手をつき、右手で右目を覆い隠すように押さえる。
(頭がぐわんぐわんする……二日酔いした時も、確かこんな感じだったっけ……)
若干の吐き気に嗚咽感を覚えながら、ふらつく足取りでノロノロと歩みを進める。
「そうだとも。しかし、あれでもまだ完全ではない。記憶と一緒に、力も幾分か失くしているみたいだしね!」
その後もあれこれ言われた気がしたが、正直エトワールの話のほとんどは耳に入っていなかった。
(なんとなく、ゲームの3人称視点みたいな感覚だったのを覚えてる……幽体離脱とかでよく聞く自分を見下ろす感覚ってやつか)
断片的な記憶だけが残っており、頭痛に苛まれながら、エトワールの補助を受け30分ほどかけて城まで帰還する。
「どうだい? 少しは落ち着いたかな」
「あぁ。それで、卿がここにいるという事は、また何かあるのだろう?」
吐き気こそ治ったが、未だ残る頭痛に苛まれ顳顬を押さえる。
それとは対象的にエネルギーの溢れるエトワールは、上機嫌に鼻歌を歌っていた。
「お、わかるかい? 流石はレオン。と言っても、今回は簡単な話だよ」
「かんたんな話、だと?」
「あぁ。さっきの君の決闘で観客たち、そして他の魔王達にも、君の強さを疑っているものはいなくなったのだよ。そういうわけで、君には新たな配下たちへの演説と、魔王達へ向けた復活宣言をしてもらいたいんだ」
「演説だと……? それに何の意味が」
「まず正式に上に立つと知らしめることで、国として動けるようになる。そして2つ、復活を魔王達に承認されれば、彼らの協力を得ることもできる! まぁ台本とか演出は僕が考えておくから、君は言われた通りやればいいのだよ」
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「これで、あとはミカエルが派遣した天使軍が新たな配下を引き連れてきたら完了だ。ここから本格的に、僕らの神殺し計画が始まるよっ!」
「なぁ、エトワールよ。なぜ魔王達は神を殺そうとするのだ? 創世神とやらは邪神なのか?」
(もしや、創世神=ヴィルヘルムとかだったりしないよな……)
ふと思い至った仮説を強引に否定する。
「あぁ、まぁ邪神と言えば邪神だし、そうでないといえばそうでもないかな」
「まるで要領を得んな」
エトワールは壁に持たれたまま、組んでいた腕の片方を持ち上げてを人差し指を頬の前で立てる。
もたらされたあまりにも曖昧な解答に溜め息を吐きそうになるが、エトワールの話はまだ終わっていない様子だった。
「それだけならね。時にレオン、君はなぜこの世界で争いが絶えないか知っているかい?」
投げかけられた問いに、レオンは首を横に振って答える。
それにエトワールは「だろうね」と苦笑いして、
「今から話すのは、この世界でも極一部の者しか知らないことだ——」
そう前置きして、天井を見上げながらゆっくりと語り始めた。
「この世界には、創造神によって定められたある法則がある。『この世界に生まれた全ての者たちが、人と魔族、白と黒、善と悪に別れて常に争い、血で血を洗い続ける』そういう法則がね。僕はこれを『二元論』と呼んでいるよ。
尤も、善悪の定義なんて賢者たちが考えるようなことはお呼びじゃない時代だ。決して相容れない精神性の連中が、勝手に善を名乗り、勝手に悪を名乗っているだけに過ぎない。
まぁ傾向として、悪を名乗る者ほどよく笑い、善を名乗る者ほどよく怒る。中々皮肉が効いているよね。
そんな戦いが何千年、あるいはもっと前から続いていた。創造神はそれを、遥か天の彼方の座でふんぞり返って見ている。この世界は、奴の鑑賞する娯楽でしかないんだ。
そこで、この争いに終止符を打つべく立ち上がった者たちがいた。それが、僕たち【魔天七星】さ。
……本当はもう少し仲間がいたんだけど、全員死んだり離別してしまっていてね。今や僕たち7人の魔王しかいない……と、これが僕らが創造神を下そうとしてる理由だよ」
最後にレオンに視線を向け、優しく微笑みかけるエトワール。珍しく感傷に浸ったような彼の視線を受け、レオンはそっと瞑目し、
「1つ、良いかな?」
「あぁ、なんでも聞いてくれ」
「卿らは、どうやってその法則を見つけ出した?」
「それを見つけたのは嘗ての君と……ナグモケイタロウだ」
その回答に、レオンは思わず目を見開く。
「なぜ、そこで奴の名前が出てくる?」
「君は覚えていないのかもしれないが、8000年前は、彼も僕たちと志を同じくする同胞だった。生憎、今は敵同士になってしまったがね」
「……奴はただの人間だろう、どうやってそんなに長らえている?」
「さぁ、それは僕も知りたいくらいさ。ただ1つ確かなのは、彼はその異名の通り【特異点】だということだ。目下、僕らにとって最大の障害だよ」
(今はまだ情報が足りないか……)
やがて陽が沈み始め、その日は解散という形になった。
レオンの中に生まれた疑問は、未だ拭いきれない。
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——4ヶ月後、イースフィア帝国。
人類最大規模の先進国であるこの国では、皇帝の勅命により、かつてない大規模な軍事演出が行われていた。
数万にも及ぶ一般兵士たちが、2人1組になって、木剣や木槍で互いに殴り合い、魔神兵たちはそれぞれの異能戦闘訓練に励む。
その演習場の端で、パーシーたち【RAPID-7】が各々休憩しながら話していた。
「「「「「【リベリオン・ムーブメント】?」」」」」
「あぁ、ここ数ヶ月で台頭してきた魔族の新興勢力らしい。こんなに大きな演習が開かれてるのも、大元はそいつらが理由って話だ」
任務中の副隊長を除いて集結した5人のメンバーは、隊長のイグナーツからもたらされた話を聞いて全員が疑問符を浮かべる。
その中の1人、赤髪をポニーテールで結んだ快活な女性——ユリアが自身の腰掛けるベンチの上にボトルを置いて口を開いた。
「でも新興勢力なんていくらでもいるでしょう? そいつらは何か特別なの?」
「普通に考えれば、そこらの奴らとは訳が違うんだろう。皇帝陛下がここまで本気になるなんて、そうあるもんじゃない」
ユリアの言葉を拾ったのは、イグナーツではなく水色の髪の背の高い好青年、エリオンだった。
その2人の会話を聞きながら、パーシーはグイッと水を呷る。
そんな中、イグナーツは心底めんどくさそうな表情で続きを話す。
「ああ、エリオンの言う通り訳が違う。アイゼンの奴から聞いたんだが、面倒な事にこの件には魔王エトワールが関わってるそうだ」
「うげっ、よりにもよって序列2位かよ。下位ならともかく、上位の魔王ってどいつもこいつも特別討伐指定個体よりヤバいからあんまり関わりたくねぇんだよなぁ」
エトワールの名を聞いて嫌な顔をしたのは、薄い栗色と右頬にピシリと入った一本線の傷跡が特徴的な、パーシーの同期のルカ。
「まぁまぁ、今回は神聖王国の『聖鍵十三騎士団』や『神聖騎士』、レイヴンガルドの『亡霊小隊』、銀天郷の『月虹団』などなど、各国総出だそうですし、決して無理な相手じゃないと思いますよ」
そんなルカを宥めるのは、薄桃色の長髪で左眼を隠したどこかぼんやりとしたような表情の最年少の少女、クリスタだ。
彼女の言葉に、パーシーは思わず目を見開く。
「ほんとっすか!? 神聖王国はともかく、レイヴンガルドの日和見たちや、保守派の銀天郷が重い腰を上げたんすか!?」
「ナグモ准将並の有名所が勢揃いじゃねぇか! しかも、10年前に魔王の一角を下した『聖鍵十三騎士団』が総出なんて……」
パーシーとルカの驚愕は当然だった。
国の教義で魔族を神の敵と定めているサンクトベルグ神聖王国ならともかくとして、レイヴンガルドや銀天郷は守りに走るばかりで、積極的に魔族狩りなどを行うことは少なかった。
四大国に数えられるほどの国力と戦力を保有しながら、自国の事ばかりだった彼らが動いたという事実が、事態の深刻さを物語っている。
それに加え、10年前に当時の序列6位だった魔王を倒した聖鍵十三騎士団は、本来なら13人全てが一度に投入されることはない。
一人一人が一騎当千級の彼らは、それぞれ分散して戦いに当たる事が殆どなのだ。
「それだけしなきゃいけないレベルってことだろ、なんせ魔族側の最強格だ」
正論を説くエリオンに、ルカもパーシーも「それもそうか」と頷きあって納得する。
パーシーは、座っているベンチの背もたれに思い切りもたれ掛かり、首をダランと後ろ側へ倒して独り言のようにつぶやいた。
「副隊長もいてくれればなぁ……」
「仕方ないよ。彼は別で単独任務中だし、まぁいてくれた方が良かったって言うのは同感だけどね」
ユリアの言うように、【RAPID-7】の副隊長は現在皇帝の勅命により、単独で魔族域へ偵察へ出ていた。
そのため、現在彼らは6人での連携訓練に励んでいるのだ。
「ま、うだうだ言ってもしょうがねぇだろ。俺らだってS級部隊の一員なんだ、副隊長が帰ってきた時驚いちまうくらい、バッチリ連携できるようにしようぜ」
「そうだな。よしお前ら、そろそろ戻るぞ」
「「「「「おう!!!」」」」」
イグナーツの号令で全員が休憩を終え、再び訓練に戻っていく。
彼らが、新たな魔王の君臨を聞いてげんなりするのはまだ少しだけ先のことだ。
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この4ヶ月、レオンは【リベリオン・ムーブメント】の統治で大忙しだった。
まず、領内の数千の魔族たちの挨拶を受け、その後ミカエルの派遣した天使軍の連れてきた魔族たちも受け入れ、領土を拡張する。
それだけでも、かなり大変な作業だった。
何せ昨日まで歪みあっていたような連中に、今日からは仲良くしろと言っても「はいわかりました」とはいかない。
故に、まずは彼らを率いる代表者が必要になった。
そこで設けられたのが『ナンバーズ』制度。
レオン直々に、彼が認めた配下に番号を振り、彼らを正式に幹部として据える制度だ。
こうして上下関係をはっきりさせる事で、魔族たちをまとめ上げる。
初期のナンバーズは以下の通りとなった。
No.1ピクシー No.2 承影 No.3 ゼンゼ
No.4 茜雫 No.5 シルヴァ No.6 ミカエル
正確にはもう何人か存在するが、まずはこの6人が主力となって、部隊を編成する。
と言っても、ゼンゼは言葉を話せない為事実上5人での編成となるのだが。
しかし、明確にリーダーを定めるというのは想定以上に効果的だったようで、彼らの厳しい指導の元、1月もする頃には配下たちにも次第に統率というものが見え始めた。
そして残りのナンバーズは——
「閣下、失礼します」
「イヴリットか」
室内に入ってきたのは、かつてレオンに決闘を挑んだ龍人だった。
彼はあの決闘の後、レオンの配下に加わりたいと直談判し、レオンから配下になった証として『イヴリット』という名を与えられ、今ではNo.8にまでなっていた。
「はっ、先ほど遠征より帰還いたしました。その折に閣下の魔王復活の報を聞きつけ、新たに配下に加わりたいという者たちがおりましたので、現在我が部隊の駐屯地で待機させております。いかがいたしますか?」
「よし、では後ほど代表の者に挨拶に来させろ」
「承知いたしました」
手短に用件を済ませたイヴリットは、その場を後にする。
(この4ヶ月でうちの勢力も、かなり拡大したなぁ……そのうちアメリカレベルになったりするんじゃないか?)
規模はまだしも、戦力だけで見れば既にアメリカどころか主要先進国の総力をも上回るほどの戦力がレオンの手元にあるのだが、その実感を彼は未だ抱いていなかった。
「閣下、少々よろしいでしょうか」
続いてレオンの元にやってきたのは、No.7『金獅子』ことライオットだった。
「ん? 何かあったかね」
「はい。斥候部隊より、ここ数ヶ月魔族全体で、人間たちとの戦争が突如として激減しているという報告があがりました。人間たちが何か企んでいるやも知れませんので、お耳に入れたく」
「なるほど……わかった、報告ご苦労。ライオットよ、現在招集可能なナンバーズを集めよ。明日、会議を開く」
「承知いたしました」
(さーて、なかなか大変なことになりそうな予感……)
少しずつ沈む夕日を見ながら、レオンは溜め息をつく。
部長職での経験と、部下たちの優秀さ故にどうにか体裁を保っていられるが、いい加減レオンも組織の長としてしっかりしなければならない。
(トップって難しいんだなぁ……)
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翌日正午——
本殿が戻った今、会議室としてその在り方を変えた【黒天宮】には、遠征中のNo.9と10を除いた全員に加え、エトワールも集まっていた。
「揃ったようだね、では始めようか! 万魔会談を!」
全員の着席を確認したエトワールの宣言で、会議が始まった。
その場の全員が「万魔会談ってなんだ?」と内心首を傾げるが、それは今回の招集の本題には関係がないので誰1人ツッコまない。
「さて、諸君を呼びつけた理由だが、どうにもこの4ヶ月、人間どもとの戦争が激減しているらしい。それも、あちらから仕掛けてくる戦争が、だ。その報告を受け、人間たちが何かを企んでいるのではないかと思ってな、諸君らから何か意見はあるだろうか?」
上座で机に両肘をつき、鼻の前で組んだ手から全体を見渡したレオン。
その呼びかけにいち早く手をあげたのはミカエルだった。
ミカエルは、レオンに指名されると短く返事をして、
「私が送った偵察隊より、人類側の主要国家全てで大規模な軍事演習が行われている。という情報が入っております。もしかすると、近いうちに総出で大攻勢に打って出るつもりやもしれません」
「ふむふむ、レオンの復活を聞きつけたのか、あるいは僕たちの事がどこかからか漏れたか……いずれにせよ、面白いことになってきたね!」
状況をから様々な仮説を立てながら心底愉快そうに1人高笑いするエトワールに、全員が呆れたような表情をする。
「あまり猶予は無さそうだな……」
「こちらも早急に戦力を整える必要がありそうですね」
エトワールのことは無視して話を進める鬼人兄妹の横で、次はシルヴァがおずおずと手をあげた。
「ん? シルヴァよ、どうしたのだ?」
「いえ、その……たった今部隊の者から入った情報なのですが……閣下にお会いしたいという者たちがいるそうでして」
「ふむ、また配下になりたいという者たちか?」
「いえ、その……【魔天七星】の残る魔王全員が、閣下にお会いしたいと接触して来ていまして……」
その報告に、エトワールを除くその場の全員が呆気に取られ、遅れてやってきた理解に騒然となる。
唯一エトワールだけは、心の底から面白そうな様子で大爆笑していたが、ナンバーズの誰にもそれを気にしている余裕はない。
「…………マジで??」
思わずレオンの喉からこぼれてしまったその小さな声が、この場の誰の耳にも届いていなかったことだけが救いだと言えた。
さて、レオンが平穏に過ごしていられるのもここまでですかね( ^∀^)




