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蒼き炎の龍装騎兵(ドラグナー)  作者: しかの こうへい
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プロローグ-②

脇の甘さが出た回となりましたが、どうぞよろしくおねがいします。

 ダーフと呼ばれるこの村は、生き残りの総人口約300人程度の小さな村だった。元々は500人を超える住人が住んでいたと言う。つまり、昨夜の襲撃で実に4割という犠牲者が出たという事だ。襲撃の瞬間まで、とても美しい村だったのだろう。石と木材・煉瓦でできた住まいには白い漆喰が塗られ、庭も備えた小綺麗な町並みが見て取れる。


 中央の広場では死者が荼毘に付され、独特の油っぽい嫌な匂いが漂っている。さすがの凪もこの光景は耐え難く、村の外に出ることを提案するほどだった。そこで、リーヴァは、彼女の両親に会うことを勧めた。


 リーヴァの家、というか隠れ家は森の奥にあった。昨夜助かった者は、皆その集落に身を寄せていたとのこと。非常時にはその集落へ避難・間に合わなかった者はこの場所を知られぬよう、集落とは反対方向へと逃げるようにと徹底していた。


「そんなに厳重な警戒網を敷かなければならない程、物騒な世界なのか?」

 凪は、思ったことをそのまま言葉にした。

「リーヴァは言ってたよね。君達が見つかったから、夜襲を受けたって」


「15年、あたしが物心つく頃には既にこの村にいたわ」

曰く、彼女が生まれて間もない頃に首都から逃げ出したのだそうだ。

「だから、詳しいことは何も知らないの。このペンダントと秘術に関すること以外はね」


 やがて高台に到着すると、凪は改めて村を一望した。三方を切り立った山々に囲まれ、東側は虫も出る隙もないほど城壁が築かれている。城壁の中央付近、大通りに面した箇所に、この村から出入りできる唯一の大門が設置されていた。リーヴァによると、門の周辺には市が立てられていたとの事。


「そう、だからね。通行手形がないと、このダーフ村からは出ることもできないのよ」

 リーヴァは寂し気に言った。


 凪達は更に西へと進む。村を出てから小1時間も経った頃だろうか、森の地面のあちこちに半地下に設置された隠し集落に到着した。


「ダーフ村にはね、5・6箇所にここのような集落があるの。で、ここが一番奥にある集落。あたしの両親が住んでいるのよ」


 リーヴァから言われるがままに、集落の奥にある偽装された家に到着した。


◇    ◇     ◇     ◇


「そうだったのかね。ライヴ君は、もう……」

 その隠れ家の中央に位置する広間で、リーヴァの父親は言葉に詰まった。

 伸長160cmの凪に比べても体躯の良い、威厳のあるその風貌。彼は自らをアルク=リバーヴァと名乗った。

「そして、コレが家内のバージルだ」

 アルクの後ろに控えていた女性が軽く挨拶をする。アルクは気を取り直した様に、凪の肩に手をかけた。

「多くの被害が出た。村の半分がやられてしまった。救いとなる筈だったライヴ君も、もういない。そこでだ。これも何かの運命かもしれない。着いてきてはもらえないか?」

「救い? どういう意味ですか?」

 凪はアルクを見やった。アルクは凪に着いてくるよう促すと、家の奥へと歩みを進めた。

 

 洞窟の奥は、ちょっとした広間になっている。その広間の中心に、布を被った『なにか』が鎮座していた。アルクはその『なにか』の側に立つと、覆われていた布を取り払った。


「ライヴ君が拾ってきた龍装騎(ドラクーン)だ。多少壊れてはいるが、彼はここまで乗って来られた。もしかすると、だがね」

 アルクの瞳に強い光が宿った。

「君が、正当な龍装騎兵(ドラグナー)かもしれない」


◇     ◇     ◇     ◇


 鎮座している『なにか』は全高4・5mくらい、なんだかイモムシに手足が生えている感じの人型兵器だった。胸のキャノピーは破壊されており、右腕と左足に損傷の跡が見える。龍装騎(ドラクーン)とよばれる『なにか』の側にあるのは、あからさまな大剣。


「アルクさん、この龍装騎(ドラクーン)に乗る…… 、いや、操縦する方法は?」

 凪は一通りドラクーンを見て回ると、半壊したキャノピーを覗き込みながら言った。

「ああ、簡単だよ。中に頭に被るユニットがあるだろう? それを被って、強く念じればいい。ただ思うままに、ドラクーンは君の意志を乗せて動いてくれるさ」


「ところで、アルクさん」

「なんだね?」

「コイツのスペック…… 特に、何を燃料に動いてるかとか、わかりますか?」


「わからない」

 暫くの沈黙の後、いともあっさりとアルクは答えた。その表情は明らかに困っている。

「わからないって……!?」

「本当にわからないんだよ。元々ドラクーンは発掘兵器でね」

「発掘兵器?」

 凪は初めて聞く文字列に、戸惑いを隠せないでいた。

「そう、発掘兵器だ。今の我々のテクノロジーでは手に追える代物ではない」

 アルクは続けた。

「本当に不思議な兵器なのだよ、このドラクーンはね。乗り手を選ぶというか…… そうだな、乗り手の能力如何でその姿すら変えてしまうのだ。スペック…… そう言ったね? 正確に言えば、完全に壊れてしまわない限りには、乗り手のスペックに左右されるというのが正直なところだ」


「そう…… なんですね」

 凪はコクピット内の座席に座ってみた。次の段階として、頭部ユニットを被ってみる。

『うわ、凄ぇホコリ臭ぇ! それに、やたら煙たい。撃墜かなにかされた期待なのか、コレ』

 凪は心のなかで叫んでいた。その上で、いくつかのスイッチを入れてみる。


 ヴン……。

 凪は軽い振動音を感じた。


『オーラ感知、生体認証確認。センサーに異常確認。乗員に合わせて最適化を開始』


「えっ……!?」

 ドラクーンが反応している? 頭部ユニットのモニターが輝き、それはやがてキャノピー全体を、そしてドラクーン全体を光で包み込んだ。


誤字脱字などありましたら、どうぞお気楽にご指摘くださいね!

よろしくお願いします。

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