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蒼き炎の龍装騎兵(ドラグナー)  作者: しかの こうへい
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プロローグ-①

2017年に発表した拙作「蒼き炎の神鋼機兵」を大幅に書き換えてリニューアルしました。

設定もやタイトルも「神鋼機兵」から「龍装騎兵」にチェンジ!

読み辛かった点も大きく捌いて、読みやすくしてみました。

まずバズることはないけど、面白いって思ってもらえればいいな!

賽は投げられた!


 満月の明るい、深夜での作戦だった。眼前の背の高い森を抜けて、城壁まで2Giz(ギズマール:約3.2km)。味方は既に森の中、各部所の配置についている。その陣形の中央には、ドラクーンと呼ばれる人型兵器が一騎、控えていた。


 少年がいた。

 ドラクーンの胸部キャノピーを開け、広く長い一本道をぐっと見据えている。ドラクーンの目前には、ひとつ、またひとつと誘導灯となる松明が焚べられていく。


「ナギ!」

 声をかけられたその少年は、大丈夫・と腕を振ると、ドラクーンのキャノピーを静かに閉じる。そして頭上を覆うヘルメット兼モニターを深くかぶり、焚べられていく誘導灯の数を数えていく。やがて15本の誘導灯が焚べられ、一番奥の16本目の松明足元のが大きく振り下ろされた。


「……アンカー解除! ナギ・カザマ、スサノヲ、出ます!」


 足元のローリング・ギアが火花を散らし、ローラーダッシュが起動した。ギュルルル…… かぎ爪のようなギアが地面を削る。踵部分から地面に突き立てられていたアンカーニードルが抜かれ、スサノヲと共にナギは城門前の詰め所へと爆走した。


◇    ◇    ◇    ◇


 時は、2週間ほど遡る。

 夏休みを迎えた高校生・風間 凪は、四国の劔山へ登山に来ていた。勿論、正規の手続きを踏んではいない。(良い子は絶対に真似しないでね!) 好奇心が講じて、無謀にも冒険感覚でこの山に挑戦したのだ。目的はただひとつ。『失われたアーク』の探索。


 父譲りの武道や習い事で、体力には自身があった。ネットで調べた立ち入り禁止区域も調べ尽くした。そのうえで。


 怪しい洞窟などが隠されていそうな箇所を絞っての出陣だった。


 登山ルートを抜け、地図とスマホではないGPSを頼りに目的の地へと木々を分け入り、前進。登山部員に教えてもらったビバークも2日、ようやく目的地へと到着した。


「へぇ、これが……」

 凪は巨大なコンクリートブロックで塞がれた、大きな洞窟にたどり着いた。大きめの荷物を置き、ブロック上部の隙間から突入すべく最小限の道具だけ別のバックパックに詰め込み、ヘッドライトを装備して巨大なブロックをよじ登っていく。これも、5月から始めたボルダリングが役に立った。


 ブロックの隙間は、比較的小柄な凪の身体が通るには十分な大きさがあった。まずは背負っていたバックパックをザイルに結んでブロックの向こう側に下ろす。所々からはみ出ている太い鉄筋にザイルの片方を固定すると、ブロックの隙間をぬってあちら側へ。次いで凪自身がザイルを頼りに、ブロックの向こう側へと身体を潜り込ませる。そして、ブロックの向こう側でザイルを握って下に降りようと試みる。


 が。


 命綱のザイルが、突然音を立てて切れた。買ったばかりなのに!

 声を上げるまもなく、凪は光に包まれていく。


『……マイアー・エレクター・タユユガーイ・アルクオニー・ケライノー・アステロープ・ミルーパ、運命を司る7柱の大天使よ、我が願い聞き入れ給え……』


 澄んだ声が周囲にこだまする。その声で正気を取り戻した凪は、強い浮遊感を感じた。思わず足元を見る。光の卵に包まれた凪は、見たこともない広大な世界へと落ちていた。このような光景、深夜アニメでよく観たアレそのものだ。


 眼下に広がる世界が次第に近づいてくる。あれは、大きな湖? それとも、海? とにかく、高い山々が湖と海を取り囲むように切り立っている。


俺は、あの海に落ちるのか?


凪は意外にも落ち着いている自分に気づいた。


いや、どうやら凪が落下する軌道は深い森のある山麓の方へと向かっているようだ。

やがて詳細な落下地点が見えてきた。深い森の北にある、古い神殿…… 今まさに、その大理石でできているであろう屋根に、激突しようとしている。この時になって、初めて凪は叫び声を上げた、

「うわぁぁぁあッ!?」

 凪は、走馬灯を見た気がした。もうダメだと思った。しかし、いつまで経っても落下の衝撃が来ない。改めて周囲を見渡す。


 規模は小さいものの、エンタシス様式の柱。自分を取り囲むように配置された、7柱の女神像。そして。


「俺…… か?」

 そこには、傷だらけで大量の血を流したまま息絶えている自分がいた。年齢の割にやや小柄な体躯。バランスよくついた筋肉。いや、何より見覚えのあるその顔だ。鼻っ柱にある小さな傷まで同じである。ただ違うのは、神殿の台座に血まみれで横たわっているということである。


 少女がいた。

 民族衣装のような可愛らしい衣装を身にまとい、なにやらネックレスに取り付けられた真紅の宝石を大事そうに握りしめている。凪を包んだ光の卵はふわり、と少女の目前に降り立った。少女は顔を上げた。


 透き通るような白い肌に整った顔立ち。美人というよりは可愛いの部類に入る。涙に濡れたその瞳はエメラルドの如く深い緑の輝きを放ち、まっすぐに凪を見つめていた。


「……ライヴ! ああ、ライヴ! でも……」

 少女は凪の姿を見るなり、戸惑っていた。

「ライヴ……? それってもしかして、この台座に横たわっている遺体……」

 凪は台座の遺体をしげしげと眺めた。少女と同じく、民族衣装に身を包んでいる。

「これが、致命傷か……」

 横たわった少年の胸のあたりが深く、えぐられている。凪は少女に向き直った。


「君……、俺のこと“ライヴ”って呼んでたけど……?」

 凪は目線を遺体の方へ移した。

「もしかして、彼の名前が……」

「……そうよ、彼の名前はライヴ=オフウェイ。ついさっきまで生きていた。……生きていたのよ!」

「それじゃ、なんで彼は死んだんだ?」

 少女はキッ! と凪を睨みつけた。

「帝国の軍隊が、遊び半分で村を蹂躙したのよ」

「帝国? 帝国って……」

 凪の手が、不意にライヴの遺体に触れた。

「あっ!?」

 少女は声を上げた。

「えっ?」

 凪は台座の方を見た。ライヴの遺体が優しい光に包まれていた。光は粒となり、ふわり・ふわりと虚空へと消えていく。

「待って、ライヴ! お願い、嫌ぁ……!」

 凪はただ泣き崩れる少女を前に、光に包まれて消えていくライヴの遺体を眺める事しかできなかった。ライヴの遺体が完全に消滅するのに、そう時間はかからなかった。


「……ライヴ君…… の事は残念だったね」

 凪が今少女にかけられる言葉は、それだけだった。おそらくこのライヴと彼女は幼なじみか恋人だったのだろう。泣きじゃあ来る少女に気の利いた言葉を投げかけることができるほど、凪は大人ではなかった。




「カザマナギ? 変な名前ね。ファミリー・ネームはないの?」

散々泣いて小一時間も経った頃、ようやく少女は凪と向き合った。

「ナギでいいよ。ファミリー・ネームはカザマだ。で、まだ君の名前を聞いてないんだけど……、そろそろ今の状況とか聞いていいかな?」


「リーヴァ。リーヴァ=リバーヴァよ。正直、まだ心の整理ができてないけれど、あなたは私が召喚したの。本当はね、あなたの命だけをライヴに固定するつもりだった。後出しで悪いけど、ごめんなさいね」

 リーヴァはちょっぴり切ない笑顔を浮かべながら、凪に謝罪した。

「で、つまりは俺の命がライヴくんに取られるところだったんだ。危ねぇ危ねぇ……」

 凪は少し意地悪っぽく、リーヴァの言葉を受けた。


「そう意地悪言わないで。あたし、申し訳なく思っているのよ。本当に。」

 リーヴァは少し、困ったように笑顔をこぼした。リーヴァは言葉を続けた。

「状況は先ほど説明した通りよ。夜襲にあったの。帝国が私達家族を見つけてね。あわよくば消してしまおうなんて考えていたのかも。そんな私を庇って、ライヴが……」

「君達の家族がって、リーヴァがなにかしでかしたの?」

 凪の言葉を聞いて、リーヴァは目を丸くした。

「そんなわけないでしょ。昔、まだあたしが小さかった頃に、首都から逃れてこのダーフ村まで逃げ延びたんだけど、とうとう見つかっちゃったみたい。村の人達には本当に悪いことをしたわ」

 このお嬢さん、どうやら事の重大さを軽く見てるんじゃないか? 凪は思った。


 古びた神殿を出て、森の中へと入る。と言うか、この神殿そのものを森で隠している様に見える。やがて開けた道に出ると、その奥にまだ火が燻る廃墟が見えてきた。瓦礫の中に、まだ片付けられてない遺体が見える。生き残った人々は悲しみにくれる暇もなく、ただただ村の修復に手を取られていた。


「ライヴ、生きていたのか!」

 村の住人が凪の姿を見て喜びの声を上げる。

「い、いや……、俺は……」

「なんにせよ、良かったよ。君のご両親は残念だったなぁ。君の自宅前でご遺体で見つかったよ。とは言え、身に付けているもので判斷する事しかできなかったからなぁ」

「ち、違うの。ライヴにそっくりだけど、違うの。彼は…」

こうして、ことの成り行きの説明が暫く続くのだった。


未熟者ですゆえ、誤字脱字等あるかと思います。そのときには、お気軽にご指摘くださいませ。

なろうか祝いではあまりウケが良くないと言われるロボットものですが、楽しんで呼んでいただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [一言] 追ってまいりますので、今後も頑張ってください!!!
2023/05/19 22:46 退会済み
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