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騎士と悪魔の輝ける日々  作者: 玲島和哲
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会議

 会議室の中は混沌としていた。中年以上の男女が円卓について、誰かが話しているところに激しい調子で口を挟み、それに対する反論が更に加えられ。半ば誰が何を主張しているのか、分からなくなりそうな程だった。時折静かになる場面でも、常にざわついている。


「──今回の件における問題は」一人の神経質そうな男性議員が立ち上がって声を上げた。「監視対象たるイエーグナが、仮にも民間人に危害を加えかねないような態度を見せたことです。この点を踏まえて、我々は話し合いをせねばなりません」


「異議があります」恰幅の良いパーマ頭の女性議員が立ち上がる。「そもそも彼女は、危害を加えられた側であります。彼女は件の事件が起こる、それこそ直前においてまで、飽くまでこの国の規範と法律に則った行動をしておりました。今回の件は、相手側の過剰な攻撃態度がもとに、彼女はかっとなってしまったのです……」


「かっとなったら事を起こしていいのか!」別のところから声が上がる。


「そうではありません! それを言うなら、お酒を顔に引っかけ、無理矢理顔を押さえつけても良いのですか! 彼女一人の責にすべきではないということです。そもそも、彼女は何もしていません!」


「結果的にです」別の、少し若い女性議員が立ち上がって発言した。「聞いたところでは、リベジアン氏が必死に抑えたということです。そもそも、そういう場所に行くこと自体間違っているのではありませんか? お酒を飲んで酔っていたというのも問題ではないですか?」


「彼女には外出許可がある」別の女の声が響く。


「そういうことではありません」若い女性議員が言った。「ああいった飲み屋には喧嘩は絶えません。彼女のように、今もって国民から──まことに残念なことではありますが──必ずしも歓迎されているとは言えない者が、ああした場に現れれば、問題が起こることは予想がついたでしょう」


「確かに、飲み屋における喧嘩の問題は絶えません」小太りの若い男性議員が立ち上がる。「しかし、それは彼女に限らず起こり得ることです。他の者達にも起こり得るのに、彼女がそれに出くわした時にどうして問題にせねばならぬのですか?」


「彼女がどういう立場か分かっておられますか?」神経質そうな男性議員が言った。「彼女と他の国民を並べること自体間違っています。それは今彼女が置かれている特殊な状況においても言えるでしょう。彼女が多くの国民にどう見られているか分かるでしょう?」


「ええ知っています」恰幅の良い女性議員が言った。「しかし我々は、彼女についても他の国民についても、可能な限り公正に考えねばなりません。他の国民動揺、彼女もまた、この国で生きることが認められているのです。まして今のところ、何らの犯罪歴さえない。彼女の特殊さを省みるにしても、それによって、何かしらの不利益を被ることは、決して見過ごしていいものではありません」


「それに付随してもう一つ」小太りの男性議員が言った。「最近、彼女への立ち入りを拒否する店舗が出てきています。彼女を否定的に論じようと、時に過剰とも言える論説が、一部メディアに見られます。こうした状況が、彼女にはもちろんのこと、周りの住人にもどのような影響があるかを考えねばなりません」


周囲のざわつきが、その肯定と否定によって大きくなる。


「……今の答弁を聴いて、あなた方が国民についてろくに考えていないことが分かります」神経質そうな男性議員が言った。「何故そのような看板があるか、何故そのような論説が出てくるか。あなた方はどこぞの高尚な書物で得た知識に基づいて色々な意見を述べていますが、もう少し地に足ついた、現実的な考え方をなすべきではないでしょうか?」


「……!」


 小太りの女性議員が、思わず叫びそうになるのを抑えつつ、その議員に怒気を多分に含んだ視線を送った。


「一つ質問を」老齢の痩せた男性議員がそれを遮るように、手を挙げつつ言った。「あなたは、そうした看板が出されることや論説が横行することが、正しいことだと思いますか? 間違っていると思いますか?」


「私が言っているのは、そういうことではないと分かりそうですがね……」神経質そうな男性議員が言った。「仮に間違っていたとして、どうされます? 強制的に廃絶する形に持っていきますか? どのような権限で? それこそ国民の不信感を煽りかねないでしょう……」


「しかしですね、これでは不要に不安を煽りかねないのでありまして……」


 ──長い時間と膨大な言葉が浪費されているにも関わらず、議論はただただ悪戯に空転するばかりだった。誰も引くこと無く、そしてその当然の結果として、何らの抜け道にも抜けられぬまま、時間が、そして日にちが、過ぎていった。

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