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46二番目の彼女

「う、うん?」


俺は目を覚ました。布団置き場のドアの隙間から光が漏れている。


光の先は__アリーさんのドエロいとこに当たっている。


アリーさんは昨日の姿のまま、つまり生まれたままの姿で気を失っているようだ。


頭にでっかいコブが出来てる。いや、俺にも出来てる。


頭をさするとでっかいコブが俺にもあった。


俺は急に冷静になった。


このままだと__俺勘違いされない?


俺は咄嗟にアリーさんのイケナイところを右手で押さえた。


誰かに見られたら大変だ。あれ?


俺、何やってんの?


このままだと俺の理性が持たんのだけど? アリーさんのイケナイところ押さえてかえって気持ちが昂ってくる。


や、ヤバい。このままだと__俺、間違い起こしそう。


「う、んん?」


ヤバい! アリーさんが目を覚ました。


大きな瞳が開くと俺と目があう。そして、俺の顔と自分の下半身を交互に見た。


俺は慌てて左手でアリーさんの口を押さえた。


悲鳴をあげそうになったからだ。


昨日襲われたの俺だよな? なのに何で俺が襲ってるみたいなことになってんの?


いや、早急にアリーさんを説得して服を着てもらわないと__。


何しろアリーさんは全裸で布団に背にもたれかかってる。


足は無防備に大きく開かれていて、アリーさんのイケナイところは俺が押さえている。


昨日はどうかしていた。睡眠薬を盛られたせいか思考が昼間みたいにおかしくなった。


危うくアリーさんと間違いを犯すとこだった。


俺はアリーさんに話かけた。


「アリーさん。もう朝で人が来るかもしれないよ。急いで服を着て!」


『こんなところ__触られちゃった』


「もしかして__触っちゃったのダメだった?」


『ううん、いいよ。でも今度触る時はちゃんと言ってね♪』


俺は慌てて右手を離した。今度は見えちゃった。


『そんなにじっと見ないで』


うわぁ。ついガン見してしまった。気のせいか? 俺はドンドン罪を重ねているような気がする。


「アリーさん。下着を身につけて、このままだと誰かペンションの人に見つかるよ」


そう言ってショーツをアリーさんに差し出した。


『磯風が履かせるんだぞ』


ひぃいいい!


俺はアリーさんのショーツを履かせてあげた。これ以上アリーさんの裸を見てるとおかしくなりそうだ。


ショーツを身につけさせたから今度はブラだ。


「大丈夫? アリーさん? ブラは付けられるよね?」


『ううん。磯風につけて欲しい』


マジか?


俺は悪戦苦闘しながらアリーさんのブラを着けた。


陽葵とのことで外し方は知っていたから、その知識が役に立った。


「アリーさん。とにかく浴衣着よ。いいね?」


「う、うん」


そう言うとアリーさんはようやく浴衣を着てくれた。


俺、セーフだよな?


「あ? 磯風? そっか、私達__陽葵ちゃんに棍棒で殴られたんだね」


犯人は陽葵か?


やべぇ! 俺のしたことバレてる?


「もう、朝なの?」


「そうみたい」


「ちぇ__赤ちゃんゲットし損ねたぞ」


俺、人生が終わりかけた。


一応服を身につけたアリーさんを見てようやく安堵する。


その時!


ガラッ!


突然戸が開かれた。


「お兄ちゃん。帰ったら、たっぷりお話しあるからね。お兄ちゃんの一番は私よね?」


そう言ってプリプリ怒っている。


「お兄ちゃん、冬月先輩も起こしに行って来て。多分、お兄ちゃんの部屋でまだ気絶してると思うから__アリーちゃんがやったのね?」


「あはッ。先越されそうだったから、つい手元の花瓶で__ゴンって、はは」


冬月さん! 生きていてくださーい!


こうしてようやく昨日のおかしい感じが無くなってペンションの人たちが働き始めて、朝の騒がしさがやって来た。


冬月さんは幸い命に別状はなかった。俺達みたいに頭にでっかいコブできていたけど。


「朝ごはんの用意ができましたので、皆さんどうぞ」


ペンションのオーナーの奥さんが俺達に朝ごはんの案内をしてくれる。


「さあ、みんな朝ごはん頂きましょう。みんな良く寝れた?」


「みんな気絶してるみたいに良く寝てたと思います」


「「「ギクッ!」」」


「気絶? 陽葵ちゃん、変なこと言うのね?」


「まあ、色々あるんですよ」


「?」


ちびはるちゃんが“はてな“と言う顔をするが、俺もアリーさんも冬月さんも顔色が悪い。


昨日のことは黒歴史に刻まれるだろう。


夏の海だったからみんなちょっと解放的なっていただけ__なのかもしれない。


午前中はみんなの書いた小説をめいめい読んで感想会をした。


ちなみに秋月のが一番好評で俺のは才能なしと決めつけられた。


俺、ぐすん。


そんな訳で1泊の旅行は終わって川奈駅で普通電車に乗り込む。


俺達は4人がけのボックスシートで隣が陽葵、秋月とちびはるちゃんが向かい側だ。


ちびはるちゃんがすやすやと眠っている。秋月に体を預けて無防備に寝入っている。


秋月もだ。昨日はあまり眠れなかったのかな?


何故かというところに考えが及びそこで思考を停止する。


フッと陽葵が俺に体を預けて来た。陽葵も疲れたんだよな?


すやすやと眠っている。


昨日アリーさんとイケナイことをしそうになった自分に腹が立つ。


【今の俺は陽葵が一番なんだから】


その時アリーさんが俺の前の方の席から立ち上がり、こちらに向かって歩いて来る。


隣にいた冬月さんも寝入っている。


アリーさんは俺の方を見ると視線があったのか、顔を逸らし、傾けてそして物憂げに下を向いた。


つい、目で追ってしまう。するとアリーさんは通り過ぎる時、振り返りながら俺の目を見た。


そして、俺の隣にすくっと身を寄せてきて俺の顔の正面に顔を近づけて来た。


そしていつものボソッという小さな声で言った。


『一番は陽葵ちゃん?』


「うん」


『磯風は私達二人をお嫁さんにするって言ったよね?』


「__言った」


俺はアリーさんが何を言いたいか__想像できて思わず体がこわばる。


『いいよ。磯風は陽葵ちゃんのことが好き。でも私のことも嫌いじゃないんでしょ?』


俺は何も言えなかった。陽葵の時みたいに冗談めかせて二番目に好きだなんて言えなかった。


『私は磯風が一番好き__だけど磯風は私のこと二番目に好き。違う?』


「__」


言えない。俺はアリーさんに憧れていた。そして手の届くところにアリーさんはいる。


だけど一番好きなのは陽葵、アリーさんは二番目に好き。


『磯風、男の子って一番とも二番とも好きになれるんでしょ? 隠さないでいいよ』


「お、俺は__あ?」


アリーさんは俺にキスしてきた。そっと唇に触れたキス。


『陽葵ちゃんと付き合いなよ。そして私ともこっそり付き合おうよ。私、磯風のものになる。本当はそうしたいんでしょ? 私、それでいい』


それは、ついこないだまでの陽葵と同じ関係。


『人には言えないことをこっそりしようね♪』


そしてもう一度唇を重ねる。そしてそれを拒絶できないダメな俺。


でもかろうじて抵抗する。


「俺の一番の彼女は陽葵だから」


だけどアリーさんはささやいている表情から大きく変貌して意地悪な顔で。


『なら二番目でいいから彼女にして』

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『連載版』クラスで最低と蔑まれた上、幼馴染に振られたけど、後輩を助けたら、超グイグイ来た~俺が無実な上、実はweb小説の神作者だとわかってももう遅い~
― 新着の感想 ―
[良い点] 『俺たちのエロコメ……いや、ラブコメは、これからだ!』なラストですが、ストーリー展開は日常系的な要素が強かったので、こういう終わり方も良いな~と思います。  楽しく拝読しました! [一言…
[気になる点] 完結?
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