願い
長い年月を経て、全ての島を転々と巡ってやっと辿り着いたここは「日本」。
天恵魔法を完全に自分のモノとした雄臣は、意図的に自身に不老の概念を授与させ、美楚乃の捜索に取り掛かった。
だが未だに奴らの行方は掴めないままでいた。ならばと雄臣はこの町にいる人間を餌にすることにした。魔力を集めているならば自ずと魔は魔を引き寄せる。観測者としてあくまで間接的に、自分の存在を匂わせないように、魚(魔術師)が釣れるのを待った。
その最中、雄臣は外見が美楚乃によく似た少女と出会う。
長い黒髪と薄水色かかった黒い瞳。笑顔はなく無表情だが、美楚乃と瓜二つだった。
そんな少女は着物を着ていて、雨の中、一人傘を差さずに濡れている。
間違いなく初対面のはずなのに、なぜか懐かしい感覚を抱いた雄臣は、少女の頭上に傘をかざした。
「お兄さん、寂しい顔、してる」
「そうか、お前にはそう映るのか」
「私も寂しかったから」
「そうか」
「ねえ、お兄さん。私、この巡り合わせをずっと待っていたの、お兄さんなら分かるでしょ?」
「良いだろう。お前の望みを叶えてやろう」
少女の望みを叶える見返りとして、雄臣もある願いを彼女に託した。




