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双子の白兎と黒兎

雪解けを待って

作者: 腹黒兎
掲載日:2020/10/06


昨夜降った雪は止み、庭の池を凍らせて真白い雪で覆い尽くした。

軋むことなく開いた障子から出てきたのはまだあどけなさを残した雪兎の少年だった。

陶磁器のように白く滑らかな肌に、銀が混じった白髪の間から伸びた長い耳は綿毛のようにふわふわとした白色。けぶるような白いまつ毛が縁取る赤い瞳と、ほんのりと桃色に色付いた唇が白の中でよく目立っている。

その身に纏う着物も白地で、裾から膝ぐらいまでの淡い草花の刺繍がされていた。

庭に面した縁台から黒の雪駄を履き、銀世界となった庭に足跡を残しながら視線の先に建つ離れへと向かった。



母屋の屋敷とは違い、離れの家は二部屋と厠しかない質素な建物だが隙間風など無く、しっかりと造られている。

食事は母屋から運ばれるし、風呂も母屋のを借りている。

少年はカラリと玄関を開けて、履物を脱ぐ。

玄関の先にある襖を開ければもう居間があり、その奥が私室を兼ねた寝室となっている。

誰もいない居間を通り、その奥の襖に手を添える。躊躇う気持ちを閉じ込めるように添えた手をギュッと握りしめた。


烏兎(うと)。開けるよ?」


返事は無かったが構わず襖を開ける。滑り良く開いた襖の先にはこんもりと丸くなった布団があった。


「烏兎。貴詠(きよみ)さまがお呼びだよ」


布団がぴくりと動いた。

微かに聞こえたか細い声は、耳のいい少年にはちゃんと届いていた。


「嫌で済まされるワケないだろ。ほら、とりあえず出てこい」


掛け布団を鷲掴んで剥ぎ取れば、胎児のように丸くなった烏兎が現れた。

白い布団の中で両膝を抱えて丸くなっている烏兎が身につけている着物は少年と同じ白地に草花の刺繍が入ったもの。

恐る恐る見上げてくる顔は少年と似ていた。

違うのはその色彩。

長い髪は艶やかな黒髪。そこから伸びた長い耳も髪と同じく黒い光沢を放っている。

肌は同じく白いが、見上げた瞳は黒真珠の様に不思議な光彩を持つ墨色。

雪兎でありながら黒く生まれた少女ー烏兎ーである。


「い、行きたく、ない」


烏兎は少年から視線を逸らして、更に体を丸める。

白い髪に赤い目が特徴の雪兎の一族の中で異色に生まれてしまった烏兎。稀に灰色の子どもが生まれる事はあっても黒い色というのは聞いたことがない。

彼女が産まれた時、産婆は悲鳴をあげて腰を抜かし、母親は気絶した。父親は母親の不貞を疑ったが、そもそも閉鎖的な里で目立つ余所者との逢引など難しい。その上、子どもは成長すると父親によく似てきた為に母親の不貞は払拭された。

代わりに、異色の彼女だけが、里からも家族からも浮いた存在となった。

3歳から離れに住まわされ、両親も里の者たちも余所余所しく接する。まるで腫れ物のように。

その中で双子として生まれた弟の癒兎(ゆと)だけは烏兎に話しかけ、笑いかけ、その手を当たり前のように取り、抱きしめた。

癒兎は烏兎の全てであり、世界だった。


「行かなきゃダメなんだよ。貴詠さまがお呼びなんだから」


ほら。と難なく差し伸べてくる手を拒否する事は烏兎にはできなかった。

その手を拒否すれば永劫に失うかもしれないという恐怖がある。誰に拒否されようとも構わないが、癒兎だけは別だ。

手を突いてゆるゆると起き上がると、差し出された手を恐る恐る取った。

癒兎は、遠慮がちに触れてくる烏兎の手をギュッと握る。まるで離さないと伝えるように。

それだけで烏兎は泣きたくなくなるほど嬉しくなってしまう。


「時間ないからこのまま行くぞ」


引っ張りあげられて、布団もそのままに玄関へと歩いていく。


「待って。待って、癒兎。わたし、髪もといてないっ」


「布団の中でぐずぐずしていた罰だ。そのまま行くぞ」


「酷い、癒兎。せめて身なりを整えないと……」


また悪く言われる。

飲み込んだ台詞は容易に推測できた。

烏兎に対する里の者たちの悪意ある言葉を、耳の良い癒兎は難なく拾う。その度に睨み返したりしているが、年若い彼に出来ることなど限られていた。

癒兎は繋いだ手とは逆の手で烏兎の髪を手櫛で整えて肯くと再び歩き出した。


「僕と同じ顔なんだから、そのままで十分可愛いんだよ」


妙な慰めに烏兎は思わずくすりと笑ってしまった。

赤らんだ頬で軽く睨まれたが、しっかりと握った手が離される事はなかった。



庭を抜けて母屋を横切った先にある門を抜けて外へ出る。

里の奥にある長の家に貴詠さまはいる。

予知の才を持つ貴詠さまは、異能を発現させた10の歳から長の家に預けられ、その才を活かしていると言われている。

雪兎の一族は排他的で仲間意識が強い。滅多に他種族の血が入らないので異能持ちが多い。貴詠様の予知ほどではないが皆様々な異能を持っている。

烏兎は未だに異能を発揮した事がない。何の異能があるのかも分からない。稀に発現しないままの者もいるが、烏兎は外見の事もあり余計に里の者に軽視されていた。





長の家は奥に広い造りになっている。

手前に皆が集まれる集会所があり、中庭を挟んで左右に屋敷がある。集会所と奥の屋敷はそれぞれ短い太鼓橋で繋がっていた。

向かって左側が長の屋敷で、右側が貴詠さまの建物になる。比べれば左側の建物が大きく、右側はこじんまりとしている。そうは言っても癒兎が住む母屋よりも大きいのは確かだ。

集会所の横を通り、外側に付けられた玄関をカラリと開けて訪問の挨拶をすれば、手前から恰幅の良い女性が現れた。


「癒兎と烏兎が参りました。貴詠さまにお取次をお願いします」


癒兎に倣い、烏兎も共に頭を下げる。

応対に出てきた女性は烏兎を見て眉根を寄せたが何も言わずに体を反転させ奥へと歩いて行った。

俯く烏兎と繋いだ手に力を込めれば、おずおずと握り返してくる。

癒兎は真っ直ぐに正面を見据えていた。烏兎はほんの少しだけ顔を上げて、上がり框を見ていた。



しばらくして女性が戻ってきた。

先程と寸分も変わらない無愛想な態度で「貴詠さまがお会いになります」とだけ告げると、道を譲る様に端に寄る。

癒兎は勝手知ったる様子で履物を脱いで進んで行く。引かれるままに烏兎もその後に続いた。

烏兎が女性の前を通るとあからさまに顔を顰めたが、癒兎がギロリと睨み返した。



滅多に外出しない烏兎にとっては、自分が住む離れ以外は全て怯えの対象でもある。

繋がれた癒兎の手だけが頼りだとすがるように力を込める。

癒兎は歩く速度を緩めると、俯いたまま歩く烏兎の頭を空いている手でポンポンと叩いた。顔を上げた烏兎は柔らかく微笑む癒兎を見て、ほんの少し緊張が解けた。



廊下の先は4面の障子があり、左側は回り廊下となって中庭が眺められるようになっている。

2人は障子の前に正座し、手をつくと会釈をする。


「癒兎と烏兎、参りました」


室内からカタンと小さな音がして「お入り」と落ち着いた柔らかな声が聞こえた。

癒兎が障子を開けて入り、その後を烏兎が続き障子を閉める。

10畳の畳敷の部屋には火鉢と箪笥と薬棚が置かれているだけでがらんとした雰囲気がある。部屋の奥では齢75になる貴詠が脇息に左肘を置き、右手に持った煙管を吸っていた。

顔や体に皺はあるものの背筋は伸び2人を見つめる視線は力強い。知らなければ60才よりも若く見えるかもしれない。


「近くにお寄り。年寄りに声を張り上げさせるもんじゃないよ」


障子近くに座った癒兎は舌打ちしたいのを我慢して、烏兎の手を取り貴詠の手前で腰を下ろした。その距離わずか2歩である。

流石にこれは不味いのではと烏兎は目を白黒させて慌てるが、癒兎は気にする様子もない。

貴詠に至っては面白そうに口端を上げて笑っていた。


「先ず、決定事項を伝えよう。烏兎、お前さんの結婚が決まった。3日後に迎えが来る。それまでに準備をおし」


烏兎は貴詠の言葉が理解できず、口を開けたまま老婆らしからぬ風貌を見つめた。

癒兎が握っていた右手にギュッと力を込められてようやく言葉にもならない声が漏れ、彷徨った視線は助けを求めるように癒兎にたどり着く。

貴詠はふぅと煙を吐くと煙草盆に灰を落とす。


「質問がないならお帰り」


「……あ、あ、あの、あの……あの……けけけ、け、けっこんって…」


「烏兎。落ち着いて」


「で、でで、でも、だってけけけっこんって、結婚って…」


「烏兎」


驚きすぎて狼狽える烏兎を癒兎が正面から抱きしめる。

烏兎を包み込むように抱きしめれば、双子とはいえ男である癒兎の方が体格が良いのが分かる。

優しく撫でるように後頭を何度も撫で下ろされる。いつもと同じ温もりにほぅと息を吐くと、癒兎の背中に手を回して抱きしめ返した。

思わず目尻から涙が溢れ落ちたが、癒兎の指が涙を拭い滑るように烏兎の頬をするりと撫でる。

癒兎の温かい手に頬を擦り寄せ、見つめてくる瞳は涙の膜が張ったせいで本物の黒真珠の様だった。


「癒兎。私、結婚するの?」


「うん。里を出て、獅子族に嫁ぐんだよ」


「癒兎は?」


「僕は行けない。烏兎だけだよ」


「……………癒兎は?」


答えの分かっている問いに、堪えきれず溢れた涙が烏兎の頬を濡らす。


「癒兎、は…?」


貴詠の言葉に反論も質問もしなかった癒兎。

それは事前に知っていたからだと烏兎にも分かる。分かっていても、それでも受け入れられない。

寂しそうに微笑む癒兎を見て、癒兎がこの決断を受け入れている事に愕然とした。

自分は癒兎と離れたら生きていけるかも分からないのに、癒兎はそれでもこの手を離すのだと。


「また、会えるから」


「癒兎。空言を言うのはお止め」


「僕は必ず会いに行くよ」


癒兎の力強い言葉に貴詠は諦めたように息を吐き、烏兎は小さく頷いた。






烏兎の住む離れに戻ってきた2人はとりあえず居間に向かい合って座った。

居間と言うが、文机と茶棚と火鉢があるだけの質素な4畳半の部屋。

烏兎は茶棚から茶筒を取り出して急須に茶を入れ、火鉢にかけていた鉄瓶を持って急須に注ぎ入れた。

丸盆に置いた湯飲みにお茶を注ぐと暖かな湯気がふわりと香り立つ。

2人とも無言のまま丸盆を見つめていた。

お茶が温くなりかけた頃にようやく癒兎が口を開いた。


「黙っていて、ごめん」


「いつから知ってたの」


「………半年前」


思っていたよりも前からだった事に烏兎ほ少なからず衝撃を受けた。

この半年の間に婚姻に関する話を聞いたことは一度もない。母屋の両親とは会話というより一方的に言葉を投げつけられるだけなので、引きこもりの烏兎に癒兎以外から情報を得る事がないせいでもある。



家どころか離れの建物からも滅多に出ない引きこもり生活を過ごしてきた烏兎である。

思いもしなかった自身の婚姻話。それに伴い里を出る事。癒兎と離れ離れになる事。

どれもこれも早急な上に受け入れ難い事ばかりだった。



なんで。どうして。と、その言葉ばかりが頭の中を締めてしまう。

俯いた烏兎の視界に癒兎の白くて少し骨張った手が映った。

癒兎は、畳にぺたりと置かれた烏兎の両手を自身のそれで掬い上げて指先を軽く握りしめた。


「烏兎。3年後、この里を疫病が襲う。里や近隣の薬では効果は無く、里の大半の者が死ぬ」


静かに語られる内容に烏兎は息を呑んだ。

癒兎が語るのは、恐らく貴詠の異能が見せた未来なのだろう。


「獅子族が所有する薬ならば疫病に効果があるんだ。でも、身内でもない者に融通する程彼等はお人好しじゃない。だからこその婚姻なんだよ」


黒獅子は獅子族の族長の弟だと言う。金獅子が多い獅子族の中で黒獅子は彼だけだと癒兎は言う。

烏兎と同じ一族の中の異端者。

だが、烏兎とは違い黒獅子は瑞兆だと尊ばれるらしい。

多産系の兎族、しかも黒兎ならば黒獅子の子が産まれるかもしれないと獅子族は大層乗り気だと言う。



烏兎は考えた。

烏兎にとって里の事はどうでもいい。大事なのは癒兎だけだ。

疫病が広がれば癒兎が罹患して命を落とす可能性もある。黒獅子に嫁いで癒兎の命が助かるなら、烏兎の存在に意味がある事になりはしないだろうか。

どうせこのまま里に居ても引きこもったまま過ごすのだろうし、烏兎を娶りたい酔狂な者などいやしない。


「分かった。私、行くね」


黒獅子の元へ行き、癒兎を助ける薬を分けて貰おう。

決意した烏兎は穏やかに笑った。

癒兎は眉根を寄せて唇を噛み締めて、今にも泣きそうな顔をする。

嫁げと言ったのは癒兎なのに、それが辛いと無言で語る。

癒兎も離れるのは寂しいのだと、辛いのだと感じてくれているのだろうか。

同じ想いを抱えてくれているのなら嬉しいと烏兎は思う。寂しくても悲しくても、癒兎と同じなら我慢できる。


「大丈夫、だよ」


ずっと癒兎を想っている。

癒兎の頬を両手でそっと触れて、額をコツンと合わせる。


–––––––––– 大事な 大好きな 片割れ


「烏兎。僕は必ず君に会いに行くよ。だから、待っていて」


「うん。待ってる」


冷たい手が互いの温度で温まっていく。

この温度も吐息も混ざり合って一つになれたならどんなに幸福だろうか。

叶わぬ願いを咎めるように、火鉢の中の炭がパチンと弾けた。



3日後。

花嫁を迎えにやってきた獅子族は黒い烏兎を見て喜び、白銀の花嫁衣装に身を包んだ烏兎を連れて行ってしまった。

癒兎は黙ったまま一行が見えなくなるまで里の門から見送っていた。

その背に貴詠が声をかけると緩慢な仕草で振り返る。そこにはいつも烏兎に向けていた笑顔はなく冷めた目をした無表情な少年がいた。


「其方は次代だ。里から出るのは叶わぬ」


「未来は常に不確かなんだよ、貴詠さま」


淡々と告げて里の奥へと歩いていく癒兎を貴詠は溜息を吐いて見送った。

雪兎の一族の異能は多種多様だが、予知は1人だけ。当代の力が弱まれば次代が産まれる。そして予知の者は里から出る事は叶わない。

癒兎は貴詠の知らぬ何を見たのか。

問うても答えぬのでは、貴詠に知る術はなかった。














1年後。

半年ぶりに届いた烏兎からの手紙には、癒兎を心配する内容から始まり、自身の近況を記していた。

夫の藍墨(あいずみ)は優しく、里の人達も良くしてくれているそうだ。



2年後。

烏兎からの手紙には金獅子と黒獅子の男の双子が無事に産まれたと書かれていた。

産後も問題なく、舅や姑にも優しくしてもらっているそうだ。



3年後。

烏兎の手紙には疫病はどうなったのか、薬は十分かと心配ばかりしていた。

大丈夫だ。薬のおかげで、疫病による死者は誰もおらず、もちろん自分も元気にしていると感謝の手紙を送った。



5年後。

烏兎からの手紙はまだ届いていない。

3ヶ月前に「元気にしている。5人の子どもたちもすくすくと育ち、皆優しい」と短い手紙が届いたきりだ。

癒兎はその手紙をぐしゃりと握り潰した。



貴詠は突然やってきた訪問者を前に冷静を保ちつつも内心では冷や汗を流していた。


「不躾だの」


貴詠はたった5年で10歳以上も老け込んだように見えた。

力が衰えているのだろう。現にここ1〜2年の予知は癒兎が行なっている。


「お別れを告げに」


静かに佇んでいた癒兎がぽつりと告げる。

その言葉に貴詠は最近悪くなった目を大きく見開いた。

馬鹿な事を。と一笑に伏す言葉を貴詠は発せられなかった。


「僕は烏兎に会いにいく」


「待てっ」


予知を持つ者は里から出る事はできない。

異能を持つ守人が里の出入りを厳重に管理している。

慌てたせいか弱った足は途中で崩れ、貴詠は畳の上に転げてしまった。

それを見下ろす癒兎の視線のなんと冷たい事か。


「僕は烏兎に会いに行く。この里の者はあらかた食ったからもういい。さよなら、貴詠さま」


去っていく癒兎の背中を見つめ、貴詠は己の間違いを知った。

癒兎の異能は予知ではない。


「異能喰い…」


食ったという言葉から、癒兎は他者の異能を食べて己の物にしたのだろう。

過去に事例がなかった訳ではない、稀にしか現れず、顕現すれば畏怖され殺されていたと聞く。

癒兎は用心深く貴詠の異能を少しずつ気づかれないように食べて、予知を持つ振りをしたというのだろうか。

そして里を出るために、他の者の異能も少しずつ削り食べていたというのか。


知ったところでもはやどうにもならない。

衰えた予知しか持たない貴詠にできる事はなく、異能を削られた人々に癒兎を止める手段はない。

貴詠には分からない。

なぜ癒兎がそこまで烏兎に拘るのかも、なぜ里を弱体化させたのかも。

貴詠はただ皺だらけになった痩せた手を握り締めて、蹲っていた。




日陰に残るわずかな雪を一瞥して顔を上げれば、空は青く白い雲がなびき、目の前の道には青葉が茂り若木は新緑を芽吹かせていた。

もう春なのだと癒兎は微笑む。


多数の異能を取り込んだ癒兎を止める者はおらず、難なく里を出ることができた。

癒兎は里が嫌いだった。

烏兎を邪険にする両親が嫌いだった。烏兎の見た目だけを見て嫌悪する里の者が嫌いだった。平静を努めながらも見下した目をする貴詠が嫌いだった。

里など滅んでも構わないが、滅ぼすには手間も労力も掛かる。

弱体化させればゆっくりと里は朽ちていくだろう。後の事などどうでもいい。

2人で出ていければ良かったけれど、それは無理だったから先に烏兎を里から出した。

烏兎が幸せならそれでいい。でも違うのならば連れ出そう。

成長した瘉兎は背丈も伸び、出来ることが格段に増えた。今なら烏兎を守ることも容易い。

烏兎とならばどこでも暮らしていける。


待っていて、烏兎。もうすぐ会いに行くよ。


癒兎は幸せそうに微笑んで軽やかに山を降り始めた。

後ろを振り返る事は一度もなかった。




*終わり*


お読みくださりありがとうございます。


※ 誤字報告、誠にありがとうございます。チェックしたつもりでも沢山あり、感謝と共に誤字訂正させてもらってます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い作品でした。ファンタジー物と言えばそうなのですが、狭い世界のお話であるにも関わらず、こんなに奥深い話にしてくるとは、作者様の技量ですね。相変わらず情景が綺麗に思い浮かぶ描写力は同じ書…
[良い点] 非常に面白く続きが気になります。 烏兎の異能はなんなのか、流れから読むと予知の継承者かと思ったのですが、それならなぜ未だに開眼しないのか、癒兎が食べてしまったのか、そんなことを癒兎がするだ…
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