商売する人たち
ようこそ
弓兵が武器商人に苦情を言っていた。
「この前買った弓の命中率が低すぎる。3射に1射ぐらいしか当たらない」
「ちょうどよかった。矢を大量に仕入れたところです」
結果的には
財宝と魔物が待ち受ける遺跡の前に仏頂面で盾と鎧を売る商人が居た。
商人にあまりに愛想がないので、1人の冒険者が茶化して言った。
「こんなところで防具を売ってどうする? 遺跡に潜るときは身軽にしてすばしっこく立ち回る方が儲かる。みんな知ってることだ」
商人は口を開いた。
「そう言ってこの遺跡に潜った連中は、確かに今はもう盾も鎧も必要とはしていない」
熟考の成果
魔物の群れが迫っている街で、賭け事が原因で借金を重ね首が回らなくなった勇者に3人の商人が取引を持ち掛けた。
1人は当の借金相手の商人で「うちの店を守ってくれたら70万ゴールドの借金全額をチャラにしよう」と言う。
2人目の商人は「私の店を優先して守ってもらいたい。商店が無傷なら100万ゴールド。傷ついても商品が無事なら50万ゴールド支払う」
3人目の商人は「うちを守ってくれたら、総額60万ゴールドしか払えないが、内30万を前金で出す。準備を整えてことに当たってくれ」
勇者は思案し、3人目の商人から前金を受け取った後、街から逃走した。
ものによる
あまりにも脆い鎧を作ることで有名な鍛冶屋が居た。
ある日、1人の客がやって来て訊ねた。
「親方、あんたの作る鎧にゆで卵をぶつけたら凹むかね?」
鍛冶屋はしばらく考えてから聞き返した。
「固ゆでかね?」
いわくつき
良い剣を打つと評判の鍛冶屋のカウンター奥に、一振りの剣がひっそりと置かれているのを客が見つけた。
「親方、そいつを見せてくれよ」
「こいつは売りもんじゃない。おびただしい人の血を吸っとるんでな」
「なんだい? いわくつきの魔剣かね」
「いや、代金を踏み倒した客はこいつで切り殺すことにしとるんだ」
そこが問題ならば
とにかく頑丈な鎧を作ってくれという注文に、鍛冶屋の親方が遺憾なく腕を発揮した結果。出来上がった鎧は、とても頑丈ではあったが、あまりにも重すぎた。
当然、客は文句を言う。
「こんな鎧、サイクロプスだって着れないぜ」
親方は客をまじまじと見つめた。
「安心しろ、どうやらお前さんはサイクロプスじゃないぞ」