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異世界ジョーク集①  作者: アルバート・C・ロック
2/8

勇者という奴は

勇者がやってくる

 母親が寝物語に我が子に勇者の話を聞かせていた。

「魔王が復活し、世が乱れるとき勇者がやって来て魔王を討ち滅ぼす」という内容の話だった。そこにはこの世界で過去の勇者たちが実際に行ったことの数々が語られていた。

 そして話の最後、母親は我が子にこう言い聞かせた。

「さぁ、もう眠りなさい。寝ない子の元には勇者がやって来ますよ」


そっちが知りたい

 ならず者が村人を人質に勇者を脅迫しようとした。

「こいつの命が惜しければ武器を捨てろ」

「惜しくなければ?」


大穴狙い

 勇者にしか抜けないと言われる剣が神殿に祀られていた。そこに勇者がやってきたが、一向に剣を抜こうとしない。神殿近くの宿に引きこもって一か月ほどが経った。

 宿賃の請求にやってきた宿の主人が聞いた。

「貴方が勇者だというなら、どうしてすぐに抜かないんです?」

「時を待っているんだ」

「町の連中はあんたが剣を抜けるか抜けないかで賭けを始めちまってますよ」

「まさにそのオッズが問題でね」


正反対

 勇者を盗賊と呼ぶ者はいるが、詐欺師と呼ぶ者はいない。

 詐欺師は嘘偽りによって人々を欺き苦しめる。一方の勇者がもたらすのは嘘偽りのない面倒ごとなのだ。


原因

 勇者が村の酒場でならず者たちと大立ち回りを演じ、店の内装を半壊させた末に勝利をおさめ『治安維持に協力した』と言って店主に酒をおごらせていた。

「どうして貴方はそんなに自分勝手な振る舞いができるんです?」

 自棄になった店主が泣きながら訊ねた。勇者は特に気を悪くした風もなく。

「僕がこの世界に飛ばされる前、神が目の前に現れて、こう言った『残念ながら私からは何一つ与えてあげられない。代わりに何か一つ捨てさせることはできるがね』って」

「その捨てたものって?」

「良識さ」


倒置法

 勇者が娼館に通っているという噂を聞いた国の大臣が、事実を問いただしにやってきた。

「行くなとは言いませんが、少し節度を持ってですね…」

「ご心配なく。僕が娼館に行くことはもうありません。最近は娼館が僕を訪ねて来るので」

 

出身地

 勇者は異世界の出身であるとの情報が王国情報局から国中に広められた。それについてある街の酒場で二人の男が話している。

「勇者の奴が異世界出身なんて信じられるか? どうも怪しい話だと俺は思うね」

「しかしお前、もし奴が例えばこの街の出身だったとしたらどうする?」

「冗談じゃねぇ。あいつと同じ出身地だなんて」

「な?」


勇者について

 勇者が本当はどこから来たかという議論は、その悪行が世に知れ渡るにつれ下火になった。1人の農民がそれについてこう言った。

「つまりイナゴの群れがどこから飛んでくるかより、これからどこへ飛んで行くかの方に関心が移ったってこったよ」


長所と短所

 勇者には長所と短所がある。

 長所を述べれば、彼は剣技に優れ、勇者の剣によって認められた人物である。

 短所はその他の全てである。


理由

 勇者が村にやってきたのを見て、村人の息子が父に訊ねた。

「お父さん、どうしてあの人が勇者だってわかるの?」

「全身くまなく武装して、腰には勇者の剣を提げているからだよ」

「お父さん、どうして勇者が勝手に家に上がって物を持っていくのをみんな見て見ぬふりしているの?」

「全身くまなく武装して、腰には勇者の剣を提げているからだよ」


値段

 勇者の剣は、勇者の最も大切な武器であり、これがなければ彼の冒険は大変困難なものになる。万が一にも彼の手からこの剣が失われることを防ぐため、王国は新たな法律を制定した。要約すると次の通りの内容である。

『勇者の剣を売買(質入れと請出しも含む)する際、発生する費用の総額が10ゴールドを超えてはならない』


手付金

 王国軍の司令官が勇者に協力を仰いだ。

「西の要塞が魔王軍に攻められている。君に加勢してもらえば押し返すことができるかもしれない」

 勇者は静かに言った。

「手付金をもらえるか。ひとまず10ゴールドばかり」


それなら楽

 勇者は西の砦に到着した。砦の指揮官によると、魔王軍はあと2日ほどで到達するとのことだった。勇者はがっかりした様子で言った。

「来るのが早かったかな」

「もう少し近付いてからの方が良かったと?」

「いや、通り過ぎてからだったら良かったなと」


事実

 勇者が砦に陣取ったまま出て来ようとしないのを見た魔王軍の将軍が、声を張り上げて嘲笑した。

「勇者はとんだ腰抜けらしい」

 それを聞いた勇者の顔からサッと血の気が引いた。彼は砦を囲む防壁の上から飛び降りて魔物の群れに単身で走り込むと、阻む者を蹴散らしてながら一直線に進み、魔族の将軍が乗っていた馬を片手で引き倒し、転げ落ちた相手の鎧の胸当ての上から背中側まで剣を深々と突き刺した。あまりのことに声を上げることもできず絶命しようとしている将軍の耳元に顔を近づけて勇者は訊ねた。

「そのことを、どこで知った?」


勇者に関するQ&A

Q.勇者の中に良心を見出すことは砂漠で水を見つけるぐらい難しいですか?

A.砂漠で砂を見つけないようにするぐらい難しいです。

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