18:瘴気を出す石碑?
そう響の目の前で、両方の腕輪から放たれる光によって、先程まで祠の周りを覆っていた黒い霧が全て消えてなくなっていて、そのうえ先程まで枯木となっていた一部の木々が不思議な事に緑が生茂りだしたのであった。
アクアを抱いたまま不思議に思いながらシーちゃんの背より降りて、その光景を見ているとアクアがその神秘的な光景を俺に抱かれたまま驚いて声をあげた。
「ヒビキ凄いの!森が、森の木々が光に包まれて喜んでるの。それに緑が蘇えったの。すごいの!」
その声に俺自身も驚きその不思議な光景を見て黙ったまま、その異常な光景を見つつ周囲を確認していると、ちょうど祠のすぐ側に変な石がある事に気が付き・・・近付いてよく確認した。その石は何となく禍々しい感じがして、とても醜い形をしていた。
強いて言うなら角の生えた人・・・いや、これは鬼だろうかそれがムンクの叫びみたいな姿の状態の石なのだ。
はっきり言ってどう言う意味があるのかよく解らないが、それでもなんか苦しんでいる様な感じの石であった。
「ヒビキ、それ嫌なの。それたぶん母様が言ってた石碑なの。いやな物なの」
どうやらこれが世界樹のマナが言っていた、瘴気を出す石碑のようだな、そう言えばさっきこの辺りの黒い霧が濃かったような気がする。
「ああ、そうだろうな。嫌な感じがするけど今は瘴気を出してないみたいだな。しかし、これはどうやったら破壊できるんだ?確か沢山あるこいつを壊したら、森に漂っている瘴気を止められるって言ってたけど」
まずは抱いていたアクアを地面に下ろして、石碑に近付き見つめながら触ろうとすると、アクアが俺のシャツの裾を引っ張ってきた。
「ヒビキ、それ触ったらビリって来るの。痛いの、熱いの、そして嫌な気分になるの」
どうやらアクアは、どこかでこれと同じ物に触った事があるようだ。しきりに俺に触らせまいと腕を握ってきたので、頭を撫でて優しく語り掛けた。
「アクア、あのな。俺なこれを調べたいんだ。それで今後どうにかしてこれを壊さないといけないから、ちょっとだけ触らせてくれ。変な感じがしたらすぐ離れるから。なっ」
すると解ってくれたのか、先程まで俺の腕を引っ張っていた手を離してくれた。
「でも、気を付けてなの。ビリって来たら動けなくなるから、その後は気分が悪くなるの。ヒビキいなくなったらアクア嫌なの。だから絶対に変な感じしたら、すぐ離れるの」
ん、どうやらアクアが直接触った訳じゃないみたいだけど・・・まあ、それでも触ってみないとどんなモノか解らないし、もし、アクアが言うような事が起きるのなら壊すのも道具を使わないといけない。
最初は誰かが設置したって言ってたから、持ち上げて叩き壊そうと思っていたし、どの道触らないと重さも解らないし、材質的にも確認しておきたかったのである。
なので今からこの禍々しい石を調べようと、手をその嫌な感じの石碑に触れた。
その次の瞬間!元々利き腕が右手だったのも幸いしたか、それとも偶然なのか突然その触れた途端俺の右腕の腕輪が輝きだし、石碑が蒼白い炎の様なオーラに包まれた。
その後、炎の様なオーラが消えた石碑の後に、綺麗な水晶のようなモノが現れた。たぶん先程の石碑が変化したモノだろうと思うがよく解らない状態だ。
「ヒビキ!何をしたの?嫌な石なくなったの。・・・それよりもこの石・・・綺麗なの。それに心地良いの・・・それにそのヒビキの腕が凄いのとても気持ち良いの」
どうやら瘴気を出していた石碑を調べていると、俺の身に付けていた腕輪、実際は痣のようなドラゴンの刺青が不思議と変化した物なのだが、その腕輪が反応して石碑を違うモノへと変えてしまったようなのである。
アリアにとっては、とても心地良いモノらしく、先程まで近付きもしなかった元石碑の水晶にさわり、そして俺の光輝いていた右腕の腕輪を不思議そうに触り安らぎを感じているようだ。
しかし、俺としては意表をつかれた感じがしていた。
「まっ、マジかよ。ただ調べて壊す方法を考えようとしてたのに、なんかすごい力を感じたと思ったら、石碑が別のモノが変化してしまった。・・・ん?しかもよく見たらこれってドラゴンの模様に見えるんだけど・・・なんだこれ?」
変化した水晶をよく確認してみると、その水晶の中にドラゴンの模様が浮かんでいたのである。
しかも以前は瘴気を出していたのであろうが、今は完全に違うモノを感じがして、どうも表現し難いのだが辺りを漂いだした。
それは全く嫌な感じはしないで、どちらかと言うと清々しい心地になり、力がみなぎってくるような感じがする。それにその周りの空気は美味しく、先程まで頭上に太陽はあるのに薄暗く感じていたのだが、そんな事もなくなっていたのである。
そうそれこそ世界樹のマナが放っている優しい感じの気であり、ちょうどあの周りのような神聖な感じのする気が辺りを覆いだしたのである。
それに伴い地面に生えていた草花も黒ずんでいた感じが無くなり、祠の周りにも不思議と綺麗な花が咲き出したのであった。
「ヒビキ、ヒビキ!凄いの、凄いの。この周りが賑やかになったの。むかしみたいに綺麗な花が咲いたの!」
確かにアクアの言うように、凄い現象なのであるが、草花や木々ってこんなに早く成長するのか?
余りにも不思議な現象が起こっているので、呆然としてその現象を見ていると、突然黒い霧の晴れてない箇所より、でっかい真っ黒な何かがアクアとシーちゃん目掛けて襲い掛かって来たのである。
ちょうど、そのでっかい真っ黒な何かが襲い掛かる前にアクアは、はしゃいでシーちゃんに抱き付いて喜びまくっていた。響としても草花が不思議と咲き乱れる光景に呆然と見ていたので、一瞬アクアが襲われる瞬間に反応が遅れてしまっていた。
それでそのでっかい真っ黒な何かは、アクア目掛けて腕を振り上げて、攻撃してきたのであった。