17:瘴気の浄化と祠の確認調査?
そんな事とは知らずに、響はその時点で、既に確定していた未来を変えてしまっていたのである。しかし、それはそこだけの結果では、なかったのであるがその先はまだ決まってはおらず、そんな事とは知らずに響は、次の行動をおこしたのであった。
俺がシーちゃんを途中で止めたのと考え事をしていたのを、アクアは不思議に思い俺が気が付かないうちに、水竜であるシーちゃんに近付くようにお願いしていた。
「シーちゃん、ヒビキが考え事してるけどいいの。近付いてなの。近づかないと祠の中を確認できないの」
ただ、アクアは瘴気の黒い霧には、まったく気が付いていないのだが、シーちゃんの方は何となく嫌な感じがしているようで、響が止めた位置から動こうとしなかった。実際のところ響が止まる様にお願いしてきたが、シーちゃん的にはこれ以上行きたくないのであった。
「ん?どうしたのシーちゃん?何で動かないの???」
流石に一向に動こうとしないシーちゃんの様子を見て、そして、今だ考え事をしていた響を不思議に思い、強引に響に話しかけた。
アクアは器用にもシーちゃんの背中で、湖に落ちないよう向きを変え、響の方を向き話しかけた。
「ヒビキ!アクア解んないの。どう言うことなの。」
アクアのうしろで、今だ考え事をしていた響の方に向きを変え、声を掛けても返事がないのでペチペチと響の顔を叩き自分の方に意識を向けさせた。
このとき響は自分の目には、はっきりと映っている黒い霧状の靄について考えていたのである。
それは今朝方見たシーちゃんの背中から出ていたモノと同じ様な感じがしたが、それ以上に嫌な感じと見ているだけで寒気がするような感じがしていた。ただ、どうしてもこれを無くさないといけないと考え、どうしたらこの嫌らしい黒い霧を晴らすことが出来るかを考えていたのである。
そんな事を目を瞑り、シーちゃんの背中で深く考えていたのである。
そこにアクアの可愛らしい手で、顔をペチペチと優しく叩かれたので、考え事をしていたところから現実に引き戻された。
「ヒビキなんでなの?どうしてシーちゃん動かないの?無視しないで答えてなの」
「んっ、ああ、ごめんごめん、あのなアクアあの祠の周りもそうなんだけど、この森全体が黒い霧みたいなのが漂ってるんだ。アクアには見えないのか?」
「何を言ってるの?黒い霧なんて解んないよ。でも、ほら近付かないと祠を確認出来ないの。でもシーちゃんも動いてくれないの」
やっぱりアクアには見えてないのか?でも、シーちゃんの方はどうやら見えてない・・・みたいだけど嫌な感じは解るみたいだな。・・・あれ、ならアクアもこの嫌な感じは解るはずだよな・・・ちょっと聞いてみよう。
どう考えてもシーちゃんにも見えて無いようなのに、アクアの頼みでもそれ以上進まないという事は、間違いなくシーちゃんは何かを感じ取ってアクアを近づけさせないようにしてると考えられる。それにたぶんアクアも感じていると思うので確認してみる事にしたのである。
「なあ、アクア。黒い霧は見えないかもしれないけど、嫌な感じとか、いつもの違う感じか、何か変な感じがしないかな?例えば今朝の弱っていたシーちゃんを抱いた時とか」
さてこの質問には、アクアがどの様に答えてくれるかで、今後の調査での方針が決まるが、最悪俺一人で瘴気を出す石碑を探さないといけなくなる。
「うん、ヒビキが言ったような霧なんて見えないの。でも、嫌な感じはするよ。それに今朝の時も変な感じで、それになんだかピリピリしてたの、それに今はビリビリじゃなくゾワゾワするの。でも、ヒビキと一緒に居たらそれは平気なの」
ん、どう言うことだ?俺と一緒だと平気って・・・。
アクアが言うには、どうも今朝方に水竜であるシーちゃんを治した時に感じた事を解りやすいように説明してくれたみたいだけど、あれはたぶん俺だけの力じゃないからな。
ちょっと様子を見た方が良いような気がするし、ただ、アクア言うゾワゾワってどんな感じなんだろう。
とりあえずその感じがするところは近付かないように説明をしとこう、恐らくその感じ方でも役に経つだろうしな。
「アクア!さっき言ってたビリビリやゾワゾワするところにはすぐに逃げろよ。それと絶対に嫌な感じがするところは絶対に近付くなよ。解った」
「うん、解ったなの。でも、ヒビキと一緒の時は、良いのなの」
「いや、まあ、うーんと・・・・」
これはどう考えたモノかな、下手な事言ったら感じても黙って付いて来そうだからな・・・よし、こうしよう。
「えっとな。俺と一緒の時は良いけど、必ず俺の言う事を聞く事!これを護れなかったら連れて行かない。いいな、これが約束だ」
「うん、解ったなの。約束なの。言う事聞くの」
よし、これだけ言っていれば、言う事は聞いてくれるだろう。なら早速調査を始めよう。
「アリア!ちょっと俺があそこの祠を確認してくるから、ここでシーちゃんと待っていてくれるかな?」
「ん、どうしてなの?」
「ああ、あの祠の周りに嫌な黒い霧が沢山かかってるんだ。だからちょっと俺が確認してくる。もし、俺に何かあったら大声で叫ぶから、その時は世界樹、いやアクアの母様のところに戻ってくれ。約束できるか?」
俺の話をアクアが真面目に聞いてくれたが、1人だけで戻るのは嫌なようで、首を横に振って俺に抱き付いてきた。
「嫌なの。何かあるのは嫌なのアクアは、ヒビキと行くの!アクア、ヒビキから離れないの」
ありゃりゃ、さっき約束したのにアクアが聞き分けの無い駄々っ子状態になってしまい。俺を1人で祠に行かせない様に抱き付き離れなくなった。
これはどうしたものかと考え込んでいると、今迄この場で動かなかった水竜のシーちゃんが祠のある方へ泳ぎ出した。
「おっ、おいっ、シーちゃんそれ以上行ったら、危険だってへんな黒い霧がかかってるんだって、止まってくれ!お前にもなんかあったら、アクアが悲しむしアクアだって・・・」
シーちゃんが、煮えきらない俺とアクアの行動を見かねて、黒い霧に覆われた祠の近くの水辺の岸までやって来てしまったのだ。
このままじゃ、シーちゃんとアクアがこの黒い霧に侵食されて弱るか何か変な事になるかもしれない。
その様に考えていると、俺達の周りにある黒い霧が不思議な事に、俺を中心の晴れていったのである。
「なっ、なんだこれ?黒い霧が・・・さっきまでこの辺を覆っていた霧が祠の周り以外晴れてた?どう言うことだ」
シーちゃんに乗った状態のまま、不思議に思い周囲を確認していると、今だ抱き付いていた状態のアクアが顔を上げて俺に尋ねてきた。
「ヒビキの手、温かいの。それになんだか心地良いの・・・」
「えっ、何を・・・・・!?」
アクアに言われ自分の腕を確認すると・・・例の腕に付いていたドラゴンとフェニックスの刺青のような痣が無くなっており、その代わりに水晶が付いた腕輪が両手に装着というより装備させていたのである。
しかもどういう具合で、腕に取り付いているのかよく解らないのである。どうも一体化しているような感じであった。
はっ、なんだこれ。俺の腕に腕輪が?よく見たらなんか彫られてるし、この水晶玉なんだ?右側は蒼白い水晶で、左側が赤・・・いや、なんか炎みたいなモノが水晶の中に・・・なっ、なんなんだこれ?
そんな事を思っていると、両方の腕輪が光輝き出し、今朝シーちゃんを救い出したように、辺り一面を照らし出した。
「うわっ、まっ、まぶしの。ヒビキ!」
「なななっ、どうなってんだこれ?」
アクアは眩しさの余り、顔をまた俺の胸に埋め、シーちゃんも眩しいのか首を器用にも地べたに寝かせ自分の前足のヒレで目を覆いかぶせている。
俺はその光が眩しいように感じず、その光に照らされた辺りを見渡していた。
「おいおい、マジかよ。さっきの黒い霧が・・・どんどん晴れて行ってる?どうなぅてんだ、これ・・・」
そう響の目の前で、両方の腕輪から放たれる光によって、先程まで祠の周りを覆っていた黒い霧が全て消えてなくなっていて、そのうえ先程まで枯木となっていた一部の木々が不思議な事に緑が生茂りだしたのであった。