「生まれ変わったら、天体望遠鏡になりたいなって」
暑い夏休みを目前に控えた、ある日のこと。
その日、日直だった僕は、先生に頼まれたノートを理科準備室へと持って行った。
ノートを教卓の上に置くと、隣に置いてある天体望遠鏡が目にとまった。
___ すごく古い。今にも壊れそう・・・。
そう呟いて、まじまじと見つめた。
白い陶器製のフォルムに人影が映った。
__あれ?・・・誰だろう。
振り向くと、そこには見知らぬ男子が天体望遠鏡を見つめて佇んでいた。
ふわふわとした黒髪に、少し日に焼けた白い肌、指定の征服とクリーム色のベスト
片手に難しげな分厚い本__
いかにも【文系男子】といった感じ。
「天体観測、好きなの?」
思わず声をかけてしまった。
自分でも、なぜ声をかけたのか良くわからない。
どうしてだろう?・・・極度の人見知りで学校では先生としか話せないはずなのに。
「いつも思うんだ。
生まれ変わるなら、この天体望遠鏡になりたいなって」
そういうと、こちらを見ずに微笑んだ。
彼も人見知りなのだろうか?
でも、儚げな雰囲気を纏うその横顔は、どこか懐かしい感じがした。
「__どうして?」
彼は少し間を置いてから
「ずっと前に、ある人と約束をしたんだ。
この天体望遠鏡で、いつか綺麗な星空を一緒にみようって」
そう言って、また静かに微笑んだ。