005
巨神の回収の依頼を受けた次の日、藩主の使いは約束した時間通りに迎えに来た。傍らに幼い少年を連れて。
「こちらは藩主ナオチカ様の嫡男ナオフミ様になります」
「始めまして、ナオフミと言います」
少年は礼儀正しく挨拶をした。
「名目は今回の仕事の監督役。本音は経験を積ませたいというナオチカ様の考えで同行する事になりました」
「経験?」
ワタルは何の経験を積ませたいのかよく分からなかったので聞き返した。
「巨神だけではなく、巨神を操る術も貴重なのです。出来ればナオフミ様に巨神を操る姿を見せていただきたいのです」
「いいわよ。仕事の最中は邪魔になるから降りてもらうけど移動中なら乗せてあげる」
藩主の使いの説明に納得したトウカはそう答えた。
「よろしくお願いします。ワタル様」
トウカの返事を聞いて喜んだナオフミはワタルに向かってそう言った。
「ちょっと、何でワタルなの?」
「え、だってこの街で活躍したのは巨神を繊細に操ったワタル様ですよね?これから先、藩を発展させるにはワタル様のような技術が必要なんです」
「むー」
幼い子供にはっきりとそう言われたのでトウカはむくれてしまった。
「それともう1人同行者がいるのですが」
そんなトウカに藩主の使いはもう訳無さそううにもう1人同行者がいる事を告げた。
「もう1人同行者?」
「お前達が『暴れ牛のトウカ』と『神業のワタル』が我は上様より滅びの巨神を預かりし『強力のフクトミ』である」
身なりがよく恰幅のいい男がそう言ってやってきた。
「暴れ牛?」
「お願い忘れて」
しかしワタルは男の事を気にせずに暴れ牛のほうに反応した。
「それにしても何時の間にワタルにまで2つ名が…」
「神業ね、そんな大した事じゃないんだけど」
「お前等、我を無視するな!」
2つ名について話しているとフクトミは怒って怒鳴った。
「で、誰なの?」
「フクトミ様は今回の仕事が失敗したら代わりに巨神を引き上げる為にやってきた国からの使いになります」
「そうだ、我はゴウラ大将軍様の名代なるぞ!」
「(滅びの巨神というのは戦闘型のことだったな。こんなのに戦闘型を預けるだなんてゴウラは何を考えているんだ?)」
ワタルはフクトミの態度を見て内心そう思うのだった。
それから約束通りナオフミをサクヤに乗せれ一行は巨神の眠る地へと出発した。
「凄いです、これが巨神の中なんですね。巨神の中にいるはずなのに外の様子が見えるだなんて凄いです」
ナオフミは子供らしくはしゃいでいた。そんなナオフミの為、トウカはシズカにトウカを操縦した。
「所でトウカさんのサクヤとフクトミ様の巨神は見た目が全然違いますが巨神というのは皆見た目が違うのですか?」
サクヤとフクトミの巨神の姿を比べてナオフミはそう聞いてきた。
「トウカは作業用の量産型。部品の規格を統一するために他の作業用と完全に同じに作られているんだ。もっともサクヤのカラーリングはトウカのオリジナルだけど。この地に落ちてきた巨神の殆どはサクヤと同じものだ」
「そうなんですか。じゃあフクトミ様のは?」
「あれは戦闘型。滅びの巨神と呼ばれるように戦うために作られた巨神。この地に十数機しか存在せず心を持ち、乗り手を選ぶ巨神だ。見た目は皆バラバラで能力も違う」
ナオフミの疑問にワタルは答えた。
「そうなんですか。でも見つけた巨神はサクヤとは違う外見をしていますよ」
「何だと!」
ナオフミがそう言ったのでワタルは大声をあげた。
「ちょっと、大きな声を出さないでよ、ナオフミ様も驚いているでしょ」
「済まない」
トウカに注意されたのでワタルは謝った。
「(開拓作業用でなければ戦闘型。見つかったのはどの機体だ?)」
見つかった巨神が実は戦闘用だと知ってワタルは言い知れぬ不安に襲われるのだった。




