004
開拓移民船が事故に会った時、搭載していた開拓用のロボ、巨神はこの星の大陸にばら撒かれた。この地に住む人々は落ちてきた巨神を試行錯誤の末に操作する術を見つけ自らの生活に組み込んだ。
しかし落ちてきた巨神全てが回収された訳ではない。未だに未発見の物、あるいは見つけたものの何らかの理由で回収が不可能なものも存在した。
ワタル達に依頼されたのはその発見されたものの回収できなかった巨神の回収だった。
「あなた達もご存知ですがこの国の国主ゴウラ大将軍さまは巨神の個人所有を認められております」
「ブッ…ッツ」
ゴウラの名前が出たところでワタルは吹きかけたが何とか堪えた。
「代わりに、巨神を使っての賦役か莫大な税を求められるけどね」
ワタルにその話を言ってなかったことを思い出してかトオカが補足した。
「はい、基本巨神の所有権は発見者にあります。30年前我が藩に落ちてきた巨神は幸い我が藩の家臣が発見しましたので所有権は当時の藩主で有らせられる先代にございました。しかし肝心の巨神は深い割れ目に挟まるようにして見つかったのです。これを引き上げるには人の力では無理で巨神の力が必要でした」
そこで藩主の使いの者は目頭を押さえた。
「民間の巨神使いに回収を依頼しましたが失敗か無理だと断れるばかり。そして痺れを切らした国からこれ以上回収が遅れるなら国が摂取するという通告を出したのです。残された時間を考えてももうお2人しか頼れるものがいないのです。どうかお願いします」
そう言って使いのものはその場で土下座をした。
「分かったわ。でも出来るかどうかは現場を見てからよ。ワタルもそれでいい?」
「ああ…」
トウカの返事にワタルは半分ぼんやりしながら相槌を打った。
「ありがとうございます。ではこちらの準備があるから明日またお迎えに上がります」
そう言うと使いのものは藩主ナオチカに報告するために走り去って行った。
「今日はもう休みましょう」
「その前に大事な話が有るから後で部屋に言ってもいいかな」
真剣な顔でワタルはトウカに夜に部屋に言っても良いかと聞いた。言われたトウカは言われた言葉の意味を考えて顔を少し赤くした。
「え?…ええ、いいわよ(もしかして…、でもワタルなら…。いえまだ早いわ)」
「?」
そしてその夜、ワタルはトウカの部屋を訪れた。浴衣姿のトウカは緊張しながらワタルを部屋に入れた。
そしてお互いに向かい合うように座るとワタルは口を開いた
「トウカ」
「ひゃい!」
「?」
様子がおかしいトウカの事に首を傾げながらワタルはトウカに告白した。
「実はトウカに謝らないといけない事が有るんだ」
「ちょっと待ってまだ心の準備が…、謝る?」
トウカは自分が想像していた事と違う事に気づき始めた。
「実は最初にあったとき記憶喪失だと言ったのは嘘なんだ」
ワタルは記憶喪失が嘘だという事を告白した。
「え?」
「あの時は周囲の状況を把握していなかったから誤魔化そうと考えたんだ。トウカも疑っている通り、俺はトウカたちが天上人と呼ぶ存在なんだ。トウカが見つけた流星の正体は俺なんだ」
「…ああ、その事なんだ」
トウカはこの数週間でそこら辺の事を気にしなくなっていたので今更という感じで返事をした。
「今まで騙していて済まない」
「別にいいわよ。天上人については半ば確信していたから。記憶が有ることはちょっとビックリしたけど状況が状況だから許してあげるわ」
「ありがとう、トウカ」
トウカが怒らずに許してくれたのでワタルは緊張を解いた。
「でもどうして話す気になったの?」
「さっきの会話でゴウラの話が出たから。『2翼のゴウラ』、開拓移民船の中心人物の1人が国主だと知って本当の事を話して協力してもらったほうが言いと思ったんだ」
もしかしたら厄介ごとに巻き込まれる可能性も出てきたのでワタルは本当の事を話すことにした。
そんなワタルを見てトウカは自分の秘密を話すことにした。
「じゃあ今度は私の秘密を聞いてくれる?」
「トウカの秘密?」
「実は私は父親が天上人なの」
「ええ!」
トウカの告白にワタルは驚いた。事故から30年。天上人にはトウカの歳よりも年上の子供がいてもおかしくは無だけの月日が流れている事をワタルは実感した。
「この国から東の果てのオワリの国は天上人と地上の民が共に暮らす国なの。私はその国の出身よ。サクヤも軟着陸した移民船に残っていたものなの。『2翼のゴウラ』の事も聞いているわ。考え方の違いでもう1人の2翼、ハゲツ様と意見が分かれて出て言ったって」
「…そうか。あ、じゃあ3本足の1人、『獅子のクオウ』は知っているか?」
「私のお父様。巨神の操縦もお父様から教わったの」
「…どうりで」
トウカの操縦の荒さが父親譲りだと知ってワタルは納得した。
「だから最初にワタルを保護した時、国に帰ると言う選択肢も有ったの。でも私は国に帰りたくなかったからワタルをつれ回すことにした。私も謝らないといけないの。ごめんなさい」
「いや、俺はこの世界を見て周りたいと思っていた。だからトウカが一緒に旅をしようと言ってくれて嬉しかったんだ。だから謝らなくても良い」
トウカが謝り、ワタルがそう言ってようやく2人は笑う事ができた。
「じゃあ、改めてこれからよろしくトウカ」
「ええ、こちらこそ。あとそれともう1つ」
「まだ、何か有るのか?」
ワタルの質問に答えずにトウカはワタルの手を取り思いっきり握った。しかしワタルの手は潰れなかった。
「これが私の全力よ。あの時握りつぶしたのは実は脆くて簡単に砕ける物だったの」
出会った頃、まだワタルの事を信用できなかったトウカは身の安全のために力持ちである振りをしてワタルを牽制していたのだ。
「知ってた。この数週間ずっと一緒だったんだ。トウカの身体能力が本当はどれくらいなのか判らないはずが無い」
けれどもワタルはの事に気づいていて、なおかつトウカに主導権を渡していた。
「じゃあはっきりと言うね。私は巨神から降りたら非力な女の子なの。だからもし生身で何か有ったらその時は私の事を守ってくれる?」
「ああ、何が有ってもトウカの事を守るよ」
ワタルはそうトウカに約束した。
「ワタル…」
「トウカ、夜も遅くなるしもう寝ようか」
それからワタルはそう言い出した。
「ね、寝るって」
「明日は難しい仕事が有るのだし早めに休もう」
慌てるトウカにそう言うとワタルは自分の部屋に戻る為に出て行くのだった。
「ばか…」
残されたトウカはそう呟くのだった。




